最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

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第10章 アレサレム戦争編

143話 反撃の時間です!

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「これは、どう言う事だ……?」

 見晴らしのいい草原に、唖然と呟く稲垣の声が響く。
 布陣を終えた数万の軍団を背後に従え、アレサレム軍を率いる将として口上を述べた。

 魔道具を用いて声を拡大して述べられた口上は、帝国の砦にも聞こえていたはず。
 それなのに、一向に反応がないのだ。
 まるで誰もそこには居ないかのように……

「翔、双葉さん」

 稲垣に名前を呼ばれた2人は頷きを返すと即座に自身の能力を発動する。
 結城 翔は視界に捉えた全てを見通す事ができる〝千里眼〟。
 双子の姉である双葉 結衣は指定空間を掌握する〝空間掌握〟。

「見た限りだと、本当に無人みたいだ」

「こちらも同じです」

 勇者達が持つ異能と呼ばれるこの能力はそのどれもがユニークスキルに匹敵し、時には上回る強力な力。
 勇者の異能を欺くには同等のユニークスキルを使うしか方法は無く。

 ほぼ間違いなく、それは要塞に帝国兵が一人もいないと言う信じ難い事実を意味する。
 だと言うのに勇者達の、その瞳に油断の色は一欠片もない。

「帝国最強の十剣がいる可能性は捨てきれない、皆んな気を抜かないように。
 とは言え……」

 いかに帝国最強の十剣であろうとも、数万もの軍勢を完全に隠蔽する事はまず不可能。
 つまり、もし仮に伏兵がいたとしても、それは十剣と少数の精鋭のみ。
 国防の要である十剣を多数投入する事は考え難い事から考えて。

「十剣は多くても2、3人ってところかな?」

「だろうな、対する俺たちは17人。
 恐らく俺たちと十剣の実力は互角、安全を期して数名でかかれば余裕で勝てるぜ」

 そう言ってニヤリと笑みを浮かべるてみせる日高 裕也。

「だとしてもだよ。
 俺たちはもう誰も欠ける訳にはいかない、決して油断しないように」

 苦虫を噛んだような顔の稲垣の言葉に、勇者達の脳裏に、この世界に来たその日に追放されたクラスメイトの顔が浮かぶ。

「取り敢えず、遠距離からの攻撃で様子を見よう」



 その後、勇者達による遠距離攻撃が要塞に加えられるも、砦からの反撃は無く。
 アレサレム王国は激戦になると言う事前の予想に反して無人と化していた国境の砦を占領する事に成功した。

 そして勇者達は勿論、アレサレム王国軍の全員が唖然と言葉を失う事になる。
 手に入れた砦から覗く光景……数万の兵が詰める城のような堅牢な要塞を見て。




 *




「ぷっ、あはっはっ!」

 ダメです、我慢できませんでした。
 まさかこんな不意打ちをくらうとは……

「お嬢様、笑われては可愛そうです」

「だって、誰もいない砦に向かって……。
 それにメルヴィーだって笑ってるじゃないですか!」

「そんな事ありません」

 まぁ別にいいですけど。
 でも、無人の砦に向かって剣まで掲げて『私は勇者稲垣であるっ!!』って絶対笑っちゃいます。
 その後も何だかんだと言っていましたが、最初の衝撃が強過ぎて何も入って来ません。

 同じく特別会議室にいるイヴァル王とウェスル帝が呆れたような視線を向けて来ますけど、これは僕は悪くない。
 この世界では普通でも、日本人としての観点からすれば、突然あんな事を叫ぶとかイタすぎです!!

「しかし、本当に我々もここに入って良かったのですか?」

 後で録画されているさっきの映像を見ようと考えていると、唐突にイヴァル王がそんな事を言い出しました。

「う~ん、別にいいんじゃないですか?
 今回はナイトメアだけで無く、対魔教団同盟の戦いですし、僕は2人を信頼していますから」

「……そうですか」

「ルーミエル様……」

「まぁ、もし仮に裏切られても、その時はアフィール教国とサンリオン魔導国みたいに大神にお任せするか。
 面倒ですけど、お城ごと消し飛ばせばいいだけですしね」

「「……」」

 あれ?  
 何故か2人が突然、死んだ魚みたいな目になってしまいました。

「お嬢、アレサレムの奴らが砦に入ったみたいだぞ」

「えっ?  あっ、本当だ」

 リュグズールに言われて正面の監視映像を見ると、先程までの遠距離攻撃が終わり。
 アレサレムの兵士たちが続々と帝国の砦に入って行っています。

「これで成功ですね」

「はい。
 これにより、王国によって侵攻されたと言う大義名分が作れました」

 そう言って薄く微笑みを浮かべるコレール。
 悪い顔ですね、まぁ嫌いじゃありません。

「では当初の予定通り、ウェスル帝は対魔教団同盟の声明でアレサレム王国に宣戦布告をお願いします。
 イヴァル王、あれの準備は?」

「ナイトメアの協力のお陰で滞り無く」

「結構!
 さぁ、反撃の時間です!!」
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