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第11章 深淵の試練攻防戦編
178話 迷宮内攻防戦 狼獣軍団 その3
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高位の魔物と言うもの達は総じて高い知能を有している。
魔物の頂点の一角とも言える龍種ともなれば、人間を遥かに凌駕する知能を有し、人よりも多くの知識を有する。
獣の王と称されるベヒーモスも当然その例に漏れず。
災禍級、危険度特A級に数えられる高位の魔物であり、人に劣らない高い知性を有している。
では、それだけの知性を持つ存在が、武装した5万もの集団に奇襲を仕掛けるだろうか?
その集団の背後には鎧も身に着けていない、油断した獲物がぶら下がっていると言うのに……
「バカ、な……」
果たしてそれは目の前に広がる惨劇に対してか、ベヒーモスの数に対してか。
リーガルの隣に立つ副官の1人が唖然と呟く。
リーガル達の眼前、魔教団第一軍団の半数を占める約5万人もの兵士達はまさしく蹂躙されていた。
天幕は原型を留めておらず、周囲には叫喚と血の匂いが充満する。
ある者は四肢を引き千切られ、地面を這いずりながらも逃げ惑う。
魔教団の精鋭である5万もの軍勢をもってすれば、ベヒーモスを複数体相手にする事さえ可能となる。
しかし、それはあくまでも魔教団が開発した最新鋭の装備を整え、隊列を組み迎え撃った場合。
第30階層と言う表層に於いて、出現するはずの無いベヒーモス。
偶然この階層にて出現したのか、獲物を求めて群れからはぐれたたのか。
どちらにしても、突発的に出現したはぐれ個体。
リーガル達、第一軍団上層部の判断は決して間違っていなかった。
後に控える迷宮攻略を考えれば、後続との連絡が途絶えた状況下で戦力の温存は正しい判断と言えた。
拠点ごと強制転移などと言う、非常識な事を考慮していなかっただけで……
「チィッ!」
舌打ちと共に、リーガルが立っていた付近の地面が爆ぜる。
静止状態からの急加速。
一瞬の内に、這いずる兵士に襲い掛かろうとしていたベヒーモスに切迫し、身の丈程もある大剣を片手で軽々と振るう。
ベヒーモスの攻撃を弾き、返す刃で鮮血が宙を舞う。
「チィッ、浅かったか」
胴体から血を流すベヒーモスは、低く唸りながらリーガルを警戒した様子で睨み付け……
ウォーーーーーンッ!!
咆哮が響いた。
ベヒーモスのそれとは違ったそれにより、兵士達を蹂躙していたベヒーモス達が示し合わせたかの様に踵を返して走り去る。
今まさに、ベヒーモスに食われようとしていた者は、そんなベヒーモスを唖然と見送り……大きな騒めきが巻き起こった。
「次から次へとっ!!」
リーガルは悪態を吐きながら、騒めきが起きた方向を睨みつける。
蹂躙された場所の反対側、武装した5万の兵士達の奥。
そしてリーガルの強化された視力が捉えたソレに目を見開く。
悠然と歩みを進める2人の少女と、そんな2人に付き従う3体の気高き大狼。
誰もがその存在に呑まれて身を固める。
自然と覚える根源的な恐怖に手足が震え、構える武器がカタカタと不愉快な音を鳴らす。
その恐怖は果たして、あのベヒーモスをも超える存在感を放つ大狼に対してか……否。
これは大狼を引き連れて悠然と歩く、微笑みを浮かべる2人の少女に対しての恐怖。
2人の前に構えていた兵士達が怯える様に後退り、彼女達の前に自然と道が出来上がる。
そして、異変は起こった……
「なっ!?」
リーガルが唖然と言葉を漏らす。
軍勢の最奥にいるリーガルや副官達、第一軍団の上層部の中で最もステータスが高く、更にはスキルによって視力が強化された彼の視界は確かに捉えた。
リーナとミーナ、2人の少女が通り過ぎた後に兵士達がドミノ倒しの様に倒れ伏す光景を。
それも、ただ倒れ伏すだけでなく……
「ふふふ、ご馳走様でした」
「ミーナ、はしたないですよ」
リーガル達の僅か十数メートル前方で足を止め、ペロリと舌で唇をなぞったミーナを、リーナが軽く窘める。
未だあどけなさすら残る双子の姉妹。
無邪気な妹を注意する優しい姉、そんな穏やかな田舎で見られそうな微笑ましい光景。
「ヒィッ!」
しかし、その微笑ましいハズの光景は彼等にとって悍しい光景に他ならない。
引き攣った悲鳴をあげながら尻餅を着いた男に誰も見向きもせずに、目の前に佇む2人の少女を唖然と凝視する。
「あとは、貴方達だけですね」
ニッコリと微笑みを浮かべる2人の少女。
しかし、その小さな身体から立ち昇る存在感は圧倒的であり。
リーガルですら僅かに手足が震え、その凄まじい威圧に耐え切れずに残っていた副官達が気を失い崩れ落ちる。
「ははっ、この化け物がっ!!」
僅か十数メートルの近距離から渾身の魔法を放つ。
先程放った火球とは比べ物にならない熱量を込めた炎の槍は、またしても双子に辿り着く前に白銀の何か……フェンリルの尻尾によって掻き消される。
「化け物だなんて心外ですね」
ミーナがムッと顔をしかめ……リーガルの右腕が握っていた大剣と共に斬り飛ばされた。
リーガルは宙を舞う自分の右腕を唖然と見つめ、自身の右腕を切断したソレを見て目を見開く。
「血……まさか、吸血鬼……」
リーガルの右腕を切断したのは血の刃。
形を変えてふわふわと2人の周りに浮かぶ血液を見ながら、ポツリと呟く。
「その通り。
私達は公爵位の吸血鬼です」
「何、だと……?」
何でもない様に明かされた2人の正体に唖然と呟き……地面に膝を着いた。
「腕を切断した際に、貴方の血管の中に血液を逆流させました」
「でも安心して下さい。
貴方達、上層部は今は殺しませんから」
薄れ行く意識の中。
変わらずニッコリと微笑みを浮かべる2人と、彼女達の後ろ。
ミイラの様に干からびて死んでいる地面を埋め尽くす兵士達の姿を最後にリーガルの意識は闇に呑まれた。
魔物の頂点の一角とも言える龍種ともなれば、人間を遥かに凌駕する知能を有し、人よりも多くの知識を有する。
獣の王と称されるベヒーモスも当然その例に漏れず。
災禍級、危険度特A級に数えられる高位の魔物であり、人に劣らない高い知性を有している。
では、それだけの知性を持つ存在が、武装した5万もの集団に奇襲を仕掛けるだろうか?
その集団の背後には鎧も身に着けていない、油断した獲物がぶら下がっていると言うのに……
「バカ、な……」
果たしてそれは目の前に広がる惨劇に対してか、ベヒーモスの数に対してか。
リーガルの隣に立つ副官の1人が唖然と呟く。
リーガル達の眼前、魔教団第一軍団の半数を占める約5万人もの兵士達はまさしく蹂躙されていた。
天幕は原型を留めておらず、周囲には叫喚と血の匂いが充満する。
ある者は四肢を引き千切られ、地面を這いずりながらも逃げ惑う。
魔教団の精鋭である5万もの軍勢をもってすれば、ベヒーモスを複数体相手にする事さえ可能となる。
しかし、それはあくまでも魔教団が開発した最新鋭の装備を整え、隊列を組み迎え撃った場合。
第30階層と言う表層に於いて、出現するはずの無いベヒーモス。
偶然この階層にて出現したのか、獲物を求めて群れからはぐれたたのか。
どちらにしても、突発的に出現したはぐれ個体。
リーガル達、第一軍団上層部の判断は決して間違っていなかった。
後に控える迷宮攻略を考えれば、後続との連絡が途絶えた状況下で戦力の温存は正しい判断と言えた。
拠点ごと強制転移などと言う、非常識な事を考慮していなかっただけで……
「チィッ!」
舌打ちと共に、リーガルが立っていた付近の地面が爆ぜる。
静止状態からの急加速。
一瞬の内に、這いずる兵士に襲い掛かろうとしていたベヒーモスに切迫し、身の丈程もある大剣を片手で軽々と振るう。
ベヒーモスの攻撃を弾き、返す刃で鮮血が宙を舞う。
「チィッ、浅かったか」
胴体から血を流すベヒーモスは、低く唸りながらリーガルを警戒した様子で睨み付け……
ウォーーーーーンッ!!
咆哮が響いた。
ベヒーモスのそれとは違ったそれにより、兵士達を蹂躙していたベヒーモス達が示し合わせたかの様に踵を返して走り去る。
今まさに、ベヒーモスに食われようとしていた者は、そんなベヒーモスを唖然と見送り……大きな騒めきが巻き起こった。
「次から次へとっ!!」
リーガルは悪態を吐きながら、騒めきが起きた方向を睨みつける。
蹂躙された場所の反対側、武装した5万の兵士達の奥。
そしてリーガルの強化された視力が捉えたソレに目を見開く。
悠然と歩みを進める2人の少女と、そんな2人に付き従う3体の気高き大狼。
誰もがその存在に呑まれて身を固める。
自然と覚える根源的な恐怖に手足が震え、構える武器がカタカタと不愉快な音を鳴らす。
その恐怖は果たして、あのベヒーモスをも超える存在感を放つ大狼に対してか……否。
これは大狼を引き連れて悠然と歩く、微笑みを浮かべる2人の少女に対しての恐怖。
2人の前に構えていた兵士達が怯える様に後退り、彼女達の前に自然と道が出来上がる。
そして、異変は起こった……
「なっ!?」
リーガルが唖然と言葉を漏らす。
軍勢の最奥にいるリーガルや副官達、第一軍団の上層部の中で最もステータスが高く、更にはスキルによって視力が強化された彼の視界は確かに捉えた。
リーナとミーナ、2人の少女が通り過ぎた後に兵士達がドミノ倒しの様に倒れ伏す光景を。
それも、ただ倒れ伏すだけでなく……
「ふふふ、ご馳走様でした」
「ミーナ、はしたないですよ」
リーガル達の僅か十数メートル前方で足を止め、ペロリと舌で唇をなぞったミーナを、リーナが軽く窘める。
未だあどけなさすら残る双子の姉妹。
無邪気な妹を注意する優しい姉、そんな穏やかな田舎で見られそうな微笑ましい光景。
「ヒィッ!」
しかし、その微笑ましいハズの光景は彼等にとって悍しい光景に他ならない。
引き攣った悲鳴をあげながら尻餅を着いた男に誰も見向きもせずに、目の前に佇む2人の少女を唖然と凝視する。
「あとは、貴方達だけですね」
ニッコリと微笑みを浮かべる2人の少女。
しかし、その小さな身体から立ち昇る存在感は圧倒的であり。
リーガルですら僅かに手足が震え、その凄まじい威圧に耐え切れずに残っていた副官達が気を失い崩れ落ちる。
「ははっ、この化け物がっ!!」
僅か十数メートルの近距離から渾身の魔法を放つ。
先程放った火球とは比べ物にならない熱量を込めた炎の槍は、またしても双子に辿り着く前に白銀の何か……フェンリルの尻尾によって掻き消される。
「化け物だなんて心外ですね」
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リーガルは宙を舞う自分の右腕を唖然と見つめ、自身の右腕を切断したソレを見て目を見開く。
「血……まさか、吸血鬼……」
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「その通り。
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「腕を切断した際に、貴方の血管の中に血液を逆流させました」
「でも安心して下さい。
貴方達、上層部は今は殺しませんから」
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