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第10章 アレサレム戦争編
148話 十剣 VS 勇者 〝激突〟
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「おっと、俺っちより先に名乗んないでよ!
ユリウスっちの後じゃあ俺っち達の印象が薄くなっちゃうでしょ!!」
「論点はそこでは無いでしょう?
別に敵に覚えられる必要はありません。
ご紹介が遅れました、私は十剣が七ノ剣、陛下から凍刃の称号を授かっておりますイヴと申します」
「ちょっ! イヴっちまで何で先に言っちゃうの!?」
「じゃあ次は私ね!
私はフィール、帝国十剣が八ノ剣・疾風だよ! よろしくね!!」
「フィールっち!?」
「帝国十剣が三ノ剣・破砕のノッガーです。
以後、お見知り置きを」
「えぇ……もう良いよ。
俺っちは六ノ剣・却炎のネロ、よろしく」
ガックリと項垂れるネロだが、大袈裟に戯けるのはいつもの事なので、十剣の4人は誰も反応しない。
誰かのツッコミを待っていたネロは、その状況にプルプルと震えだし、そして叫ぼうとして……
「一ノ剣……つまりは貴方が帝国、しいては世界で最強の人物って事でいいのかな?」
稲垣の言葉によって阻止された。
「いやいや、私なんてまだまだです。
大賢者グラウス様にも及びませんしね。
私如きが世界最強なんて烏滸がましいにも程があると言うもの」
そう言いつつも、つい最近までは世界最強とまではいかなくとも、世界でトップクラスの実力者だと自負していた。
そんな自惚れた認識をいとも容易く吹き飛ばした存在達を思い出し、ユリウスの顔には自然と苦笑いが浮かぶ。
「謙遜ですか?
帝国が誇る最高戦力である十剣。
その頂点に立つ貴方は、誰もが認める世界最強ですよ?」
「過大な評価、ありがとう。
それで、君達はそんな私に加え、十剣を4人も相手に本当に逃げ切れるとでも?」
挑発するかの様な傲慢な態度。
ユリウスの後ろでネロが爆笑している事からも、これがユリウスの演技であり挑発に過ぎないとわかるのだが……
開戦早々にたった2人で1万もの軍勢を屠った十剣が5人。
その事実だけで恐怖に震える王国軍はユリウスの言葉を受けて、声すら出せずに青褪める。
「それは、やってみなければ分からないかな。
でも、俺たちもそう簡単に負けるつもりはないし、負けるはずが無いと思っていますよ?」
「それは楽しみだね。
いいですよ、王国兵達は見逃してあげましょう。
その方が、私達もそちらも周囲への被害を考慮せずに全力で戦えるからね」
「余裕ですね。
本当にそんな事をして良いんですか?」
「ええ、勿論。
ネルウァクス帝国十剣の誇りに懸けて、撤退する王国兵にこの場での攻撃は加えないと約束しましょう。
今念話であの方にお願いして、防御結界と回復の祝福を解除を……」
「あの方?」
稲垣のその言葉に、まるでやってしまったと言わんばかりにハッとした表情になるユリウス。
しかし、十剣の頂点という立場にあるこの男がそんなミスをするだろうか?
ユリウスの立ち振る舞いから、彼の底知れぬ実力を感じ取っていた勇者達は、否と判断を下す。
即ち、自分達に伝えるためにわざと言ったのだと。
「しまったな、機密情報だったのに。
しかし、これから死ぬ君達になら知られても問題無いでしょう。
あの方とは……いえ、あの方々は、我らネルウァクス帝国を含めた対魔教団同盟の盟主です」
何気ない感じで伝えられた情報。
それは勇者達にとって……いや、世界中の各国上層部にとって驚愕に値する情報だった。
同盟の盟主がネルウァクス帝国ではない。
それはつまり、世界最強の軍事力を誇る帝国が下についたと言う事に他ならない。
「それはどう言う……」
「ここから先は、私達に勝てたら教えて差し上げましょう。
先程は言いそびれましたが、我が帝国軍にかけられていた加護は我々にはありません。
戦いはフェアで無ければなりませんからね」
「この人数差でフェア?
俺たちは17人で、そちらは5人なのに?」
「ええ、何か問題がありますか?」
至って真面目な顔でそう言い放つユリウスに、勇者達全員の表情が軽く引きつる。
「あはははっ! 分かりました。
でも、一ノ剣ユリウス。
あんただけは俺が一騎打ちで打ち負かす、余り俺達を舐めるなよ?」
その瞬間、解き放たれる凄まじい重圧と噴き上がる魔力。
17人の勇者達は全員が敵意を目に宿して十剣の5人を睨みつける。
そんな稲垣の姿を砦まで引いた王国兵達が目にして歓声が沸き起こる。
遠目に映る勇者達の姿は、開戦と同時にその力を見せつけた十剣の2人に全く劣ってはいなかった。
「ひゅぅ~、やるねぇ!」
「ネロ、煩いです」
「酷くないっ!? 流石の俺っちもそろそろ泣くよ??」
しかし、そんな状況にあっても十剣の余裕は崩れない。
イヴは態とらしく泣き真似をするネロを無視して勇者達の姿を見据える。
「ユリウス殿と彼が一騎打ち。
つまりは4対1ですか」
「俺っちとしては、16人を相手にしても良いんだけどね!」
「そんな事して、もし仮に死んじゃったら。
あのお方が悲しむよ?
あのお方悲しまれるなんて事になれば、他の方々からお怒りを買うと思うけど?」
フィールのその言葉に飄々とした笑みを浮かべていたネロが硬直する。
そして……
「今日は俺っちも真剣にやろうと思うんだ」
薄く笑みは浮かべているものの、その瞳は何処までも真剣な色を湛えていた。
そして双方、各々が自身の敵を認識し……
ギギィッン!!
唐突に鳴り響く金属音。
一瞬のうちに切迫した稲垣の一撃を、ユリウスが当然の如く受け止める。
稲垣が動くと同時に、他の者達も動き出しており、既にユリウスと稲垣の周りには誰もいない。
ほんの10分前まで帝国軍1万、王国軍4万が対峙していた広大な荒野にて。
この戦場での趨勢を決する、たった5つの戦いが始まった。
ユリウスっちの後じゃあ俺っち達の印象が薄くなっちゃうでしょ!!」
「論点はそこでは無いでしょう?
別に敵に覚えられる必要はありません。
ご紹介が遅れました、私は十剣が七ノ剣、陛下から凍刃の称号を授かっておりますイヴと申します」
「ちょっ! イヴっちまで何で先に言っちゃうの!?」
「じゃあ次は私ね!
私はフィール、帝国十剣が八ノ剣・疾風だよ! よろしくね!!」
「フィールっち!?」
「帝国十剣が三ノ剣・破砕のノッガーです。
以後、お見知り置きを」
「えぇ……もう良いよ。
俺っちは六ノ剣・却炎のネロ、よろしく」
ガックリと項垂れるネロだが、大袈裟に戯けるのはいつもの事なので、十剣の4人は誰も反応しない。
誰かのツッコミを待っていたネロは、その状況にプルプルと震えだし、そして叫ぼうとして……
「一ノ剣……つまりは貴方が帝国、しいては世界で最強の人物って事でいいのかな?」
稲垣の言葉によって阻止された。
「いやいや、私なんてまだまだです。
大賢者グラウス様にも及びませんしね。
私如きが世界最強なんて烏滸がましいにも程があると言うもの」
そう言いつつも、つい最近までは世界最強とまではいかなくとも、世界でトップクラスの実力者だと自負していた。
そんな自惚れた認識をいとも容易く吹き飛ばした存在達を思い出し、ユリウスの顔には自然と苦笑いが浮かぶ。
「謙遜ですか?
帝国が誇る最高戦力である十剣。
その頂点に立つ貴方は、誰もが認める世界最強ですよ?」
「過大な評価、ありがとう。
それで、君達はそんな私に加え、十剣を4人も相手に本当に逃げ切れるとでも?」
挑発するかの様な傲慢な態度。
ユリウスの後ろでネロが爆笑している事からも、これがユリウスの演技であり挑発に過ぎないとわかるのだが……
開戦早々にたった2人で1万もの軍勢を屠った十剣が5人。
その事実だけで恐怖に震える王国軍はユリウスの言葉を受けて、声すら出せずに青褪める。
「それは、やってみなければ分からないかな。
でも、俺たちもそう簡単に負けるつもりはないし、負けるはずが無いと思っていますよ?」
「それは楽しみだね。
いいですよ、王国兵達は見逃してあげましょう。
その方が、私達もそちらも周囲への被害を考慮せずに全力で戦えるからね」
「余裕ですね。
本当にそんな事をして良いんですか?」
「ええ、勿論。
ネルウァクス帝国十剣の誇りに懸けて、撤退する王国兵にこの場での攻撃は加えないと約束しましょう。
今念話であの方にお願いして、防御結界と回復の祝福を解除を……」
「あの方?」
稲垣のその言葉に、まるでやってしまったと言わんばかりにハッとした表情になるユリウス。
しかし、十剣の頂点という立場にあるこの男がそんなミスをするだろうか?
ユリウスの立ち振る舞いから、彼の底知れぬ実力を感じ取っていた勇者達は、否と判断を下す。
即ち、自分達に伝えるためにわざと言ったのだと。
「しまったな、機密情報だったのに。
しかし、これから死ぬ君達になら知られても問題無いでしょう。
あの方とは……いえ、あの方々は、我らネルウァクス帝国を含めた対魔教団同盟の盟主です」
何気ない感じで伝えられた情報。
それは勇者達にとって……いや、世界中の各国上層部にとって驚愕に値する情報だった。
同盟の盟主がネルウァクス帝国ではない。
それはつまり、世界最強の軍事力を誇る帝国が下についたと言う事に他ならない。
「それはどう言う……」
「ここから先は、私達に勝てたら教えて差し上げましょう。
先程は言いそびれましたが、我が帝国軍にかけられていた加護は我々にはありません。
戦いはフェアで無ければなりませんからね」
「この人数差でフェア?
俺たちは17人で、そちらは5人なのに?」
「ええ、何か問題がありますか?」
至って真面目な顔でそう言い放つユリウスに、勇者達全員の表情が軽く引きつる。
「あはははっ! 分かりました。
でも、一ノ剣ユリウス。
あんただけは俺が一騎打ちで打ち負かす、余り俺達を舐めるなよ?」
その瞬間、解き放たれる凄まじい重圧と噴き上がる魔力。
17人の勇者達は全員が敵意を目に宿して十剣の5人を睨みつける。
そんな稲垣の姿を砦まで引いた王国兵達が目にして歓声が沸き起こる。
遠目に映る勇者達の姿は、開戦と同時にその力を見せつけた十剣の2人に全く劣ってはいなかった。
「ひゅぅ~、やるねぇ!」
「ネロ、煩いです」
「酷くないっ!? 流石の俺っちもそろそろ泣くよ??」
しかし、そんな状況にあっても十剣の余裕は崩れない。
イヴは態とらしく泣き真似をするネロを無視して勇者達の姿を見据える。
「ユリウス殿と彼が一騎打ち。
つまりは4対1ですか」
「俺っちとしては、16人を相手にしても良いんだけどね!」
「そんな事して、もし仮に死んじゃったら。
あのお方が悲しむよ?
あのお方悲しまれるなんて事になれば、他の方々からお怒りを買うと思うけど?」
フィールのその言葉に飄々とした笑みを浮かべていたネロが硬直する。
そして……
「今日は俺っちも真剣にやろうと思うんだ」
薄く笑みは浮かべているものの、その瞳は何処までも真剣な色を湛えていた。
そして双方、各々が自身の敵を認識し……
ギギィッン!!
唐突に鳴り響く金属音。
一瞬のうちに切迫した稲垣の一撃を、ユリウスが当然の如く受け止める。
稲垣が動くと同時に、他の者達も動き出しており、既にユリウスと稲垣の周りには誰もいない。
ほんの10分前まで帝国軍1万、王国軍4万が対峙していた広大な荒野にて。
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