最強幼女は惰眠を求む！ 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

第１２章 深淵の決戦編

188話 幼女神の試練 〝開戦〟

「ん～？」

　魔教団最高幹部の一人。
　黒い髪をした少年、ハスルートは深く腰掛けていたソファーから立ち上がる。

「どうかしましたかな？」

　突然のハスルートの行動に、元アレサレム王国国王ルナンは赤い液体の入ったワイングラスをテーブルに置くと緊張した様子で身構える。

「ふふ、そんなに身構えてどうしたのですか？」

　そんなルナンを見下す様に、妖艶な赤髪の美女がニヤリと笑みを浮かべる。

「リリアーナさん、あまり言ってしまってはルナン殿がお気の毒ですよ」

「しかし、たった１日で尻尾を巻いて逃げるとは情け無い。
　元とは言え、これが大国の国王だと思うと嘆かわしいですね」

　妖艶なリリアーナとは違い見る者に清楚な印象を与える少女シェミナは言葉とは裏腹に、明らかにルナンを見下し。
　さらりとした美青年であるハールトは笑みを浮かべながら侮蔑の視線を向ける。

　そんな３人。
　ハスルートや自身と同じ最高幹部の態度に屈辱に震えながらもルナンは黙り込む。

　お前達は奴を、あの幼女を知らないからそんな事が言えるのだっ！！
　そう内心で怒鳴りながらも声には出さずに押し殺す。

　そんな事をしても無駄だと理解しているし、何よりこの３人にも同じ様に絶望を味合わせたい。
　そして自分を見下しているコイツらを嘲笑ってやるのだ！！

　俯きながらくつくつと小さく笑い始めたルナンに３人は気色悪そうに視線を見つめ、再び口を開き……

「君達、ちょっと煩いよ？」

　空気を押し潰す様な威圧に掻き消された。
　そこに普段の微笑みは無く、ハスルートの鋭い視線に射抜かれて身体が固まる。
　声が出ずに口が僅かに震え、全身から冷や汗が吹き出し、呼吸が乱れる。

「けどまぁ、ちょうどいいかな。
　そんなに元気が有り余ってるなら、お客さん達のご対応を頼むよ」

「…お客さん達、ですか？」

　ふっと視線が緩み普段通りの笑みを浮かべるハスルートに、肩を揺らし頬から汗を滴らせながらハールトが聞き返す。

「そうそう、お客さん。
　この分じゃ、送り込んだ部隊には期待できそうに無いなぁ……まぁ、死んだら死んだで別に構わないんだけどさ」

「部隊がっ！
　どういう事ですか！？」

「んん？  あぁ、まぁこっちの話だから気にしないで。
　それよりも……来たよ」

　困惑した様な面持ちで詰め寄るハールトに言葉とは裏腹に有無を言わせない笑みを向け、そう呟いた瞬間……地上に展開されていた魔教団の拠点が轟音と共に吹き飛んだ。