最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

フウ

文字の大きさ
上 下
31 / 375
第3章 帝国ギルド編

31話 Fランク冒険者です!!

しおりを挟む
「どうかしたのですか?」

 ここで慌ててはいけない。
 地球では世界を股にかけて利益を上げる様な奴らと対等以上に渡り合ってきたのだ。
 この程度で慌てる訳もない。

「いえ、書類に問題がある訳では無いのでご心配なく」

 受付で全くサイズの合っていない椅子に足を宙に浮かせながら座る僕の目線に合わせて、言い聞かせる様に優しく言ってきますが……

 書類に問題が無い、イコール……僕自身に問題があるって事じゃないですかっ!
 何故バレたのですかっ?  衛兵さんに身分証まで発行してもらったと言うのに……

 はっ!  くっ、やっぱりこの容姿をどうにかしないと流石に無理がありましたか……しかし、ここで引く訳には行きません!!

 ここで動揺を晒せば、自ら自分の正体を自白した様なもの。
 ここは落ち着いて完璧に対応して見せるのです!  僕なら出来るはず、地球での経験を思い出せっ!!

「わかりました」

 ふっふっふ!  やりきりましたよ。
 全く動揺を表に出さず、完全に落ち着きを持った声。
 どうですか?  これが僕の実力です!





 ルーミエルは気づいていない。 
 完璧に隠し切ったと思っていても、実はやり切ったと言う表情が顔に出ていた事を。
 そして、それを見ていた周囲の人たちが微笑ましげに彼女を見ている事も……





「ありがとうございます。
 ではこちらに」

「はい」

 受付嬢さんと秘書?  さんの案内についていく為に、椅子から軽く飛び降りて軽やかに着地を決めました。

 その際、着ていたこれまた白いワンピースの裾が軽くめくれ上がる。
 やっぱり少し動きづらいですね。

 因みに、今僕が着ているワンピースはフェルの羽毛の繊維を白く着色し加工した物らしいです。
 なんでもそこいらの国にある国宝以上の価値があるとかなんとか……

 これも何故か過保護になったオルグイユ達が用意してくれた物です。
 あっ!  だから帝都に来てから、あんなにも視線を集めていたのでしょうか?

 まぁ、伝説にすら語られ、神獣と呼ばれるフェルの羽毛を使ってますからね。
 見る人が見ればその価値を見抜く事は容易いでしょう。
 なるほど~、どうりで、納得できました!




 一人で、うんうんと頷きながらギルド職員の後をついて行く幼女。
 そんな彼女の姿を見て、むさ苦しい冒険者ギルド内が、和やかな空気に包まれた。
 尤もその事を本人が知る事は無かった……




「はい、果実水でよかったかしら?」

「あっ、ありがとうございます」

「いいえ、こちらから頼んだのですから、この程度当然の事です」

 これは一体どう言う事でしょうか?
 てっきり前回と同様にギルドマスターの所に連れて行かれると思っていたのですが……通された場所は普通の面談室?  みたいな場所でした。

 しかも、前回は用意してくれ無かった飲み物を当然と言って出してきますし。
 この飲み物も、罠かと一瞬警戒しましたが……どうやら毒は入って無い様ですし。
 前回の様に、この部屋の周囲に誰かを待機させている気配は感じません。

 つまりは、今僕と相対しているのは最初の受付嬢さんと、出来る秘書風の方の2名のみという事になります。

 それはつまり……この2人で僕を拘束、又は倒す自信があるという事に他なら無いのではないでしょうか?

 見た感じ受付嬢さんは普通の一般人に見えますが……この秘書さんの方はそれなりの実力者の様ですしね。

「あの……それでお話は?」

「あら、そうだったわ。
 あなたの仕草があまりに可愛らしかったモノだから……」

 最後の方が小さ過ぎてなんて言っているのか聞き取れませんでしたが。
 ヤバイですね……この人からは、オルグイユと同じ気配がします。
 これは注意が必要かもしれません!

「それでお話なのだけれど……本当に冒険者になるつもりですか?」

「えっ?  そうですけど」

 全く今更何故そんな事を……まさかっ、これは僕を油断させるための策略!  しかし、気付いてしまえばなんて事はありません。

「ハッキリ言って、辞めておいた方がいいですよ。
 そもそも、冒険者なんてむさ苦しい下品な男ばかりです!
 貴女のような可憐な少女が……幼女がその中に入ればどうなる事か!!
 ……すみません、少し取り乱しました」

「い、いえ、お気になさらずに」

「それに冒険者は常に死の危険が付いて回る仕事です。
 少し厳しい事を言うようですが、確かに冒険になるための年齢制限はございません。
 ですが冒険者は子供のお遊びでやっていける程甘いものではありません」

「わかっています。
 僕は決してお遊びで冒険者になろうとしている訳ではありません」

「……わかりました。
 貴方がそこまで言うのであれば、私達にそれを止める事は出来ません。
 しかし、何か困った事があったらすぐに我々ギルドに相談してくださいね?」

「わかりました」

「さてと、そう言えばまだ自己紹介をしていませんでしたね。
 私はネルウァクス帝国支部で副ギルドマスターをやっております、エメルです」

「僕はルーミエルと言います。
 よろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。
 ではルーミエルさんこちらをどうぞ」

 そう言って差し出されたのは黒の鉄板に白で僕の名前が入れられ、枠を銅で細工された一枚のカード。
 これはいわゆる冒険者証や冒険者カードと呼ばれるものでしょう。

 てか、この人も副ギルドマスターですか……では前回の女性は一体?
 まぁ、副ギルドマスターは2人制なのかも知れませんね。

 まぁ、そんな事より冒険者カードです!
 思っていたよりも作りが凝ってますね。
 フッ!  僕の琴線に触れる素晴らしいデザインです!!

 それにしても……ああっ、これをこの手で持つ時が来ようとは思っていませんでした。
 感動モノですよ!

「こちらが冒険者カードと呼ばれる物です。
 身分証にもなりますので、失くさない様にして下さいね。
 もし紛失した場合は、再発行にお金がかかりますのでご注意して下さい」

 まぁ、取り敢えずこれで身分証を得る事は出来ましたね。
 これでいきなり吸血鬼め、とか言って絡まれる事は避けられるでしょう。

「では次にランクについて説明させて頂きます。
 まず冒険者カードは上から順にアダマンタイト級・オリハルコン級・ミスリル級・白金級・金級・銀級・銅級と7つの階級に分類されます。
 よく言われるSランク冒険者が、アダマンタイト級冒険者に該当します。
 ルーミエルさんは銅級ですのでFランクになりますね。
 ここまではよろしいですか?」

「はいっ、問題ありません!」

 うん、自分でもわかります。
 僕は今、かつてない程にテンションが上がってますよ!
 だって冒険者ですよ、冒険者!  これでテンションが上がら無い筈がありませんよ!!

「では、続けますよ。
 ランクを上げるためにはギルド職員の推薦を得る必要があり、Cランク以上では試験に合格する必要があります」

「わかりました。
 1つ聞きたいのですが、受ける依頼の制限はないのですか?」

「はい、制限はありません。
 ですが、だからと言って身の丈に合わない依頼を受けると命を落とす事になります。
 ルーミエルさんも気をつけてくださいね?」

「はい、わかりました」

 確かに冒険者になったからと言って調子に乗っていたら死ぬ事になりますからね。
 地下迷宮の魔物達のように。

「では、説明はこれでお終いですが。
 本当っに、無理をしたらダメですよ!  他の冒険者に何かされたらすぐに我々に相談して下さいね?」

「わかりました」

「では、お時間を取って申し訳ありませんでした。
 出口まで送りましょう、こちらです」

 そう言って席を立つエメルさんと受付嬢さん……あれ?

「あ、あの、話ってそれだけですか?」

「えっ?  そうですけど」

 すると、エメルさんは少し驚いたようにそう言いました。
 まさか、本当にこれで終わりなのですか?  これでは警戒してた僕がバカみたいです……

「あっ、ごめんなさいね。
 いきなり奥に呼ばれたら怖いわよね、ごめんなさいね。
 悪気は無かったのよ」

「い、いえ」

 どうやら、僕が冒険者になると言った事に対して、心配してくれていただけの様ですね。

「色々とありがとうございました」

 出口まで送ってくれたエメルさんと受付嬢さんに礼をして冒険者ギルドを後にしました。

 う~ん、やっぱり地下で過ごした時間が長かったせいか、前回の事があったからか、人を見る目が鈍っていますね。

 けどまぁ、今は冒険者になれたから別にいいでしょう!
 これで僕も遂に今日からFランク冒険者です!!
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...