最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

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第1章 深淵の試練編

01話 神様はちょろいです

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 目を開けると、視界に映るのはどこまでも広がっているように感じる真っ白な空間。
 そして、そこに佇む青年が一人……



 ―――――――――――――――――――



「うっわ、何あれ」

「何で、あんな奴来たのかな?」

 とまぁ、ひそひそと俺のことを遠巻きで語っているのは同じ学校に通うクラスメイトの女子2人。

「はぁ……」

 高校2年。
 大多数の人からすれば、人生で最も楽しい時間の1つである修学旅行のクラス別行動中でフェリーの上。
 晴れ渡る青空に、僅かに吹き付ける海風に乗って仄かに香る海の匂い。

 そんな楽しい光景の中にあって一際異彩を放つのは何を隠そうこの俺、伊波 光輝です。
 夏場の南国とあって皆んなが薄手の服に各々のファッションを着こなしているのに対し、真っ黒なフード付きのロングコートにサングラス。

 自分で言うのも何ですが、不審者一歩手前のような……と言うより、もはや不審者そのものと言える服装。
 尤も、こんな服装をしているのには歴とした理由が……

「おい、そこどけよ白女野郎」

 とまぁ、イキがっているクラスメイト君がいきなり罵ってきたように。
 俺の肌は白く、瞳は赤い……つまりはアルビノです。

 アルビノは……まぁ白い蜥蜴とか白蛇とかと同じ現象で、中には視覚障害を持つ人もいる様ですが、幸いな事に俺は持っていません。
 とは言え紫外線には極端に弱い。
 因みに彼らが俺の事を白女と呼ぶのは俺の容姿が中性的だから。

 まぁそんな訳で、こんな服装をしているのですが……高校生と言えど、所詮は子供。
 子供の集団の中に周囲と違う存在が1つあればどんな事になるのかは明白!

 そうイジメにあう!!  
 そして、この体質と境遇のせいで小、中、高と特に仲の良い友達も出来ず。
 日光の下にも出られない。

  そんな俺がヒキニートになったのは、至極当然の成り行きでしょう。
  と言うか、中学卒業までまともに学校に通っていたのだから、それだけで十分賞賛に値します!  ハッキリ言って奇跡です。

 そして、俺の家は世界を股にかけて様々な事業を展開している世界的大企業。
 ハッキリ言って、俺が一生何もしなくても十分に生きていけるだけの財力を持っています。

「何であんな中二病が金持ちなんだよ」

「ホント、人生って不平等だよな」

 だからこそ、こうなる訳です。
 コイツらは俺に絡んで来たヤツの取り巻きで、確か名前は……まぁ、取り巻きであることには違いないです。

 ちなみに俺は彼らの言うような中二病ではない。
 ゲームも好きだし、アニメやラノベも大好き。
 でも引きこもっていたら、それぐらいしかすることがないのだから仕方がない。

 それに、こんな格好をしているのも、別に好きでしている訳ではありません。
 紫外線の下に素肌を晒せないので物理的に仕方ないですし。
 そもそも!  俺はこんな修学旅行になんか来たく無かったんです。

 修学旅行なんて無意味な時間を過ごすくらいなら、家に引きこもってゲームやアニメ、ラノベを読んだりしていた方が俺にとっては有意義ですし……まぁ、結局は両親に説得されて、こうして参加しているわけですが……

「何をしているの!」

 話に割って入って来たのは、クラス担任の山口先生。
 若く、優しく、そして美人。
 生徒からの人気も非常に高い山口先生が介入してくれた事で、彼らも慌てて立ち去って行きましたか。

「大丈夫、伊波君?」

「ありがとうございます、助かりました」

 さて、ここまでのやり取りからもわかるように、俺はクラスメイト達からよく思われていません。
 そりゃまぁ、学校に登校するのは必要最低限だけで、たとえ登校してもすぐに早退。

 それなのにヒキニート生活で培われた俺の知識を持ってすれば成績は常にトップクラス。
 俺の家が運営している学校と言うこともあり、不正を疑われる始末。
 まぁ無事に進級出来たから別にいいんですけどね。

 引きこもっていても将来は家を継ぐか、それが無理でも子会社を貰って勝ち組人生。
 極め付けにはこの格好などの要素が加わり、俺はクラス、ひいては学内中で嫌われています。

 まぁその気持ちも分からないでもないですが。
 高校生なのだから、もう少し大人になってくれても良いと思うんですけど……

「きゃぁぁぁぁ!?」

 唐突に上がる悲鳴と激しい揺れに眩い発光。
 しかし……俺には何が起きたのか咄嗟に理解した。
 普通の人であれば、フェリーが沈没するのかと思いパニックに陥る事だろう。

 しかし!!  長年〝それ〟に憧れて続けて来た俺には自然とすぐに理解できました。
 これは夢にまで見た、異世界召喚なのでは無いかと!!
 次の瞬間、眩い光がさらに濃くなり思わず目を瞑り、そして次に目を開けると……



 ―――――――――――――――――――



 冒頭に戻る訳です。
 さてさて、状況整理がてら今日あった事を回想していたわけですが……ここが何処かは知りませんが、異世界じゃ無い事は確実でしょう。

 内心、異世界召喚だと叫んでいたさっきの自分に悶え苦しんでいると、ふと視線を感じで後ろを振り向く。
 そこには呆れたように半目になっている、さっきの美青年がいた。
 ……あまりの恥ずかしさに、この人の事を忘れていました。

「落ち着いたかな?
 ここに来て初めにそんな反応をしたのは君が初めてだよ」

 と、やはりどこか呆れたような声色で話しかけて来る。

「さてと、まずは自己紹介をしようか。
 こんにちは、私は地球の神様です」

「そうですか」

「まぁ、そんな事をいきなり言われても信じられ……今もしかして『そうですか』と言ったかい?」

「言いましたよ。
 だってそうでしょう?
 こんな真っ白な空間、俺が知る限り地球にはありませんし。
 何よりそんな格好をしている人は現代には殆どいないと思いますからね」

 とりわけ、この神様は教科書で見る石像のような豪奢な貫頭衣とでも言うべき服を身につけているのだ。
 現代にそんな格好をしている奴は……まずいないと思います。

「そんな事より俺は死んだのですか?」

「伊波 光輝さん、君にだけはそんな格好とは言われたく無いです……はぁ、まぁいいでしょう」

 軽くため息をついて、佇まいを整える神様。

「ご安心を、クラスメイトの皆さんを含め誰も死んではいません、勿論貴方も。
 今の貴方の状態を端的に言うのであれば、魂だけの状態です。
 私が貴方の魂と身体を一時的に切り離し、君の魂を呼んだのは君に謝罪するためです」

「謝罪、ですか」

「そうです。
 君達を巻き込んでしまった謝罪を。
 君達は私が管理している〝地球〟とは別の世界に召喚されてしまいました。
 本当に、申し訳ない」

 そう言って頭を下げる神様。
 神様に頭を下げられる、これはかなり貴重な体験な気がしますね。

「まぁ、それは仕方ないですね」

 尤も、それは俺が勝手に判断していいものではないでしょうけど。

「わざわざ君をこの空間に呼んだ理由はもう1つあります」

 そして、かなり気まずそうな表情を見せる神様。
 神様ってこんなにも表情豊かなんだなと思ったのは詮のない事だろう。

「今回の召喚に君が巻き込まれたのは想定外の事態でした。
 あの場に君は居ないとばかり思っていましたから。
 本来、召喚された人達には〝異世界の勇者〟という称号と、なんらかの能力が発現します。
 まぁそこら辺はアニメやライトノベルと同じだと思ってください」

「驚きました。
 神様なのにアニメとかラノベを知っているんですね」

「それはもちろん、私は地球の神ですからね。
 私の力を持ってすれば、世界中の書籍も読み放題。
 それに地球の文化を嗜むのもまた、神の務めという事ですから」

 それって、人間がやってると犯罪になると思いますけど。
 神として、そこの所はどうなのでしょうか?

「まぁそれは置いておいて。
 その能力を発現させるのは、向こうの世界の神の仕事ですが。
 大勢の能力を発現させるのには、いかに神と言えどもそれなりの準備が必要になります」

「なるほど、つまり俺の分の用意が出来ていないと言う事ですか」

「察しが良くて助かりますが、誠に申し訳ない事にその通りです」

「ヤバい事になってますね……」

 召喚なんて事が可能なのだからその異世界は、テンプレに従って剣と魔法の世界。
 もし仮に違っていても地球の日本みたいに平和とは言えない世界でしょう。

 流石にそんな世界において、ただのヒキニートたる俺が何の能力もなく、いきなり自力で生きていくのは難しい……と言うか不可能です。
 訓練を積んだ軍人とかであれば、まだ一縷の希望もありますが……

「本当にすまない。
 だからと言ってはなんだが、代わりに私が君に能力を授けてあげようと思ってね。
 だから君をここに呼んだのさ」

「本当ですか!?」

 神様のこの発言で、極限まで萎えていた異世界でのやる気が急速に拡大していくのを感じる!
 せっかく憧れてた異世界召喚されたのに、そんな事になればイジメがエスカレートする事は確実。
 最悪の場合、殺されるなんて事もあったかもしれませんからね。

「本当です。
 今回はこちらに不備があったので、特別に君に力を1つ授けてあげますよ」

「1つだけですか?」

「そうです」

「あぁ……勝手に異世界の事情で巻き込まれて、もう家族にも会えないのに。
 さらには神様達のミスのせいで、これからは苦労も多くなるだろうに、ミスのお詫びに得られる力がたった1つだけとは。
 地球の神様の力はこんなものなのか……」

  別に異世界に行く事にマイナスの思考はなく、むしろ喜んでいるくらいですが。
  ここで素直に引いては世界を股にかける世界的大企業、伊波家の名折れ!

「わ、わかりましたよ……
 特別にユニークスキルとしてマップ機能と、収納機能をつけて、授ける力も特別に力を込めてあげますから!」

 勝った!   思わず、ニヤリと笑みが漏れる。

「……もしかして。
 いえ、もしかしなくても嵌めてくれましたね」

 表情に出るとは俺もまだまだですね。
 ですが言質はいただきました!

「まぁいいでしょう。
 こちらに非があったのは事実ですし、今回だけは特別です。
 君に授ける力は君のこれまでの経験が基盤となって発現するので、どの様な力になるかは私にもわかりません。
 それでも少しは干渉できるので、一応大まかなイメージを聞いておきます。
 どの様な力がお望みですか?」

「そうですね、俺が望む力は──────」

「また、珍しい発想をしますね、君は。
 本来ならそんな力は、ダメだと言いたいところですけど……いいでしょう。
 その方向性でいきましょう」

 そう言って、ニッコリ微笑むちょろ神様。

「他の召喚者達は異世界の神の祝福ギフト、異能という形で力が授けられますが、君の場合はユニークスキルの形になります。
 よって君には異世界の神の祝福が無く、魂に大きな空きがあるわけですが。
 祝福の代わりに巨大な魔力が身につくはずです」

 そう言って一度言葉を切り、真剣な顔で深く頭を下げました。
 神たる者、そう易々と頭なんて下げて良いのかと思いますが。
 これは、神様なりの誠意として受け取っておきましょう。

「苦労をかけると思いますが、頑張ってくださいね」

 その言葉とともに唐突に視界が切り替わる。
 淡い光を発する白い柱が立ち並び、地面には巨大な魔法陣が描かれた空間。

「ようこそお越しくださいました、勇者の皆様」

 神様から事情を聞いた俺以外の全員が未だに混乱する中……ピンクの髪を伸ばした一人の美女が微笑んだ。
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