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第6章 フェーニル王国編
82話 僕、必要ありますか?
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海に面した水産資源に恵まれた豊かな土地と、幾つかの大国を繋ぐ中間にある立地。
更には、他大陸からの玄関口として大きな賑やいを見せる海洋貿易国家フェーニル。
自然と各国の文化や技術が集まり。
小国ながらも大国に引けを取らない国力を誇るフェーニルは、商人の聖地。
名のある商人達は、こぞってこの国に支部を置き、この国は様々な品で溢れ返る。
フェーニル国民の目は、初めてこの国を訪れる商人達を驚かせる程に高い。
そんなフェーニルに住まう人々が、思わず足を止めてソレを凝視する。
大通りを行くその馬車のような箱。
馬も無く動くその箱に、フェーニルの人々の目は奪われた。
それは魔法が存在せず、科学が発展した世界の乗り物。
自動車と呼ばれるその乗り物は、黒い車体に重厚感のあるフォルムを見せつける。
嫌な現実から逃避して、唖然と見つめて来る人々に対して優越感に浸っています。
現実逃避でもしないと、やってられません!
だって今、僕は……僕達は王様との商談のために王城に向かっている真っ最中なのですから。
王城……自己中な貴族どもの巣窟。
うん、普通に行きたく無い。
これは何か悪い夢だ、忘れましょう……
それよりも今は、この車を自慢したい!
ふっふっふ! どうだ驚いたかっ、異世界の人々よっ!!
そう声を大にして叫びたい。
「ルーミエル様、ご機嫌ですね」
隣に座っているオルグイユが当たり前の事を言ってきます。
だって、僕達が今乗っているのは正しく傑作と呼べる努力の結晶!!
地球の技術であるこの自動車を、この世界の魔法技術と組み合わせて作り上げた傑作ですよ!?
ガソリンなどの燃料の代わりに魔力を使って推進力を。
思念伝達などのスキルを利用して、考えだけで動く様に仕上げ!
更には、気分によっては手動でのハンドル操作も可能!!
オリハルコンとアダマンタイト、僕の膨大な魔力を多分に含んだ血を混ぜた合金。
ドラゴンの攻撃でさえも完全に防ぎきるこの合金を二重構造にして作り上げたこの車体!
しかもっ! 各種属性結界、物理多重結界の魔法陣が刻まれていて、その守りは鉄壁の一言!
「自慢の傑作です!」
胸を張って言い切れる程には自信があります!!
「ん、エル凄い。
でも、現実から目をそらすの、よくない」
ニヤニヤを隠せないでいる僕を、フェルのその一言が一気に現実に引き戻す。
「ぐっ……コレール、もう少しゆっくり進みましょう?」
しかし諦めずに、運転席にいるコレールに向かって提案します。
そう! この素晴らしい車をフェーニルの人々に自慢するためにっ!!
「もう遅い、見えてきた」
コレールの言葉を待つ事無く言い放たれたフェルのその言葉は、僕にとっての死刑宣告に近しいものでした。
「お嬢様、そう気を落とさないで下さい」
力尽きた様に、シートに座り沈んだ僕に、オルグイユとは反対側の隣に座っていたメルヴィーが励ます様に微笑みかけてきます。
「うぅ、だって……僕いても居なくても良いじゃないですか」
「かと言ってお嬢様をお一人、ホテルに残しては行けません。
お嬢様は我々の事を信頼出来ませんか?」
悲しそうに目を伏せるメルヴィー。
そんな顔をされては何も言えません、今朝もその表情に負けてしまいましたし……
「そんな事無いです。
皆んなの事は信じてます、けど……王様との商談に絶対、僕は必要ありません!」
嘆く僕をよそに、僕達を乗せた車はフェーニル王城の門を潜ってしまった。
更には、他大陸からの玄関口として大きな賑やいを見せる海洋貿易国家フェーニル。
自然と各国の文化や技術が集まり。
小国ながらも大国に引けを取らない国力を誇るフェーニルは、商人の聖地。
名のある商人達は、こぞってこの国に支部を置き、この国は様々な品で溢れ返る。
フェーニル国民の目は、初めてこの国を訪れる商人達を驚かせる程に高い。
そんなフェーニルに住まう人々が、思わず足を止めてソレを凝視する。
大通りを行くその馬車のような箱。
馬も無く動くその箱に、フェーニルの人々の目は奪われた。
それは魔法が存在せず、科学が発展した世界の乗り物。
自動車と呼ばれるその乗り物は、黒い車体に重厚感のあるフォルムを見せつける。
嫌な現実から逃避して、唖然と見つめて来る人々に対して優越感に浸っています。
現実逃避でもしないと、やってられません!
だって今、僕は……僕達は王様との商談のために王城に向かっている真っ最中なのですから。
王城……自己中な貴族どもの巣窟。
うん、普通に行きたく無い。
これは何か悪い夢だ、忘れましょう……
それよりも今は、この車を自慢したい!
ふっふっふ! どうだ驚いたかっ、異世界の人々よっ!!
そう声を大にして叫びたい。
「ルーミエル様、ご機嫌ですね」
隣に座っているオルグイユが当たり前の事を言ってきます。
だって、僕達が今乗っているのは正しく傑作と呼べる努力の結晶!!
地球の技術であるこの自動車を、この世界の魔法技術と組み合わせて作り上げた傑作ですよ!?
ガソリンなどの燃料の代わりに魔力を使って推進力を。
思念伝達などのスキルを利用して、考えだけで動く様に仕上げ!
更には、気分によっては手動でのハンドル操作も可能!!
オリハルコンとアダマンタイト、僕の膨大な魔力を多分に含んだ血を混ぜた合金。
ドラゴンの攻撃でさえも完全に防ぎきるこの合金を二重構造にして作り上げたこの車体!
しかもっ! 各種属性結界、物理多重結界の魔法陣が刻まれていて、その守りは鉄壁の一言!
「自慢の傑作です!」
胸を張って言い切れる程には自信があります!!
「ん、エル凄い。
でも、現実から目をそらすの、よくない」
ニヤニヤを隠せないでいる僕を、フェルのその一言が一気に現実に引き戻す。
「ぐっ……コレール、もう少しゆっくり進みましょう?」
しかし諦めずに、運転席にいるコレールに向かって提案します。
そう! この素晴らしい車をフェーニルの人々に自慢するためにっ!!
「もう遅い、見えてきた」
コレールの言葉を待つ事無く言い放たれたフェルのその言葉は、僕にとっての死刑宣告に近しいものでした。
「お嬢様、そう気を落とさないで下さい」
力尽きた様に、シートに座り沈んだ僕に、オルグイユとは反対側の隣に座っていたメルヴィーが励ます様に微笑みかけてきます。
「うぅ、だって……僕いても居なくても良いじゃないですか」
「かと言ってお嬢様をお一人、ホテルに残しては行けません。
お嬢様は我々の事を信頼出来ませんか?」
悲しそうに目を伏せるメルヴィー。
そんな顔をされては何も言えません、今朝もその表情に負けてしまいましたし……
「そんな事無いです。
皆んなの事は信じてます、けど……王様との商談に絶対、僕は必要ありません!」
嘆く僕をよそに、僕達を乗せた車はフェーニル王城の門を潜ってしまった。
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