最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

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第12章 深淵の決戦編

195話 覚醒

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「これは……マズイっ!!
 皆んな、離れるんだっ!」

 突然の出来事に唖然とする十剣達にユリウスは声を荒げて指示を飛ばす。
 ハスルートに近づいていたユリウスは確かに目撃した……ハスルートの手に握られた黒い宝玉を……

「ガアァッッッ!!!」

 地面に崩れ落ち、吐血しながら踠きながら、ハスルートは叫び続ける。
 膨大な漆黒の魔力が立ち昇り、空を黒く染め上げ、空間を埋め尽くす。

「この感じ、まさか……」

 その光景にネロがポツリと呟き、固唾を飲み込み、その頬からは一筋の冷や汗が滴り落ちる。

 それは余りに酷似していた。
 勇者の一人が黒き化身と化した時の独特の空気に、禍々しい魔力に、そして押し潰されるような威圧に。

「ユリウスっち……」

「はい、彼は手に黒い宝玉を持っていました」

 神妙な面持ちのユリウスの言葉にネロを始め、あの場に居合わせた4人の顔が緊張に強張る。

「来ますよ……」

 先程までとは打って変わり、重心を落とし剣の柄に手を掛け、神経を研ぎ澄ませて身構える。
 そして……

「フッ、フフフ、フハハハッ!!」

 静まり返り、静寂が支配する戦場に少年の高笑いの声が響き渡った。
 空気中に解き放たれた膨大で濃密な魔力が、パリパリと紫電する。

 バキッ!

 ハスルートの周囲を包み込んでいた黒い繭が罅割れ……

「お待たせしたかな?」

 漆黒を纏ったハスルートがニヤリと笑みを浮かべた。

「これは……」

 その様子に目を丸くして唖然と見詰める十剣達に、ハスルートは優しげな微笑みを向ける。
 そこに宿るのは絶対的な自信。
 自身の勝利を確信している余裕の笑顔。

「あの勇者くん程度なら宝玉の力に呑み込まれて自我は消滅する。
 でも……僕程の強者なら自我を保ったまま宝玉の力を己のモノにできるのさ!!
 僕はこの覚醒をもって到達者すら超えた存在に、神になったんだよっ!!」

 優しげな微笑みを、残虐な笑みに変えて手を地面に向けながら腕を伸ばす。
 そのハスルートの背中からは漆黒の翼が出現し、軽やかに宙に舞い上がる。

「さぁ、これが到達者すら超える神の力だっ!!」

 ハスルートが腕を振り上げると共に地鳴りが周囲に鳴り響き、地表を突き破って巨大な壁が空に向かって立ち登る。

 壁を構成するのは先程の柱とは違い、グツグツと煮えたぎる灼熱の液体。
 その正体は星の中心部である核を形成するマグマでありその温度は4000度を優に超える。

「骨も残らずに消えて無くなれっ!!」

 天に向かって振り上げられたハスルートの腕が振り下ろされ……そり立つ壁が一斉に崩れ去る様に揺れ動く。

 その様はまるで押し寄せる津波。
 灼熱のマグマが全てを飲み干す巨大な波となって十剣達に襲い掛かる。

「多重消滅結界!!」

 グラウスが杖を振り翳し周囲を覆う様に結界を展開させる。
 それはルーミエルの滅光結界を元にした、消滅の魔力を纏わせたグラウスが誇る最高の結界。
 しかし……

「ぐっ……」

 グラウスの口から苦しげな声が漏れる。
 絶えず襲い来る灼熱の津波は展開された多重結界を次々に飲み込み溶かす。

「イヴっ!」

「分かっています!
 全てを凍てつなさい、凍てつく世界アイスワールド!!」

 到達者として覚醒したイヴから放たれる氷結の魔力。
 時間すらも凍り付かせる氷結の世界は、しかし……

「そんなっ!?」

 イヴの口から悲壮な声が漏れる。
 彼女の凍てつく世界アイスワールドは確かに溶岩の津波を凍り付かせた。
 しかし、その上から更なる溶岩によって飲み込まれる。

「ま、まずいぞ……」

 そして遂に、グラウスが展開させた結界、その最後の一枚が溶かされ……迫り来る溶岩の津波が消し飛んだ。

「まぁ、これは仕方ないね。
 でも安心して良いよ、ここからは僕がアイツの相手をするからさ」

 十剣達の前に立つのは一人の男。
 ルーミエルの眷属の一人にして神獣と呼ばれる、大海の支配者。

「エン、ヴィー…様?」

 姿を現したエンヴィーは何故かズタボロだった。
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