最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

フウ

文字の大きさ
上 下
35 / 375
第3章 帝国ギルド編

35話 コレールの歓喜

しおりを挟む
 折角のテンプレを、コレールに奪われてしまいました……
 昨日は1人だけ抜け駆けしてAランクになるし、これは僕も少し怒っていいと思います。

 とりあえず、しばらくコレールとは口を利きません。
 それにそうですね、コレールには反省してもらう必要があるので……

 そうだ!  コレールがいつもやっている仕事を奪ってやるとしましょう!!
 コレールは家事をする事に、かなりこだわってますからね。

 その仕事を僕が奪ったら多少は反省してくれるでしょう。
 うん、それが良いですね、そうしましょう。

 コレールへの罰が決定したのですが……当の本人は何故か、テンプレを運んできてくれた、青年を凄い形相で睨みつけてますね。

 何故コレールがそこまで怒っているのかはわかりませんが……僕には関係ありませんからね。
 放っておくとしましょう。
 触らぬ神に祟り無しです、神獣だけに。

 とは言え……どうしたのでしょうか?
 活気溢れる場所であるはずのギルド内がシーンと静まり返ってますし。
 この居たたまれ無い空気は一体?

 本来であれば馬鹿騒ぎしている、隣接されている酒場にいる冒険者達。
 そんな彼らですら、何故か緊張した面持ちでチラチラとこちらを伺っていますし……

 何かあったのでしょうか?
 ふむ、まぁ別に気にする程の事ではありませんね。
 ふっ!  僕はこの2日で周囲からの視線には多少の耐性を得たのです!!

 とりあえず、受付で依頼を受注してみる事にしましょう。
 そうすれば、何故こんな状況なのか情報が得られるかもしれませんしね。

 そうと決まれば行動あるのみです。
 いつまでも、こうして入り口前を陣取っていても迷惑でしょうしね。

「あの、すみません」

「あ、はい。
 何でしょうか?」

 昨日の受付嬢さんとは別の方ですね……それに、かなり緊張している様です。
 本当に何か、緊急事態でもあったのでしょうか?

「えっと、ですね……」

「はい、どう致しましたか?」

 ま、マズイ事になりました。
 こんなところでも僕の邪魔をするのですか!  むぅ、人見知りめ……

 人見知りを発動して、おろおろする僕を見てニッコリ微笑みを浮かべる受付嬢さん……ま、マズイです。
 このままでは変な奴って認識されてしまいかねません!

「あ、あの、依頼を……受けたくて」

 まともに目を合わせれずに俯いて、声も尻すぼみ小さくなりましたが……何とか言い切りました!
 ふっふっふ!  やられっぱなしでは無いのですよ!!

「ハゥッ!」

 すると突然、受付嬢さんが変な声を出し身を捻りました。
 突然、奇声を出すから少しビックリしてしまいました。
 むぅ……これしきの事で、これではダメですね。

 どうしてでしょうか?
 以前ギルドマスターと話した時や、昨日の受付嬢さん達と話した時は普通に話せていたのに……

 そう言えば、地球でも会議や商談に出席する時だけは普通に話せていましたね……うん、謎です。

 しかし、少なくとも普通に話せる時があるという事は事実。
 努力していけば、この極度の人見知りも克服出来ると言う事でしょう。

 これは頑張って行くしかありません!
 ……それにしても、この受付嬢さん。
 変な声を出して、恍惚そうな表情でくねくね体を捩っていますけど……大丈夫なのでしょうか?

「あ、あの……」

「あっ!
 申し訳ありません、少し取り乱してしまいまして」

 アレは少しどころの話では無い気がするのですが……

「貴女が噂のルーミエルちゃんですね!」

「え?  は、はい…そうです」

「噂に違わぬ、いえ、それ以上だわ!
 ルーミエルちゃんは初めての依頼の受注ですね、少々お待ち下さいね」

 最初に何やらブツブツと呟いた後、柔らかい微笑みを浮かべた受付嬢さんは、奥に行ってしました。

 吸血鬼の始祖たる僕でも聞き取れないとは……冒険者ギルドの受付嬢さん、なかなかに侮れません。

 冒険者ギルドと言えば、依頼は依頼ボードやらに張り付けられるものです。
 勿論テンプレ通りこの世界の冒険者ギルドもその類に外れません。

 しかしっ!  最下級である銅等級。
 つまりはFランク冒険者は、受付嬢さんを通して依頼を受けないとダメってルールがあるのです。

 これ少しでも危険を減らして、経験を積ませると言うのが目的でしょう。
 確かに右も左もわからない新人としては、適切な依頼を斡旋してもらえると言うのは有難い話でしょう。

 しかし!  早くテンプレを体験したい僕は別です。
 何としても早くランクを上げなければなりません!

「お待たせしました。
 では、ルーミエルちゃんに薦める依頼は全部で3つです。
 その中からどれを受けるか選んで下さいね」

「わかりました!」

 初めての依頼、楽しみですね!
 一体どんな依頼でしょうか?
 やっぱり最初はゴブリンの掃討でしょうか?
 それとも、いきなりドラゴン退治なんて言うのも魅力的です!

「では1つ目ですが、
 Fランク依頼:ポーション作成に使用する魔草の採取。
 報酬、一株につき銀貨1枚。
 

 2つ目が、
 Fランク依頼:ペットの散歩。
 報酬、銀貨5枚。
 

 3つ目が、
 Fランク依頼:ベビーシッター。
 報酬、銀貨3枚。
 

 この3つになります、どれも安全な依頼ですので安心して受けて下さいね」

 こ、これは僕の期待を見事に打ち破って来ましたね……ハッキリ言って、そんな依頼は嫌です。
 とは言え、現状Fランクである僕が依頼を受ける為には受付嬢さんを通す必要が……

「お嬢様、私とパーティーを組めば宜しいかと」

 む、いつの間にかコレールが僕の後ろに待機していました。
 あの青年はどうなってしまったのでしょうか?

 それよりも、コレールとパーティーを組むと何故この八方塞がりの状況を打破出来るのか?
 聞きたいですが、今はコレールと口を利か無い期間に入ってますし。
 どうするべきでしょうか?

「確かに、他の冒険者の方とパーティーを組めば、その方が受けた依頼を一緒に受注する事が可能です。
 ですが、それは相手がFランク以上の冒険者であるときに限ります」

 ふむふむ、なるほど。
 つまりコレールとパーティーを組めば、コレールが受けた依頼を僕も一緒に受けられると言う事ですね。

「確かに先程、そちらの方はCランク冒険者であるラグナス君を軽くあしらっていらっしゃいました。
 しかし、幾ら実力があっても、これから登録為さるのなら初めは一部の例外を省きFランクからと言う事になります」

「それについては問題ありません。
 この通り、私はAランク冒険者に御座いますので」

「えっ!?」

 コレールが懐……と見せかけて異空間から取り出した冒険者カードを差し出した瞬間。
 受付嬢さんが目を見開いて硬直しました。
 受付嬢さんだけで無く、ギルド内にいた冒険者達が皆んな一様に驚愕の表情を浮かべています。

 ……確かにAランク冒険者ともなれば冒険者の中でも高位の存在でしょう。
 とは言え、それほど驚く事でしょうか?

「何か不備が御座いましたでしょうか?」

「い、いえ!  
 申し訳ありませんが、念のため偽装でないか確認を取らせて頂いてよろしいでしょうか?」

「ええ、構いません」

 コレールがニッコリと爽やかスマイルを浮かべて冒険者カードを手渡すと、受付嬢さんは、再び奥へと行ってしまいました。

 そして、暫くして戻って来た受付嬢さんの隣に立つエメルさん。
 うん、この展開は昨日と同じですね。

「あら、ルーミエルちゃん?  なぜ貴女がここに?」

 優しげな笑み浮かべるエメルさんに事情をたどたどしくなりながらも、何とか説明して昨日と同じ部屋に移動しました。

 因みに、受付嬢さんは受付の仕事があるのでこっちには来ていません。
 とても残念がっていましたけど……何故それ程、この部屋に来たかったのでしょうか?

 しかし、その疑問の答えはすぐに判明しました。
 それは、お茶と一緒に僕の目の前に差し出された白き神秘の代物。

 柔らかいスポンジにフワッと雲のようなクリーム、そしてそれらを調和させる赤い苺……

 そう、僕の意識はこの世界に来て初めて目にしたスイーツ。
 ショートケーキに一瞬にして固定されてしまいました。





「コレールさん、お手数をかけて申し訳ありません。
 Aランク冒険者ともなれば誰しもがそれなりに有名人なのです。
 ですので……」

「いえ、私が冒険者になったのは昨日の事なので仕方がありません。
 それよりも、今重要なのは私とお嬢様がパーティーを組めば受けられる依頼が増えると言う事ですので」

「昨日……もしや貴方が火竜ファイアドラゴンを仕留めたと言う……
 コレールさんがルーミエルちゃんとパーティーを組む事自体に問題はありません」

「それは良かったです」

「ですが、何故Aランク冒険者である貴方がルーミエルちゃんと?」

「私は冒険者以前に、お嬢様に仕える執事で御座います」

「執事、ですか……
 わかりました、冒険者の内情を探る事はしません。
 ですが、1つだけよろしいでしょうか?」

「何で御座いましょうか?」

「いくらAランク冒険者である貴方が居るとはいえルーミエルちゃんは、まだ駆け出しのFランクです。
 本来であれば彼女が貴方の受ける依頼に同行する事自体に無理があります。
 ですので、無理だけは決してし無い様にお約束下さい」

「ご心配頂き有難いですが、その心配には及びません。
 何せお嬢様は、私などよりもお強いですからね」

「えっ?
 ふふふ、そうですね。
 確かにルーミエルちゃんの強さは凄まじいです」

 冗談めかして笑うエメルの視線の先にはケーキに夢中になっている幼い少女。
 お行儀よく、しかしケーキだけに集中しているその姿は、とても微笑ましくあった。

「お嬢様、どの様な依頼をお受けいたしましょうか?」

「もぐもぐ……そうですね……僕もドラゴンを見てみたいです!」

「っつ!  かしこまりました、お嬢様」

 口に含んだケーキを飲み込み、とても楽しそうに笑ったルーミエル。
 その事実に、嫌いと言われて絶望の淵に立っていたコレールは歓喜に震えた。

 その後、非常に機嫌が良くなったコレールによって、腕をへし折られたCランク冒険者ラグナスは腕を治癒される事になる。

 圧倒的な強さ、そして治癒する寛容さを見せつけたAランク冒険者コレール。
 そんなコレールにラグナスは憧れを抱き始めたとか……
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...