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第12章 深淵の決戦編
196話 恐怖の失態
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「エ、エンヴィー様、如何なさったのですか?」
エンヴィーのあまりの姿に、アスティーナが恐る恐ると言った様子で語りかける。
エンヴィーは神獣と呼ばれる、自分達とは文字通り次元が違う強さを誇る存在。
そんなエンヴィーの服は所々破けており、まさしくボロ雑巾と呼ぶに相応しい程にズタボロになっている。
エンヴィー程の存在がこの様なこれ程までのダメージを負っている事に十剣達は戦慄する。
自分達が魔教団最高幹部と戦っている間、このお方はどれ程の化け物と戦っていらしたのか、と……
「よくぞ聞いてくれたね!」
「貴様、何者だ?」
「本当に、酷いんだよ? 僕は違うって言ったのにさ。
アレはもはや鬼だね、鬼」
事情を聞いてきたアスティーナにエンヴィーは嬉しそうに語り始める。
威圧する様に魔力を迸らせるハスルートの誰何は完全に無視された。
「僕は我が君を抱っこしてただけなんだよ?
それなのに、僕が我が君を襲おうとした変態だって決めつけてさ! 酷いと思わないっ!?」
「聞いているのか?」
事情の説明をしているうちにエキサイトして、徐々にエンヴィーの愚痴が混ざり始める。
そして鬱憤が溜まりに溜まったエンヴィーはハスルートの言葉なんて聞いているはずも無く……
「本当にさ、メルヴィーにオルグイユにアヴァリスの3人で寄ってたかって僕の事をフルボッコ。
あんなんだからお嫁の貰い手が無くて、行き遅れるんだよ。
ね、皆んなもそう思わない?」
それは最早、唯の愚痴だった。
本人達がいないのをいい事に言いたい放題であった。
そんなエンヴィーの問い掛けに、十剣達は微妙な苦笑いを浮かべてやり過ごす。
圧倒的格上、それもルーミエルの眷属とあっては彼らはエンヴィーの言葉を否定する訳にもいかず。
最早、パワハラである。
そして、無視に無視を重ねられたハスルートはと言うと……その顔を屈辱に歪めて眉をピクピクと跳ねさせていた。
「あ、あの……」
「ん? やっぱり、ネロ君もそう思うよね!」
「いや、そうじゃ無くて。
エンヴィー様、そんな事を言って大丈夫なのですか?」
「え?」
「多分ですけど、皆様この場を見ていらっしゃるんじゃ……」
たった一言。
ネロのその一言でその場の空気が凍結し、エンヴィーがピタリと動きを止めた。
エンヴィー以外の誰もが思っていたネロの発言に微妙な空気が舞い降りる。
そして、エンヴィーは……笑顔のまま硬直し、ダラダラッ! と凄まじい勢いで冷や汗を流す。
「ま、ま、まっ、マズイ事になったよっ!?
何で誰もその事を先に言ってくれないのさっ!!」
頭を抱え、焦りに焦った様子のエンヴィーの視線を受けて全員がスッと目を逸らす。
そこには大海の支配者たる威厳など欠片も存在しなかった。
「如何やって、僕の攻撃を無効化したのかは知らないけど……貴様らはぶっ殺す!!」
その様子に、自身を完全に無視したこの状況に、ハスルートの堪忍袋の緒が切れた。
大気を震わす魔力を迸らせ、漆黒の翼をはためかせる。
凄まじい速度でエンヴィーに向かって一直線に飛ぶハスルートの手には漆黒の長剣。
彼の体表を守っていた黒い紋様が形を成した禍々しい剣を振り上げ……
「君さっきから煩いよっ!」
煩わしそうに振るわれたエンヴィーの腕によって吹き飛ばされた。
羽虫でも払うかの様に……
「マジでどうしよう!? 帰ったら僕、多分あの3人にミンチに……いや、殺されるよっ!!」
吹き飛ばされ、先程の巨大な柱の残骸に叩きつけられたハスルートを、エンヴィーは一瞥すらせずに頭を抱える。
「ふざ、けるなよ……僕が、神の力を手に入れたこの僕がっ!
殺してやる、絶対に殺してやるっ!!」
ハスルートが異空間より取り出したのは大量の黒い宝玉。
そして、それを……喰らった。
敬意もクソも無いエンヴィーの姿に苦笑いを浮かべていた十剣達は、その光景を目にして顔を青褪めさせる。
「エ、エンヴィー様、この窮地を切り抜ける方法は一つしかありません」
「その通りです! ユリウスっちが良い事言った!!」
「責務をしっかりと果たされれば、皆様も許して下さいくださいますよっ!!」
それはもう必死だった。
ネロなんて、言っている事が意味不明な程に……しかし、その努力は功を成す。
「そうだよね! きっと許してくれるよね!!」
エンヴィーもまた、必死だったのだ。
「あれ? あんな禍々しい魔力だったっけ?」
敵を見据えてエンヴィーは軽く首を傾げる。
ニヤリと笑みを浮かべて佇む少年、ハスルートは深淵を思わせる漆黒の魔力を纏っていた。
「この僕の、神すらも超える力の前にひれ伏すがいい!」
ハスルートから立ち昇る漆黒の魔力が空間を黒く、そして禍々しく染め上げる。
「うわぁ、何あれ?
まぁ別にいいけど……僕ってこう見えて結構強いよ?」
ニヤリと好戦的な笑みを浮かべたエンヴィーが、その魔力を解き放った。
エンヴィーのあまりの姿に、アスティーナが恐る恐ると言った様子で語りかける。
エンヴィーは神獣と呼ばれる、自分達とは文字通り次元が違う強さを誇る存在。
そんなエンヴィーの服は所々破けており、まさしくボロ雑巾と呼ぶに相応しい程にズタボロになっている。
エンヴィー程の存在がこの様なこれ程までのダメージを負っている事に十剣達は戦慄する。
自分達が魔教団最高幹部と戦っている間、このお方はどれ程の化け物と戦っていらしたのか、と……
「よくぞ聞いてくれたね!」
「貴様、何者だ?」
「本当に、酷いんだよ? 僕は違うって言ったのにさ。
アレはもはや鬼だね、鬼」
事情を聞いてきたアスティーナにエンヴィーは嬉しそうに語り始める。
威圧する様に魔力を迸らせるハスルートの誰何は完全に無視された。
「僕は我が君を抱っこしてただけなんだよ?
それなのに、僕が我が君を襲おうとした変態だって決めつけてさ! 酷いと思わないっ!?」
「聞いているのか?」
事情の説明をしているうちにエキサイトして、徐々にエンヴィーの愚痴が混ざり始める。
そして鬱憤が溜まりに溜まったエンヴィーはハスルートの言葉なんて聞いているはずも無く……
「本当にさ、メルヴィーにオルグイユにアヴァリスの3人で寄ってたかって僕の事をフルボッコ。
あんなんだからお嫁の貰い手が無くて、行き遅れるんだよ。
ね、皆んなもそう思わない?」
それは最早、唯の愚痴だった。
本人達がいないのをいい事に言いたい放題であった。
そんなエンヴィーの問い掛けに、十剣達は微妙な苦笑いを浮かべてやり過ごす。
圧倒的格上、それもルーミエルの眷属とあっては彼らはエンヴィーの言葉を否定する訳にもいかず。
最早、パワハラである。
そして、無視に無視を重ねられたハスルートはと言うと……その顔を屈辱に歪めて眉をピクピクと跳ねさせていた。
「あ、あの……」
「ん? やっぱり、ネロ君もそう思うよね!」
「いや、そうじゃ無くて。
エンヴィー様、そんな事を言って大丈夫なのですか?」
「え?」
「多分ですけど、皆様この場を見ていらっしゃるんじゃ……」
たった一言。
ネロのその一言でその場の空気が凍結し、エンヴィーがピタリと動きを止めた。
エンヴィー以外の誰もが思っていたネロの発言に微妙な空気が舞い降りる。
そして、エンヴィーは……笑顔のまま硬直し、ダラダラッ! と凄まじい勢いで冷や汗を流す。
「ま、ま、まっ、マズイ事になったよっ!?
何で誰もその事を先に言ってくれないのさっ!!」
頭を抱え、焦りに焦った様子のエンヴィーの視線を受けて全員がスッと目を逸らす。
そこには大海の支配者たる威厳など欠片も存在しなかった。
「如何やって、僕の攻撃を無効化したのかは知らないけど……貴様らはぶっ殺す!!」
その様子に、自身を完全に無視したこの状況に、ハスルートの堪忍袋の緒が切れた。
大気を震わす魔力を迸らせ、漆黒の翼をはためかせる。
凄まじい速度でエンヴィーに向かって一直線に飛ぶハスルートの手には漆黒の長剣。
彼の体表を守っていた黒い紋様が形を成した禍々しい剣を振り上げ……
「君さっきから煩いよっ!」
煩わしそうに振るわれたエンヴィーの腕によって吹き飛ばされた。
羽虫でも払うかの様に……
「マジでどうしよう!? 帰ったら僕、多分あの3人にミンチに……いや、殺されるよっ!!」
吹き飛ばされ、先程の巨大な柱の残骸に叩きつけられたハスルートを、エンヴィーは一瞥すらせずに頭を抱える。
「ふざ、けるなよ……僕が、神の力を手に入れたこの僕がっ!
殺してやる、絶対に殺してやるっ!!」
ハスルートが異空間より取り出したのは大量の黒い宝玉。
そして、それを……喰らった。
敬意もクソも無いエンヴィーの姿に苦笑いを浮かべていた十剣達は、その光景を目にして顔を青褪めさせる。
「エ、エンヴィー様、この窮地を切り抜ける方法は一つしかありません」
「その通りです! ユリウスっちが良い事言った!!」
「責務をしっかりと果たされれば、皆様も許して下さいくださいますよっ!!」
それはもう必死だった。
ネロなんて、言っている事が意味不明な程に……しかし、その努力は功を成す。
「そうだよね! きっと許してくれるよね!!」
エンヴィーもまた、必死だったのだ。
「あれ? あんな禍々しい魔力だったっけ?」
敵を見据えてエンヴィーは軽く首を傾げる。
ニヤリと笑みを浮かべて佇む少年、ハスルートは深淵を思わせる漆黒の魔力を纏っていた。
「この僕の、神すらも超える力の前にひれ伏すがいい!」
ハスルートから立ち昇る漆黒の魔力が空間を黒く、そして禍々しく染め上げる。
「うわぁ、何あれ?
まぁ別にいいけど……僕ってこう見えて結構強いよ?」
ニヤリと好戦的な笑みを浮かべたエンヴィーが、その魔力を解き放った。
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