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第11章 深淵の試練攻防戦編
181話 迷宮内攻防戦 嫉妬の悪魔
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「うわぁ~、えげつないなぁ……」
「貴様、ふざけているのか?」
片目を閉じて苦笑いを浮かべる薄っすらと水色がかった銀髪の青年は、投げ掛けられたその言葉に軽く肩を竦めて見せる。
「いやね、ちょっと僕の友人の所業にビックリしちゃってね!
気分を害したなら謝るよ、悪気は無かったんだ。
えっと……それで、なんだっけ?」
軽く頬を掻く青年の様子に、対峙する男の額に青筋が浮かぶ。
「死にたい様だな」
「ちょっ! 待って待って、平和的に行こうよっ!!」
「我々は気が付いたらここに居た。
ついさっきまで深淵の試練の第28階層に居たにも関わらずだ」
焦った様な身振りをする青年を他所に、鋭い視線で青年を睨みつけながら男は語る。
「信じ難いがそれはつまり、我々は気付くことすら出来無い内に転移させられたと言う事。
そして、その転移先にいた貴様が敵である事は確実。
我等に戦わ無いなどと言う選択肢は端から存在しない」
戦意を露わに獲物に手を掛け腰を落とす男の姿に、青年はニヤリと笑みを浮かべて周囲を軽く見回す。
「どうやら、君達を少し見縊っていた様だね。
君は勿論、君が率いる10万の軍勢にも大した混乱が見られない。
クレイネ君率いる第三軍団の兵士達はかなり動揺していたみたいだけど……君達には期待が持てそうだ」
青年の言葉に対峙する軍隊が少し騒めくも、青年と言葉を交わす男、軍団長の視線を受けて静まり返る。
「はっはっは! イイねぇ!! 本当によく訓練されている様だ。
おっと、そう言えば自己紹介がまだだったね。
僕の名はエンヴィー。
秘密結社ナイトメア、深淵から世界を覗く者の1人だ、よろしくね!」
「私はグレリオル。
魔教団、第二軍団軍団長だ」
ニッコリと笑顔を浮かべる青年、エンヴィーは何処か幼さを感じさせ、社交界に出れば黄色い悲鳴が鳴り響くだろう。
しかし、グレリオルにはエンヴィーの笑顔に言い知れぬ感情を抱く。
この感じは一体何なのか? その答えはすぐに知る事になる……
「ではグレリオル君。
これから死に行く君達に、君達が知らない真実を教えてあげよう。
何も知らないまま死ぬのは不憫だからね」
そんな不遜に思える言葉。
いや、10万もの大軍を前には不遜ですら無く、ただの狂言だと断じられる様な言葉。
しかし、エンヴィーの浮かべる笑みを前に誰も口を挟まない。
社交界では黄色い悲鳴が飛び交うであろう笑顔が、彼らにとっては狂気の宿る恐ろしいナニカに映る。
「さっきグレリオル君が言った様に君達は転移させられている。
ここは深淵の試練の最深部、第230階層。
君達の為だけに作られた特別ステージさ」
「230階層? 特別ステージ? 貴様は一体何を言っているんだ?」
「まぁ、信じたく無い気持ちもわかるよ。
けど事実なんだよね。
そもそも深淵の試練とは全200階層からなる大迷宮。
今回はこの迷宮の主人である我が君が、君達との戦いの為……と言うか、僕達が本気を出せる様に増築したって訳さ」
「なん、だと…もし、貴様の言う事が事実ならば……」
「その通り。
君達はこの迷宮を攻略するつもりが、逆に誘い込まれていたって訳さ。
因みに、第一軍団は220階層、第三軍団も240階層で既に壊滅してるよ」
「なっ!? バカなっ!!
他の軍団がいつ転移されられたかは不明だが、連絡が途絶えてからまだそれ程時間は経っていないはず。
最新式の装備を揃えている10万もの大軍がこんなに短期間で壊滅するはずは……」
「あるんだよね、これが。
何故なら君達の相手は我が君、超越者たる神なのだから」
「神だと……何をバカな事を、っ!?」
グレリオルの言葉は途切れ、彼は……彼等は驚愕に目を見開く。
目の前の存在、エンヴィーから発せられるその圧倒的過ぎる重圧に。
空気が重くなり、地面が軋み、大気が震える。
「もう一度名乗ろう。
僕の名はエンヴィー。
我が君の眷属にして、大海を統べる者」
大海を統べる者。
その名で呼ばれる存在はこの世界に於いてただ1つ。
それは太古の大戦にて暴れ回り、神話にすら語られる神獣の一体。
「ま、まさか貴様は、いや、貴方様は……」
遥か高みからそう告げるエンヴィー。
その冷たい視線を浴びて、グレリオルは漸くエンヴィーの笑顔に抱いた感情を理解する。
それは、強者に対峙した際に全ての生物が抱くごく自然な感情。
抗う事が出来ない圧倒的強者に対する恐怖の感情。
「大海の底へと沈むがいい」
一瞬で空間を水が満たし、突如として現れた水に万近い兵士達が空気を求めて踠き意識を失う。
しかし、そうした兵士達は非常に幸運だった、その恐怖を感じる事なく死ぬ事が出来たのだから。
魔法で空気の膜を作り生き長らえたグレリオルを含める殆どの兵士達はその効果を見る事になる。
水の中にあって、先程と変わらず佇むエンヴィーが伸ばした右手を握り締める。
意識を失い、水に浮いていた全ての兵士達が……一瞬にして押し潰され、後に残るは水に浮かぶ大量の血液のみ。
誰もが唖然とその光景を見つめ……エンヴィーの手を向けられてパニックに陥った。
そんな事は関係無いと無慈悲にも手は握り締められる。
空気の膜も幾重にも張り巡らせた結界も一瞬で突き破られ、大量の水が流れ込み……グレリオルの意識は闇に包まれた。
「貴様、ふざけているのか?」
片目を閉じて苦笑いを浮かべる薄っすらと水色がかった銀髪の青年は、投げ掛けられたその言葉に軽く肩を竦めて見せる。
「いやね、ちょっと僕の友人の所業にビックリしちゃってね!
気分を害したなら謝るよ、悪気は無かったんだ。
えっと……それで、なんだっけ?」
軽く頬を掻く青年の様子に、対峙する男の額に青筋が浮かぶ。
「死にたい様だな」
「ちょっ! 待って待って、平和的に行こうよっ!!」
「我々は気が付いたらここに居た。
ついさっきまで深淵の試練の第28階層に居たにも関わらずだ」
焦った様な身振りをする青年を他所に、鋭い視線で青年を睨みつけながら男は語る。
「信じ難いがそれはつまり、我々は気付くことすら出来無い内に転移させられたと言う事。
そして、その転移先にいた貴様が敵である事は確実。
我等に戦わ無いなどと言う選択肢は端から存在しない」
戦意を露わに獲物に手を掛け腰を落とす男の姿に、青年はニヤリと笑みを浮かべて周囲を軽く見回す。
「どうやら、君達を少し見縊っていた様だね。
君は勿論、君が率いる10万の軍勢にも大した混乱が見られない。
クレイネ君率いる第三軍団の兵士達はかなり動揺していたみたいだけど……君達には期待が持てそうだ」
青年の言葉に対峙する軍隊が少し騒めくも、青年と言葉を交わす男、軍団長の視線を受けて静まり返る。
「はっはっは! イイねぇ!! 本当によく訓練されている様だ。
おっと、そう言えば自己紹介がまだだったね。
僕の名はエンヴィー。
秘密結社ナイトメア、深淵から世界を覗く者の1人だ、よろしくね!」
「私はグレリオル。
魔教団、第二軍団軍団長だ」
ニッコリと笑顔を浮かべる青年、エンヴィーは何処か幼さを感じさせ、社交界に出れば黄色い悲鳴が鳴り響くだろう。
しかし、グレリオルにはエンヴィーの笑顔に言い知れぬ感情を抱く。
この感じは一体何なのか? その答えはすぐに知る事になる……
「ではグレリオル君。
これから死に行く君達に、君達が知らない真実を教えてあげよう。
何も知らないまま死ぬのは不憫だからね」
そんな不遜に思える言葉。
いや、10万もの大軍を前には不遜ですら無く、ただの狂言だと断じられる様な言葉。
しかし、エンヴィーの浮かべる笑みを前に誰も口を挟まない。
社交界では黄色い悲鳴が飛び交うであろう笑顔が、彼らにとっては狂気の宿る恐ろしいナニカに映る。
「さっきグレリオル君が言った様に君達は転移させられている。
ここは深淵の試練の最深部、第230階層。
君達の為だけに作られた特別ステージさ」
「230階層? 特別ステージ? 貴様は一体何を言っているんだ?」
「まぁ、信じたく無い気持ちもわかるよ。
けど事実なんだよね。
そもそも深淵の試練とは全200階層からなる大迷宮。
今回はこの迷宮の主人である我が君が、君達との戦いの為……と言うか、僕達が本気を出せる様に増築したって訳さ」
「なん、だと…もし、貴様の言う事が事実ならば……」
「その通り。
君達はこの迷宮を攻略するつもりが、逆に誘い込まれていたって訳さ。
因みに、第一軍団は220階層、第三軍団も240階層で既に壊滅してるよ」
「なっ!? バカなっ!!
他の軍団がいつ転移されられたかは不明だが、連絡が途絶えてからまだそれ程時間は経っていないはず。
最新式の装備を揃えている10万もの大軍がこんなに短期間で壊滅するはずは……」
「あるんだよね、これが。
何故なら君達の相手は我が君、超越者たる神なのだから」
「神だと……何をバカな事を、っ!?」
グレリオルの言葉は途切れ、彼は……彼等は驚愕に目を見開く。
目の前の存在、エンヴィーから発せられるその圧倒的過ぎる重圧に。
空気が重くなり、地面が軋み、大気が震える。
「もう一度名乗ろう。
僕の名はエンヴィー。
我が君の眷属にして、大海を統べる者」
大海を統べる者。
その名で呼ばれる存在はこの世界に於いてただ1つ。
それは太古の大戦にて暴れ回り、神話にすら語られる神獣の一体。
「ま、まさか貴様は、いや、貴方様は……」
遥か高みからそう告げるエンヴィー。
その冷たい視線を浴びて、グレリオルは漸くエンヴィーの笑顔に抱いた感情を理解する。
それは、強者に対峙した際に全ての生物が抱くごく自然な感情。
抗う事が出来ない圧倒的強者に対する恐怖の感情。
「大海の底へと沈むがいい」
一瞬で空間を水が満たし、突如として現れた水に万近い兵士達が空気を求めて踠き意識を失う。
しかし、そうした兵士達は非常に幸運だった、その恐怖を感じる事なく死ぬ事が出来たのだから。
魔法で空気の膜を作り生き長らえたグレリオルを含める殆どの兵士達はその効果を見る事になる。
水の中にあって、先程と変わらず佇むエンヴィーが伸ばした右手を握り締める。
意識を失い、水に浮いていた全ての兵士達が……一瞬にして押し潰され、後に残るは水に浮かぶ大量の血液のみ。
誰もが唖然とその光景を見つめ……エンヴィーの手を向けられてパニックに陥った。
そんな事は関係無いと無慈悲にも手は握り締められる。
空気の膜も幾重にも張り巡らせた結界も一瞬で突き破られ、大量の水が流れ込み……グレリオルの意識は闇に包まれた。
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