上 下
422 / 460
第24章 世界会議編

422話 世界会議 開幕

しおりを挟む
 5年に一度、幾人もの王達が歩く白き道。
 普段は硬く閉ざされている、巨大な両開きの白い扉を潜り、白き道と呼ばれる廊下を進むと……再び巨大な純白の扉が姿を現す。

 もはや封印ともすら呼べるほどに、張り巡らされた無数の結界。
 厳重な警備がなされている、第二の扉のさらに奥。
 白き道の終着点、そこに広がるは……

「こ、これが5年に一度。
 世界会議の初日にのみ、評議会に属する全ての国々の王達が集い、会議の開始を宣言する場所……」

 今まで歩んで来た、白き道よりもなお神聖な空気に満ちた空間。
 巨大な純白の円卓とそれを囲う無数の席。

 そしてその円卓の奥、この空間の最奥。
 巨大な円卓を、各国の王達が座る席を見下ろす位置に設置された……神聖なる白亜の玉座。

「美しい……」

 この光景に魅せられたかのように、唖然と率直な感想をこぼす若き王の姿に、共に白き道を歩いて来た老王が微笑ましげに笑みを浮かべる。

「えぇ、本当に。
 あれが我々、評議会の王達であっても……たとえ四大国の国主達であっても、決して座る事が許されない神座。
 主神であらせられる女神、魔法神ティフィア様が座す席」

「しかし、本当に階段すらないとは。
 いったいどうやって、魔法神様はあの神座にお座りになられるのか」

「なんでも、資格ある者。
 つまりは魔法神ティフィア様が一歩踏み出すと、その歩みに合わせて透明な階段が出現するとか。
 まぁ尤も、その伝説を直接目にした者は、もはやこの世に殆ど残っていないのですが」

「今回の会議に出席される王達の中でも、その光景を目にしたのはネフェリル皇帝陛下と大賢者マリア女王陛下。
 そして冒険者ギルド協会の総統グランドマスターガルド様、この御三方だけですからね」

 そうしてまた、神聖な光景に見入りそうになり……

「おっと、いつまでもここに居ては後続の皆の邪魔になってしまう。
 そろそろ我ら席に着きましょうか」

 老王が朗らかな笑みを浮かべて促す。

「そ、そうですね。
 申し訳ありません」

「いえいえ、お気になさらず。
 それよりも……そろそろ、おいでになられますぞ」

「おいでに……とは、いったい?」

「その伝説を目にした御三方を含めた、四大国の王達と特に影響力の強い主要国の王達がです」

 老王がそういった瞬間──円卓の間に足踏み入れてきた者達の姿に、円卓の間が静まり返る。

「あはは……流石にちょっと気まずいですね」

 ヴァリエ騎士王国が国王。
 白を基調とした騎士服に身を包み、金の髪に青い瞳をした男装の麗人。
 騎士王アリアナ・キューレ・ヴァリエ。

「えぇ、皆さんをお待たせしてしまったようで、心苦しいです」

 教国こと、ティフィア教国が教皇。
 白く長い髭を撫でながら、申し訳なさそうに眉を下げる、優しげな面持ちの老人。
 教皇カロン・レ・ヴィル

「ったく、だから先に行って待ってようって、提案したのによ」

 冒険者ギルド協会を統べる総統。
 鍛え上げられた肉体を持ちながらも、苦労人のようにやれやれとため息をつく男。
 冒険者ギルド協会総統グランドマスターガルド・アルバーン

「な、なぜ私まで……」

 そんな面々と共に、若干頬を引き攣らせながらこめかみを抑える金髪碧眼の美丈夫。
 イストワール王国が国王エルヴァン・エル・イストワール。

「まぁまぁ、細かいことはいいじゃない!」

 イストワール王の肩を叩きながら、楽しげに笑う真紅の髪に金色の瞳をした美女。
 四大国が一角、商業と流通の中心地にして商人の聖地と呼ばれる海洋商業国家アクムス王国を統べる赤き王。
 女王アルバ・ジョン・アクムス。

「アルバさん、イストワール王が困っているわよ」

 苦笑いを浮かべる、艶やかな黒い髪に金色の瞳をした妖艶な美女。
 四大国が一角、魔導学園都市王国を統べる女王にして、伝説の英雄が1人。
 魔導学園都市王国が女王、大賢者マリア。

「あはは、まぁそれでこそアルバちゃんだからね」

 そう言って微笑ましそうな目で微笑む、黒髪黒目の美青年。
 四大国が一角にて超大国と称される、ネフェリル帝国を統べる伝説の英雄が1人。
 ネフェリル帝国が国王、現人神ショウ・アラキ・アクムス。

「お前なぁ、もうちょっとアイツの事も考えてやれよ。
 こんな場所でちゃん呼びはねぇだろ」

 呆れたように苦笑いを浮かべる、短い金色の髪と金の瞳、鍛え上げられた肉体。
 その場にいるだけで他者を圧倒する、まさに覇王といった風貌の美丈夫。

 人類国家と国交を持ち、強国として知られる獣王国ビスバロニスを統べる獣王であり、不可侵存在として恐れ畏れられる魔王。
 八魔王が一柱ヒトリ、獣魔王レオン。
 そして……

「それでは……」

 全員が席に着いたことを見届けてから、口を開いたら金色の髪に淡い青色が混じったような綺麗な銀色の瞳をした美青年。

「これより、世界会議を開始します。
 皆さん、存分に語り合うとしましょう」

 四大国が一角にして、この世界会議の主催国。
 ネフェリル帝国と並んで超大国と称される、レフィア神聖王国が国王ルフィール・セア・レフィアが会議の始まりを告げた。
 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

異世界転生 転生後は自由気ままに〜

猫ダイスキー
ファンタジー
ある日通勤途中に車を運転していた青野 仁志(あおの ひとし)は居眠り運転のトラックに後ろから追突されて死んでしまった。 しかし目を覚ますと自称神様やらに出会い、異世界に転生をすることになってしまう。 これは異世界転生をしたが特に特別なスキルを貰うでも無く、主人公が自由気ままに自分がしたいことをするだけの物語である。 小説家になろうで少し加筆修正などをしたものを載せています。 更新はアルファポリスより遅いです。 ご了承ください。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

処理中です...