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第12章 深淵の決戦編

193話 幼女神の試練 〝解放〟

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 一瞬訪れる静寂の間を破る地鳴りが鳴り響き、地面が揺れる。
 その揺れは徐々に大きくなって行き……

「これは……」

 ポツリとユリウスが目を細め呟いた、その瞬間……地面が爆ぜた。
 全員が背後に飛び退き、その全貌が顕になる。

 そこに立ち昇るのは大量の柱。
 直径10メートル以上は有ろうかと言う巨大な柱が生き物の様に、触手の様に蠢き揺れる。

「言ったよね、僕は全ての金属を司る。
 地中に含まれている大量の金属を操り、大地を支配する事も可能って訳さっ!」

 顔を歪めて高らかに嗤うハスルートは、不意にその笑みを消してポツリと呟く。

「潰れろ」

 その一言で幾多もの柱が意思を持った生き物の様に一斉に十剣達に迫り来る。
 そこにあるのは熟練の技量では無く、純粋な力。

 唯々圧倒的な質量を持って迫る柱は、一本ならば十剣やアレック、グラウス達にとって大した脅威にはなり得ない。
 しかし……

 一本目の柱が地面を穿ち、二本目の柱が地面を陥没させる。
 巻き上がる土煙が視界を遮り、割れる地面が足場を乱す。
 息つく暇もなく遅い来る柱を避け続ける事は徐々に困難となって行き……

「くっ!!」

 遂にその身を捉えた。

「死ねぇっ!!」

 一本の柱によって地面に叩き付けられたユリウスに大量の柱が降り注ぐ。
 圧倒的過ぎる柱は地面を揺らし、局地的な地震すら発生させる。

「ふ、あはははっ!  これは確実に死んだね!!
 この柱の先はアダマンタイトとオリハルコンの合金。
 これだけの数の柱に潰されちゃったら、原型を止めずに肉片になってるだろうね!!」

 パラパラと土埃が降り注ぐ。
 360度全方位から大量に突き立てられた柱はさながら大樹の様な光景を作り出す。

「さぁ、次にミンチになるのは誰かな?」

 愉悦に染まった笑みを浮かべるハスルートは前方を、対峙する敵を見て、その笑顔に僅かな動揺が混ざる。

 この大地を支配する神の如き圧倒的な力。
 この場に於いてハスルートは抗う事も出来ず、逃げ惑う事しか許され無い絶対者。
 事実、十剣の頂点に立つ一ノ剣・剣聖と呼ばれるユリウスですら何も出来ずにミンチになった……しかし……

 だと言うのに。
 仲間をリーダーを一方的に殺されたと言うのに……彼等の顔には余裕ある微笑みが浮かぶ。

 ビキッ

 一瞬の静寂の間を縫う様に鈍い音が鳴り響く。
 それは絶対の強度を誇る合金の柱に罅が入った音。

「なっ!?」

 その信じられ無い事実を前にハスルートは驚愕に目を見開く。
 その間にも罅は大樹の様に鎮座する柱に広がり……砕け散る。

「今のはかなり危なかったですね」

 そんな事を言いながら、崩れ行く柱の陰から姿を表すのは潰されてミンチになったはずのユリウス。
 多少の傷を負いながらも五体満足で、服に着いた埃を払うその姿にハスルートの目が唖然と限界まで見開かれる。

我々では勝てそうもありませんね」

 周囲に7色の光を漂わせるユリウスは、ポツリと呟く言葉とは裏腹に好戦的な微笑みを浮かべる。

「申し訳ございません。
 貴女様のご指示を破る事になってしまいました」

 ユリウスは虚空に向かい深々と頭を下げ謝罪する。
 そんなユリウスの様子に肩を竦めつつも、他の者達も同様に頭を下げる。

「一体何を……」

 そんな奇妙な光景にハスルートは攻撃する事すら忘れてポツリと呟やく……いや、ハスルートは深層心理で、彼の鋭い本能が悟ったのだ。
 今この場だけは、邪魔してはならないと……

「確かに貴方は強い。
 到達者の中でも上位に位置する程にでしょう。
 今の我々では到底貴方には敵わない」

「な、何を言って」

 ユリウスの言葉にはハスルートは動揺を浮かべる。
 その言い草はまるで……

「ですので、我々も本気で闘わせてもらうとしましょう」

 その瞬間。
 ユリウスの……十剣やアレック、グラウスの手首に光輝くブレスレットが浮かび上がる。
 その光のブレスレットは輪を広げ……

「「「「「解放」」」」」

 パリンっ!

 ガラスが割れる様な音とも砕け散り、空気に溶けて消え去った。

「なっ!?」

 ハスルートが唖然と声を漏らす。
 彼の眼前に立つのは、先程とは比較にならない程に膨大な存在感を放つ敵の姿。
 彼等が放つ存在感、それはまさしく……

「馬鹿なっ!  全員が僕と同じ到達者だと!?」

 到達者に至り初めて一人前と認められるイカれた組織。
 そんな場所に放り込まれ、到達者など遥かに超える超越者にボコられる。
 そんな訓練地獄を生き抜いた彼等が〝到達者〟に至っていないハズが無かった。

「ここからが、本当の勝負です」

 唖然とするハスルートとは対照的に、12人の到達者は好戦的な微笑みを浮かべた。
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