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第4章 神聖の試練編

45話 非常に残念です…

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「扉、ですね」

「そのようですね」

 ……折角シリアスに呟いてみたのに、コレールの所為で台無しです。
 全く、コレールにはユーモアが足りませんね、ユーモアが。

 後でコレールにはユーモアの何たるかを教えてあげるとしましょう。
 さてさて、気を取り直して……

「では早速、行ってみるとしましょう!」

 おーっ!  と拳を突き上げたのに、誰ものってくれませんでした……
 恥ずかしくて俯きながら踏み出しましたが、先程のように止められる事はありませんでした。

 それにしてもこの扉、大きいですね……僕の身長を考慮しても凄まじく大きい。
 目測ですが……高さが15メートル、横幅が3メートル程度でしょうか?

 とは言え、勝手知ったる扉。
 いつもの様に手を伸ばそうとすると、スッとコレールが僕の前に躍り出て……

 ドゴォオオォン!!

 けたたましい轟音を立てながら、威厳たっぷりな白亜の扉が吹き飛びました。

「……」

 今の一瞬に一体何が起こったのか?
 それは至って簡単、コレールが白亜の扉に向かって回し蹴りを放ったのです。

 それだけで圧倒的な質量を感じさせる白亜の扉が、まるで紙切れの様に容易く吹き飛ました。

 空中に蹴り上げられた扉は、かなりの距離を飛翔た後……轟音と共に、地面を抉りながら落下しました。

「それでは参りましょう」

 コレールは何事も無かった様に僕に道を開けて、軽く腰を折りました。
 これって僕、お礼を行った方が良いのでしょうか?
 
 まぁ取り敢えず言える事は、コレールは怪力だった事だけですね。
 まぁ、あの程度であれば僕でも出来ますけど!!

 扉の奥には、深淵の試練とは違って青い空が広がり。
 頭上には太陽が眩しく輝き、穏やかな風が心地良い草原が広がっていました。

 どうやらここは小高い丘の上の様ですね。
 遠くの方に大きな湖と、その中央の小島の上に西洋風のお城が建っているのが見えます。

 う~ん、周囲に魔物の気配もありませんし、僕も追放されるならこっちの方が良かったですね……
 と言うか、こんな場所なら追放して欲しかったくらいです。

 それにしても、ダンジョンって本当にどう言う原理で成り立っているんでしょうか?
 ここは地下なのに空があって、太陽がある……謎ですね。

 深淵の試練のダンジョンマスターなので、ダンジョンマスターの権能がどう言った物なのかは分かります。

 しかし、ダンジョン自体がどの様に作られているのかと言う点については全く理解できません。

 まぁ、魔法でなら再現出来なくも無いでしょうけど……
 どれ程。膨大な魔力が必要になるのか想像もつきませんね。
 今の僕では到底出来ません。

 まぁ、魔法が関与している事は確かでしょうけど……今それを考えても仕方ありませんね。

「それにしても……素晴らしい場所ですね」

「ん、ここは、気持ち良さそう」

 フェルは流石ですね。
 皆まで言わずとも、僕の言わんとする事を正確に理解するとは……

「ふふふ、そうですね」

「仰る通りで御座います」

 む、オルグイユとコレールの小さな子供を見守る様な視線を向けて来ます。
 全く、この素晴らしさが理解出来ないとは嘆かわしい限りです!

 特にあの湖が良いです。
 穏やかで暖かい風が緩やかに吹く中、湖のほとりで睡魔に襲われるがままに昼寝に慎む……なんて素晴らしい事でしょうか!!

 それ故に、残念で仕方ありません。
 あの湖のほとりで、お昼寝は凄く気持ちいいでしょう……しかし!

 ここは紛れも無い、大神達が作り上げた八大迷宮の一角。
 お昼寝をする訳にもいかないのです。

 ……深淵の迷宮に戻ったら湖を増設する必要がありますね。
 それ以前に、もう一回層増やしてプライベートエリアを作る必要がありそうですけど。

「非常に残念ですが、今はこの迷宮の方が優先です……」

「ん」

 フェルの無気力な目も、心なしか悲しそうです……素直に頷きましたけど。
 安心して下さい。
 ここよりも素晴らしいお昼寝スポットを、作り上げて見せましょうっ!!

「では、行くとしましょう!」

 とは意気込んだものの、実際には転移魔法で一瞬なんですけどね。
 そして今回向かう先は勿論、湖の中央に佇むお城。

 いきなり、城門前に転移して来た訳ですが。
 本来この場に来るためには、草原から1つだけ伸びている石橋を渡る必要がある様です。

 まぁその行程を全て省略しちゃいましたけど……態々こんなに手の込んだ作りにしたダンジョンマスターに申し訳ありません。

 まぁ、過ぎてしまった事を一々考えても仕方ありませんし、先に進むとしましょう。
 それにしても、これは一体……

「どうやら、湖を境にかなり強力かつ高度な結界が張られていた様です」

 僕のそんな疑問に答える様に、コレールがそう呟きました。

「その様ですね。
 私達が見落とす程に見事な隠蔽がなされています」

「ん、コイツら、強い。
 吾達と、同格」

 オルグイユがお城を鋭く見据え、フェルもいつに無く真剣な表情です。

 結界自体は僕の転移が弾かれそうだったので無理やり破りましたが。
 お城の中から発せられるこの魔力。
 確かにコレール達3人に匹敵するレベルです。

「いきなり、これ程の強敵が出てくると言う事は、この迷宮はそこまで階層が多く無いのでしょうか?」

「おそらくはルーミエル様の仰る通りかと思われます。
 しかしこの魔力……もしかすると、この迷宮はこの階層のみかも知れませんね」

 意味深な微笑みを浮かべるオルグイユ。
 う~ん、オルグイユは何か知っている様ですね。

 教えてくれても良いのに、この様子では……まぁいいでしょう。
 どうせ先に進めば嫌でも分かります。

「あっ……」

 視界の先では、さっき見た光景が繰り返される。
 まぁ、つまりは……コレールがまた、お城の城門を吹き飛ばした訳です。

 その状況に苦笑いを浮かべつつ、城門の中に足を踏み込もうとした瞬間……

「おいおいおいっ!!
 扉やら門やら手当たり次第にぶっ壊しやがって、ふざけんなよっ!!
 頼むから普通に入って来てくれよぉ!」

 そんな悲痛な叫び声が、穏やかな湖畔のお城に響き渡りました。
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