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第11章 深淵の試練攻防戦編
179話 迷宮内攻防戦 暴食の白虎 その1
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それは突然起こった。
「何だ、これは……?」
魔教団、第三軍団軍団長であるクレイネは唖然と呟く。
10万の兵士達を束ね、隊列を組み、長蛇の列を為して進軍する。
世界最大の迷宮と言えど、序盤では大した強敵も存在せず、進軍は順調そのもの。
先鋒を務める第一軍団が30階層に至り、当初の予定通り拠点を築き。
10階層間隔で進軍する第二軍団が食糧を運ぶ。
更に10階層後を行く第三軍団が後続である第四軍団が担う物資運搬の安全確保の為に新たに生み出された魔物を間引く。
そして第五軍団が確立した地上との経路を守護し、地上との繋がりを確保する。
それが総勢50万にも及ぶ魔教団軍が決定した深淵の試練攻略の為の作戦の第1段階であり。
その作戦に何の問題も無かった。
既に第一軍団は30階層に拠点を築き。
第二軍団は20階層後半に至り、クレイネ率いる第三軍団も15階層に到達した。
そしてソレが起こった。
突如として巻き起こった事態に、兵士達は困惑し周囲には騒めきが満ちる。
深淵の試練、第15階層。
彼は石造りの広々とした通路を進軍していた……ハズだった。
一瞬……今までと変わらぬ石の通路に一歩踏み出した次の瞬間には視界の全てが切り替わった。
目の前に広がるのは、ぐるりと周囲を囲う無人の観客席。
地面は石畳では無く、遮蔽物の無い土が広がる。
そこは、まさに闘技場だった。
「愚かにも我らが主人殿に牙を剥いた人間諸君」
闘技場に唐突に響き渡る1つの声。
闘技場の一角、本来であれば進行役が客を楽しませる為の少し開けた場所。
そこに立つ白髪の男はニヤリと笑みを浮かべて言い放つ。
「私に当たった諸君は非常に運がいい」
突然の事態に全員が困惑する中、軍団長であるクレイネは務めて冷静に問いかける。
「私はヴィスデロビア魔教団が第三軍団、軍団長クレイネ。
貴殿は何者だ?」
「どうやら魔教団の中にもまともな人間はいる様だ。
本来ならば我らが女神に牙を剥いた諸君らに名乗る名など無いのですが。
いいでしょう、私の名はグラトニー。
秘密結社ナイトメアの最高幹部の1人にして、女神である主人殿より暴食の称号を授かりし者」
白髪の男、グラトニーはそこで言葉を切ると、その美貌に戦意に満ちた笑みを浮かべる。
全身からは凄まじい魔力が立ち昇り、波打つ様に空気を揺らす。
その圧倒的な存在感に誰もが固唾を呑み、グラトニーの姿を凝視する。
「そして、諸君の生命を喰らう者だ」
次の瞬間には圧倒的な存在感が嘘の様に霧散するが、静かに呟く様なその一言は、不思議とこの場にいた10万全ての兵士達に響き渡った。
そんなグラトニーの姿を見てクレイネは全身が粟立つ事を自覚する。
指揮官としても、1人の戦士としても強者たるクレイネの直感が警鐘を鳴らす。
凛々しい外見の白髪の男。
社交界に出れば女性達の視線を集めそうな美貌の存在。
しかし一瞬だけ向けられた重圧は強大な魔物と対峙した時と同等……この男は紛れも無い化け物だと。
「確かに貴殿は只者では無さそうだ。
しかし、この軍勢を相手に貴殿たった1人で立ち向かうと?
勇敢ではあるが、些か無謀でしょう」
表面上の余裕は崩さず、クレイネは考える。
どうすれば最小の被害でこの男を排する事が出来るかを。
最も簡単なのが、この状況での魔法による一斉攻撃だが、それでは倒せないだろうとクレイネは考える。
クレイネの見立てでは、グラトニーの実力はまさしく一騎当千。
ネルウァクス帝国が誇る十剣にすら引けを取らない人類最高峰の強者。
そんな存在に対して魔法の一斉攻撃など大した効果は期待出来ない。
ではどうするべきか?
クレイネは目まぐるしく頭を回転させ……
「どうやら何か勘違いをしている様だ」
グラトニーの言葉によって……先程とは比にならない程の重圧。
重力が何倍にもなったかの様に錯覚する程のプレッシャーによって遮断された。
「高々、お前ら如き人間を相手にするのに無謀?
私がその気になれば、お前達など1分と掛からずに皆殺しに出来る事を理解し、忘れるな」
その遥か高みから向けられる言葉と瞳。
自然と息は上がり、体が震え、全身から脂汗が溢れ出る。
「しかし、普通に殺してしまってはつまらない。
ですので、ゲームをしましょう」
「ゲーム……」
「ええ、先程も言った様に諸君は非常に運がいい。
もし仮にゲームで勝ち残れば、死なずに済むのだから」
震える声で聞き返したクレイネの言葉を肯定し、グラトニーはニヤリと笑みを浮かべてそう言い放った。
「何だ、これは……?」
魔教団、第三軍団軍団長であるクレイネは唖然と呟く。
10万の兵士達を束ね、隊列を組み、長蛇の列を為して進軍する。
世界最大の迷宮と言えど、序盤では大した強敵も存在せず、進軍は順調そのもの。
先鋒を務める第一軍団が30階層に至り、当初の予定通り拠点を築き。
10階層間隔で進軍する第二軍団が食糧を運ぶ。
更に10階層後を行く第三軍団が後続である第四軍団が担う物資運搬の安全確保の為に新たに生み出された魔物を間引く。
そして第五軍団が確立した地上との経路を守護し、地上との繋がりを確保する。
それが総勢50万にも及ぶ魔教団軍が決定した深淵の試練攻略の為の作戦の第1段階であり。
その作戦に何の問題も無かった。
既に第一軍団は30階層に拠点を築き。
第二軍団は20階層後半に至り、クレイネ率いる第三軍団も15階層に到達した。
そしてソレが起こった。
突如として巻き起こった事態に、兵士達は困惑し周囲には騒めきが満ちる。
深淵の試練、第15階層。
彼は石造りの広々とした通路を進軍していた……ハズだった。
一瞬……今までと変わらぬ石の通路に一歩踏み出した次の瞬間には視界の全てが切り替わった。
目の前に広がるのは、ぐるりと周囲を囲う無人の観客席。
地面は石畳では無く、遮蔽物の無い土が広がる。
そこは、まさに闘技場だった。
「愚かにも我らが主人殿に牙を剥いた人間諸君」
闘技場に唐突に響き渡る1つの声。
闘技場の一角、本来であれば進行役が客を楽しませる為の少し開けた場所。
そこに立つ白髪の男はニヤリと笑みを浮かべて言い放つ。
「私に当たった諸君は非常に運がいい」
突然の事態に全員が困惑する中、軍団長であるクレイネは務めて冷静に問いかける。
「私はヴィスデロビア魔教団が第三軍団、軍団長クレイネ。
貴殿は何者だ?」
「どうやら魔教団の中にもまともな人間はいる様だ。
本来ならば我らが女神に牙を剥いた諸君らに名乗る名など無いのですが。
いいでしょう、私の名はグラトニー。
秘密結社ナイトメアの最高幹部の1人にして、女神である主人殿より暴食の称号を授かりし者」
白髪の男、グラトニーはそこで言葉を切ると、その美貌に戦意に満ちた笑みを浮かべる。
全身からは凄まじい魔力が立ち昇り、波打つ様に空気を揺らす。
その圧倒的な存在感に誰もが固唾を呑み、グラトニーの姿を凝視する。
「そして、諸君の生命を喰らう者だ」
次の瞬間には圧倒的な存在感が嘘の様に霧散するが、静かに呟く様なその一言は、不思議とこの場にいた10万全ての兵士達に響き渡った。
そんなグラトニーの姿を見てクレイネは全身が粟立つ事を自覚する。
指揮官としても、1人の戦士としても強者たるクレイネの直感が警鐘を鳴らす。
凛々しい外見の白髪の男。
社交界に出れば女性達の視線を集めそうな美貌の存在。
しかし一瞬だけ向けられた重圧は強大な魔物と対峙した時と同等……この男は紛れも無い化け物だと。
「確かに貴殿は只者では無さそうだ。
しかし、この軍勢を相手に貴殿たった1人で立ち向かうと?
勇敢ではあるが、些か無謀でしょう」
表面上の余裕は崩さず、クレイネは考える。
どうすれば最小の被害でこの男を排する事が出来るかを。
最も簡単なのが、この状況での魔法による一斉攻撃だが、それでは倒せないだろうとクレイネは考える。
クレイネの見立てでは、グラトニーの実力はまさしく一騎当千。
ネルウァクス帝国が誇る十剣にすら引けを取らない人類最高峰の強者。
そんな存在に対して魔法の一斉攻撃など大した効果は期待出来ない。
ではどうするべきか?
クレイネは目まぐるしく頭を回転させ……
「どうやら何か勘違いをしている様だ」
グラトニーの言葉によって……先程とは比にならない程の重圧。
重力が何倍にもなったかの様に錯覚する程のプレッシャーによって遮断された。
「高々、お前ら如き人間を相手にするのに無謀?
私がその気になれば、お前達など1分と掛からずに皆殺しに出来る事を理解し、忘れるな」
その遥か高みから向けられる言葉と瞳。
自然と息は上がり、体が震え、全身から脂汗が溢れ出る。
「しかし、普通に殺してしまってはつまらない。
ですので、ゲームをしましょう」
「ゲーム……」
「ええ、先程も言った様に諸君は非常に運がいい。
もし仮にゲームで勝ち残れば、死なずに済むのだから」
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