197 / 375
第12章 深淵の決戦編
197話 崩壊
しおりを挟む
解き放たれたエンヴィーの魔力が、ハスルートの漆黒を塗り替える。
それは至って自然に。
そうある事が当たり前の様に、エンヴィーの魔力が空間を支配する。
ハスルートの様に迸らせる事も、膨大な魔力を紫電させる事も無く。
大海の底を思わせる静寂。
いつの間にか、傷は無くなり、服は元通りになっているエンヴィーの背中。
その様子は黒き化身を圧倒したフェルの……偉大な神獣、神の背中。
パチンッ!
静寂の中に渇いた音が鳴り響く。
エンヴィーによって十剣達の周りに結界が展開される。
「危ないから、そこから出ない方が良いよ。
僕の本気の威圧を浴びたく無いでしょ?」
エンヴィーのその何気ない言葉に十剣達は固唾を飲み込む。
「さてと、良いところを……」
「死ねっ!」
一瞬でエンヴィーの背後を取ったハスルートがその声と共に神速の一閃を放つ。
彼の手に握られた漆黒の剣は、その剣圧で見渡す限りの地面を一直線に切り裂き、その破壊力は地面を大きく陥没させる。
山すらも一刀の元に消滅させる一撃。
地図を書き換えなければなら無いその攻撃……エンヴィーは一歩も動く事無く、手を触れる事すらなく受け止めた。
「我が君達にお見せしないとね!」
余裕の笑みを浮かべるエンヴィーの周囲には、超高密度に圧縮され、超高速度で回転する2メートル程度の水球が1つ。
「なっ!?」
地面すらも容易く切り裂く漆黒の剣を水が受け止めると言う、その信じ難い光景にハスルートが唖然と目を見開く。
キィィィィン!!
と音を立てながら水球はハスルートの漆黒の剣を弾いて吹き飛ばす。
「増えろ」
エンヴィーがそう呟くと同時に、高速回転していた水球が多数に分裂し、幾多もの水の刃を作り上げる。
「クソッ!」
回転しながら翼を広げ、空中で体制を立て直したハスルートが悪態を吐きながらエンヴィーを睨みつけ……
パチンッ
無慈悲な音が鳴り響いた。
エンヴィーの指が打ち鳴らされたのを合図に、水の刃が一斉にハスルートに襲い掛かる。
「舐めるなぁっ!!」
漆黒の剣を離し、突き出された両手に宿るは禍々しき漆黒の魔力。
「はぁっ!」
バッ! と左右に開かれたハスルートの腕に呼応する様に彼の前方に漆黒の壁が展開され、水の刃を受け止める。
凄まじい爆音が鳴り響き、周囲には霧散した水滴が雨の様に降り注ぎ……エンヴィーが軽く口角を吊り上げた。
「っ!?」
ハスルートが咄嗟に振り返ると同時に……彼の背後に展開された数多の水の刃が天から地上へと降り注いだ。
「す、凄い……」
その光景にクレスがポツリと呟きを漏らす。
十剣達はエンヴィーを含めルーミエルの眷属である神獣達に稽古をつけてもらっている。
稽古は所詮は訓練であり、全く本気では無い事も、手加減をされている事も当然理解している。
しかし、それでも、その姿は十剣達が唖然とする程に圧倒的だった。
フッと十剣達を守っていた結界が消える。
「終わったよ」
戦闘が始まる前と変わら無い微笑みを浮かべるエンヴィー。
一歩たりとも動く事すら無く、敵に触れる事すらさせずに圧倒する。
これが、これこそが神獣と呼ばれる者の力、真に神に至った存在。
その瞬間。
十剣達が一瞬、決着がついたと気を抜いた瞬間。
エンヴィーの背後で、瓦礫を吹き飛ばしながら漆黒の魔力が迸る。
「エンヴィー様っ!!」
五ノ剣、エルフィーが悲鳴の様な声を上げた。
「消し飛べっ!」
ハスルートの愉悦が混じった声が鳴り響き……
「言ったでしょ、終わりだって」
ニヤリと笑みを浮かべるエンヴィーの言葉と共に、膨れ上がっていたハスルートの膨大な魔力が霧散した。
「これは、一体……」
「彼、黒の宝玉……魔王の欠片を大量に体内に取り込んだよね?」
何が起こったのか分からないと言った表情を浮かべる十剣達や唖然とするハスルートに言い聞かせる様にエンヴィーが言葉を紡ぐ。
「魔王とは正真正銘の神に至った存在。
神でも無い者がそんな魔王の一部を大量に取り込んだら……」
「ぁあ?」
言葉の代わりに吐血し、鼻から、目から血を流してハスルートの膝が地面に落ちる。
「魔王の欠片に身体が耐え切れずに、崩壊する」
戦場に、戦場だった場所にハスルートの絶叫が鳴り響いた。
それは至って自然に。
そうある事が当たり前の様に、エンヴィーの魔力が空間を支配する。
ハスルートの様に迸らせる事も、膨大な魔力を紫電させる事も無く。
大海の底を思わせる静寂。
いつの間にか、傷は無くなり、服は元通りになっているエンヴィーの背中。
その様子は黒き化身を圧倒したフェルの……偉大な神獣、神の背中。
パチンッ!
静寂の中に渇いた音が鳴り響く。
エンヴィーによって十剣達の周りに結界が展開される。
「危ないから、そこから出ない方が良いよ。
僕の本気の威圧を浴びたく無いでしょ?」
エンヴィーのその何気ない言葉に十剣達は固唾を飲み込む。
「さてと、良いところを……」
「死ねっ!」
一瞬でエンヴィーの背後を取ったハスルートがその声と共に神速の一閃を放つ。
彼の手に握られた漆黒の剣は、その剣圧で見渡す限りの地面を一直線に切り裂き、その破壊力は地面を大きく陥没させる。
山すらも一刀の元に消滅させる一撃。
地図を書き換えなければなら無いその攻撃……エンヴィーは一歩も動く事無く、手を触れる事すらなく受け止めた。
「我が君達にお見せしないとね!」
余裕の笑みを浮かべるエンヴィーの周囲には、超高密度に圧縮され、超高速度で回転する2メートル程度の水球が1つ。
「なっ!?」
地面すらも容易く切り裂く漆黒の剣を水が受け止めると言う、その信じ難い光景にハスルートが唖然と目を見開く。
キィィィィン!!
と音を立てながら水球はハスルートの漆黒の剣を弾いて吹き飛ばす。
「増えろ」
エンヴィーがそう呟くと同時に、高速回転していた水球が多数に分裂し、幾多もの水の刃を作り上げる。
「クソッ!」
回転しながら翼を広げ、空中で体制を立て直したハスルートが悪態を吐きながらエンヴィーを睨みつけ……
パチンッ
無慈悲な音が鳴り響いた。
エンヴィーの指が打ち鳴らされたのを合図に、水の刃が一斉にハスルートに襲い掛かる。
「舐めるなぁっ!!」
漆黒の剣を離し、突き出された両手に宿るは禍々しき漆黒の魔力。
「はぁっ!」
バッ! と左右に開かれたハスルートの腕に呼応する様に彼の前方に漆黒の壁が展開され、水の刃を受け止める。
凄まじい爆音が鳴り響き、周囲には霧散した水滴が雨の様に降り注ぎ……エンヴィーが軽く口角を吊り上げた。
「っ!?」
ハスルートが咄嗟に振り返ると同時に……彼の背後に展開された数多の水の刃が天から地上へと降り注いだ。
「す、凄い……」
その光景にクレスがポツリと呟きを漏らす。
十剣達はエンヴィーを含めルーミエルの眷属である神獣達に稽古をつけてもらっている。
稽古は所詮は訓練であり、全く本気では無い事も、手加減をされている事も当然理解している。
しかし、それでも、その姿は十剣達が唖然とする程に圧倒的だった。
フッと十剣達を守っていた結界が消える。
「終わったよ」
戦闘が始まる前と変わら無い微笑みを浮かべるエンヴィー。
一歩たりとも動く事すら無く、敵に触れる事すらさせずに圧倒する。
これが、これこそが神獣と呼ばれる者の力、真に神に至った存在。
その瞬間。
十剣達が一瞬、決着がついたと気を抜いた瞬間。
エンヴィーの背後で、瓦礫を吹き飛ばしながら漆黒の魔力が迸る。
「エンヴィー様っ!!」
五ノ剣、エルフィーが悲鳴の様な声を上げた。
「消し飛べっ!」
ハスルートの愉悦が混じった声が鳴り響き……
「言ったでしょ、終わりだって」
ニヤリと笑みを浮かべるエンヴィーの言葉と共に、膨れ上がっていたハスルートの膨大な魔力が霧散した。
「これは、一体……」
「彼、黒の宝玉……魔王の欠片を大量に体内に取り込んだよね?」
何が起こったのか分からないと言った表情を浮かべる十剣達や唖然とするハスルートに言い聞かせる様にエンヴィーが言葉を紡ぐ。
「魔王とは正真正銘の神に至った存在。
神でも無い者がそんな魔王の一部を大量に取り込んだら……」
「ぁあ?」
言葉の代わりに吐血し、鼻から、目から血を流してハスルートの膝が地面に落ちる。
「魔王の欠片に身体が耐え切れずに、崩壊する」
戦場に、戦場だった場所にハスルートの絶叫が鳴り響いた。
10
お気に入りに追加
2,156
あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる