最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

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第6章 フェーニル王国編

93話 ようこそ!

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 本部に客人を招くのは初めてですし、普通に転移しては面白みに欠けます。
 ここは1つ、フェーニル王国を傘下に加える者としての威厳を見せつけねばなりませんね!!

「はい、ルーミエルお嬢様はここで見ていましょうね」
  
 どんな転移門を出現させようかと考えながら魔力を練り上げていると、いきなりアヴァリスが僕を抱えたまま立ち上がりました。

 そして何故かコレールに視線を送り、コレールもそれを心得ていたかの様に神妙な感じで頷きました。
 目の前で繰り広げられるアイコンタクト。

 なんかちょっと、二人の僕とはレベルの違うコミュ力を見せつけられた気がします……
 超高次元のやりとりに唖然としていると、不意にコレールが指を打ち鳴らす。

「これ程とは……」

 唖然と目を見開くイヴァル王と宰相さんの後ろで、アレックさんが苦笑いを浮かべ呟きを漏らす。

 現れたのは天井に届きそうな程巨大で、重厚感漂う豪奢な装飾が施された漆黒の扉。
 そこにあるだけで見る者を威圧する、魔王城の玉座に通じる扉と言われた方がしっくりきます。

 可笑しいですね。
 コレールはその昔、魔王と戦った側だと言うのに……

「せっかく僕がビックリさせようと思ったのに……」

 コレールの出した転移門なんて温いです!
 僕であれば、全高数十メートルにも及ぶ白銀に光り輝く扉を出ましたよ?

 しかも、イヴァル王達のこの様子。
 コレールが出した転移門でこれなら、僕が出していればどれ程驚かせる事が出来た事か……残念でなりません。

「お嬢様、そうお気を落とさずに。
 コレール様はお嬢様にご負担をかけまい、としたのですよ?」

 アヴァリスの腕の中でジッとしていたらメルヴィーがそう言って優しく微笑みかけてきました。
 もしかすれば、不満顔が表に出てしまっていたのかもしれませんね。

「むぅ、わかりました。
 ですがコレール、帰りは僕に任せて下さいね!」

 そう言うと、コレールは苦笑いを浮かべながらも頷いてくれました。
 ふっふっふ!  イヴァル王達の驚愕に慄く姿が目に浮かぶようです!!

「では、皆様こちらへ」

 コレールが軽く手を翳すと示し合わせたかのように、漆黒の転移門が押し開かれる。
 そこにあるのは全くの闇。
 これに入るのは、ちょっと抵抗感がありますね。

 いつもは転移門なんて回りくどい事はせずに直接転移していますが。
 特に意識しなければ転移門はその人物の魔力の質によるのかもしれません。
 黒龍であるコレールの魔力の質は色で言うと黒ですからね。

「おぉーこれは壮観ですね」

 転移門を潜った瞬間、真っ暗だった視界は一気に開け、上空にはまるで本物のような空が広がる。
 そして目の前には……

「「「お帰りなさいませ」」」

 本部であり僕の家でもあるお屋敷に続く一本道に、左右に分かれて整列するメイド服に身を包んだ女性達と執事の列。
 一人一人が一騎当千の実力を誇る彼らが一糸乱れぬ動きで揃って頭を下げるこの光景はその一言に尽きるでしょう。

 でも、こうも皆んなして出迎えられると逆にちょっと申し訳なくていたたまれない気持ちになります。
 向こうの世界にいた時もメイド達は居ましたが……
 あの家では、基本僕はいない者とされていたので、こう言うのは全く慣れていません。

 他の皆はどうかなと、後ろを見れば……
 平然と立つコレール。
 苦笑いしているリュグズール。
 そんなリュグズールに手を繋がれて眠たそうなフェル。
 いつもの様に穏和は微笑み浮かべているアヴァリス。
 ちょっと感心した様子のノアとシア。
 何故か死んだ魚のような目をしているフェーニル御一行。
 そして……腕を組んで満足気に頷くオルグイユとメルヴィー。

 言うまでもなく、これが誰の指示だったのかは明らかです。
 皆んなの仕事の邪魔をしてまでこれを命じているのであれば職権乱用で怒れるのですが。

 何故か皆んな嬉々としてやっている節があります。
 その証拠に、少し浮き足立った様子でやり切った顔で嬉しそうに笑顔を浮かべていますからね。

「皆さん、お出迎え有難うございます」

 そう言えばナイトメア創設後、外出したのは今回が初めてでしたけど。
 もしかして、これって毎回するつもりなのでしょうか?

「では、皆各々仕事に戻るように、解散!」

 想像してしまった未来に一人ゾッとしていると、手早くコレールが指示を飛ばしました。
 すると、整列していた全員が一瞬にして消え去りました。
 ここまで来ると曲芸の域ですね。

「あはは……凄いですね今の。
 それでルーミエル嬢、ここは一体どこなのですか?」

 これからも繰り返されるんだろうな、と思いながらも現実逃避気味にそんな事を考えていると、笑顔を貼り付けたイヴァル王がそう聞いてきました。

 しかし!  僕には分かります。
 余裕のある笑みを浮かべてはいますが、内心では驚愕している事を!!
 地球で鍛えられた僕の観察眼は騙せません!

「すみません。
 今のは僕としても予想外だったので……それはともあれ。
 ようこそ!  僕たちナイトメア総本部へ」

 き、キマッタァ!!
 背後に聳えるようにある超巨大なお屋敷をバックグラウンドに、ニヤリと笑みを浮かべては言い放ちました!
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