最強幼女は惰眠を求む！ 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

第１３章 魔教団殲滅編

222話 黒き神殿

　竜の巣と呼ばれる広大な岩山。
　並の人間ではこの地に住まう膨大な数のドラゴン達の餌となる、正しく人外魔境。

　そんな竜の巣の奥深くに存在する盆地。
　現在そこでは、十剣が率いるネルウァクス帝国軍と、魔教団の軍勢が激しい戦闘を繰り広げていた。

「準備が完了致しました」

　両軍の衝突を一望出来る岩山の一角。
　そこに佇む１０人の剣士と、膝を着いて報告する１人の騎士。

「ありがとう。
　では、これより広域超高等結界を展開します」

　１０の剣士の１人。
　十剣が一ノ剣、ユリウスの言葉に他の十剣が無言で頷き……
　ユリウス以外の９人がその場から姿が掻き消えた。

　その光景を絶対に見逃さまいと、報告を伝えた騎士は固唾を飲み込む。
　そして、戦場となっている盆地を……魔教団の軍勢を包囲する様に１０本の柱が天を突く。

　それは十剣のメンバーから放たれる膨大な魔力。
　戦場では帝国軍が素早い動きで撤退を始め。
　十剣の魔力を直接浴びた魔教団の軍勢は、圧倒的な重圧に動きを止める。

　間近にいるユリウスから立ち昇る魔力。
　自身に向けられてい無いと理解していても、騎士は重圧に呼吸が乱れ、手足が震えて、全身から汗を流す。

「広域超高等結界、セラフィム」

　天高く立ち昇る１０の柱が光り輝き……白き光のカーテンが舞い降りる。
　柱を繋ぐ光のカーテンは何者をも退け、その内側に封じ込める壁と化す。

　到達者たる十剣が全員でもって初めて展開する事が可能となる結界『セラフィム』。
　熾天使の名を冠する結界は一瞬にして魔教団の軍勢を封じ込めた。

　十剣が皇帝の剣とするならば、帝国の守護神と呼ばれる大賢者グラウス・ロドラ。
　セラフィムは大賢者が帝都に展開する防御結界を遥かに凌駕する、正に神の御技。

「皆んなお疲れ様でした」

　いつの間にか戻って来ていた十剣のメンバーにユリウスが労いの言葉をかける。

「いや～、なかなかにしんどい！
　これを単独で容易く展開できるあの方達、凄すぎじゃね！？」

　そう言いつつも、余裕が見えるネロの態度に一同が呆れを含んだ苦笑いを浮かべる。

「しかし、本当に奴らを捕らえる必要があったのでしょうか？」

　それは、その騎士だけで無く、大勢の帝国兵達が思っている事でもあった。
　何故、降伏した訳でも無いのに敵を戦わずに捕まえる必要があるのか？

「彼らを裁くのは我々の役目では無い、と言う事です」

「我々では無い、ですか？」

「ええ、彼らを裁くのは……神ですね」

　苦笑いを浮かべたユリウスに釣られて、騎士も微妙な苦笑いを浮かべる。
　彼がユリウスの言っている事が事実だと知るのはもう少し後の事だった……

「では、実験体として捕まっている人々の保護を」

「はっ！」

　ユリウスの命を受けて騎士が立ち上がり、敬礼をして去って行く。

「さて、問題はこの禍々しい気配ですね……」

　その騎士の背を眺めながら、呟かれたユリウスの言葉に、十剣達は神妙な面持ちで魔教団の拠点を眺めた。

　魔教団の拠点。
　その地下深くに存在する黒い神殿。
　ユリウス達が感じ取った禍々しい気配……黒い神殿の中央では魔法陣が光り輝いていた。