上 下
383 / 460
第21章 魔の国編

383話 真実の力

しおりを挟む
「っと、いうわけだ。
 悪いが、すぐに終わらせてもらうぜ?」

 おぉ~、さすがは魔王の一柱ヒトリにして、獣王国を統べる獣王。
 かっこいい!

「すぐに終わらせる?  ふっ……ふふふっ!  うふっふっふっ!!  」

「むっ」

 レオン陛下のこの重圧を。
 魔王覇気を真正面から受けてるのに……ルイーナのこの余裕。


「確かにレオン、貴方は強い。
 貴方の力を見誤っていたのは認めるわ」

「そりゃどうも」

「けど……実力の全てを。
 本当の実力を見せていなかったのは、貴方達だけだと思ったのかしら?」

「ほぉ~ん、お前も本当の実力を隠していたと?」

 ま、マジですか……

「当然でしょう?
 私は光の使徒のスパイとして、魔王の一柱ヒトリに名を連ねていたのよ?
 貴方達に本当の実力なんて、見せるわけがないじゃない」

 確かに、言われてみればスパイだったルイーナが。
 教団が仮想敵としていたであろう魔王である、レオン陛下達の前で本来の力を見せてるとは思えない。

 うん、それはわかるよ?  わかるんだけど!!
 それってつまり……全力を出す事なく、ルイーナは魔王の一角に名前を連ねていたってことっ!?

「私のユニークスキル・正直者は、使い勝手が悪いのよ。
 嘘を吐けば吐くほどに、ペナルティが科されるというデメリットが存在する」

「ペナルティだと?」

「そう、吐く嘘の大きさ、量、相手によってペナルティの度量は変化するのだけれど……このペナルティによって、私の魔素エネルギー量は最大で1割、全体の10パーセントまで制限される」

 10パーセント……?

「魔王を相手に嘘を吐いていた私の魔素量は、どれだけ制限されていたと思うかしら?」

「そりゃ、当然最大だろうな」

「ふふっ、その通りよ。
 でもデメリットだけじゃなくて、ちゃんと大きなメリットも存在するのよ?
 それが貴方達にこうして、わざわざ手の内を明かしている理由」

 正直者というスキル名で、嘘を吐くとペナルティを負う。
 という事は正直に、本当の事を話すと……

「嘘を吐かなければ、なんらかのメリットがある。
 そうだな……魔素量が増加するってところか?」

「うふっ、その通りよ。
 本当の事を話す度に正直者の権能による恩恵で、私の魔素量は最大で10倍にまで膨れ上がる」

「っ~!?」

 んん~っ!?  今なんて!!
 き、聞き間違いかな?  今ルイーナが10倍とか、意味不明な事を口走ったような気がするんですけど……

「そして私の正体を明かし、こうしてユニークスキルの説明をした今……私の魔素量は」


 ッ────!!!


 なんて、重圧。
 レオン陛下すら……

「最大の恩恵を受け、本来の10倍」

 今までに出会ってきた誰よりも、膨大で圧倒的な魔素量っ!!

「へぇ~、確かにすごい魔素量だが……本来の自身の魔素量の10倍だ。
 ろくにコントロールもできなんじゃねぇのか?」

 た、確かにレオン陛下の言う通り、本来の自身の魔素量の10倍もの魔素をコントロールするのは至難の業だと思う。
 それは、魔王の一角に名を連ね、教団の最高幹部である十使徒が第六使徒であるルイーナと言えども例外じゃないはず。
 でも……

「えぇ、確かにこの魔素エネルギーを完璧にコントロールする事は、私にも不可能。
 けれど……コントロールなんてする必要はないのよ」

 そう。
 これだけ膨大な魔素なら、解き放つだけで大破壊を引き起こす。
 いちいち細かいコントロールなんて必要ない。

「うふふっ!」

 空中に浮かび上がり、嗜虐的な目でレオン陛下を……私達を見下ろしたルイーナが楽しげに、狂ったような狂気に満ちた笑みを浮かべ……

「圧倒的な力を!  破壊の暴威を知りなさいっ!!」

 瞬間──視界が真っ黒に染まる。
 大地を穿つ、膨大な魔素の奔流が解き放たれた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...