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第21章 魔の国編

372話

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「チッ……逃げられちまったか」

「レオン陛下……」

 ただでさえ愛娘を拉致されてるのに、その犯人からあんな話を聞かされて……

「ん?  なんだ、なんだ!  お嬢ちゃん、そんな顔するなって。
 心配するな、カリンは必ず助け出すからよ」

 それはもう心配なはずなのに、私を気遣ってすら見せるこの態度。
 仮に拉致されたのが私で、これが私のお父様なら、たぶん周囲の制止を無視してもうルイーナの城に乗り込んでるだろう。

 流石と言うべきか、なんと言うべきか。
 レオン陛下は獣王国ビスバロニスを統べる獣王であり、八魔王が一柱ヒトリに名を連ねる魔王でもある。

 上に立つ者として、配下を動揺させないために、勤めて冷静な態度を取ってるってのもあるだろうけど。
 これが……絶対的な強者ゆえの余裕ってやつか……

「さて、それじゃあ……」

 レオン陛下が右手の人差し指を、その鋭い爪を軽く振るう……


 ピシッ……ガラガラガラッ!!


「カリンも最上階で待ってる事だし。
 早速、行くとするか」

 たったそれだけで、ルイーナのお城を守る頑強そうな城門が。
 分厚い扉に幾重にも線が走って……バラバラになって崩れ落ちた……

「マジですか……」

 なに、今の?
 いやマジで軽く指を一振りしただけだよ?  分厚つくて頑強なだけじゃなくて、結界も展開されていたはずなのに……一瞬でバラバラに。

「これは開戦の狼煙の代わりとしよう。
 しかし……クックック、この程度で驚いてもらっちゃ困るぞ?
 これでも俺は、魔王の中でも2、3番を争う力を持ってるんだぜ?」

「えっ……」

 ちょ、ちょっと待って!  いま非常~に、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんですけどっ!?

「に、2、3番を争う?」

 これだけの力を。
 今の私ですら見切れない速度で、ルイーナのお城の城門を破壊してみせたレオン陛下が2、3番っ!?

「そうだが……まっ、詳しい事は先に進みながらにしよう」

「えっ、あっはい」

 今はカリンさんを救出しなきゃだし、こんな所でゆっくり話してる場合じゃなかった!

「ふふっ、それじゃあ急ぎましょうか」

「ぐずぐずしてると、騒ぎを聞きつけた魔人族達が集まってくるでしょうしね」

 確かに、ルミエ様とフィルの言う通りだわ。
 急がなきゃならないのに、大勢に立ち塞がれたら時間を取られるし。

「んじゃあまっ、行くぞ」

「はいっ!」

 レオン陛下に続いてルイーナのお城に乗り込み……


 パァ──!


「これは……」

 レオン陛下によって破壊された城門……いや、違う。
 このお城全体が結界に包まれた?


『ウフフ、それは貴方達を逃さないためのもの。
 魔王の一角に、かつて私の同胞を落としたSランク冒険者。
 生かしていたら、いつか私達の邪魔になるでしょうから、貴方達にはここで死んでもらう』


 私達を逃さないための結界、ね。


『あぁ、安心して?
 おチビちゃんと、可愛い坊やだけは生かしてあげる。
 ウフフ、貴重な実験体としてね?  せいぜい頑張って、私を楽しませてくれる事を期待してるわ』


「ったく、あの野郎……俺達の事をナメすぎじゃねぇか?」

「ふふっ、少しイラッとしたわね」

 おっと、レオン陛下とルミエ様のこめかみに青筋が!!
 ま、まずい!  2人に暴走されると、私達じゃあ止められない……!

「で、でも!  あれだけ自信満々という事は、なにか罠とか策があるのかもしれませんし。
 油断するのは……」

「問題ねぇよ。
 アイツが何を企んでいても、それごと叩き潰してやるからよ」

「えぇ、身の程を教えてやらないと」

 ダメだ!  ど、どうすれば……

「あっ!  そういえばレオン陛下!!
 さっきの続き!  魔王について教えてください!!」

「ん?  あぁ、そうだったな」

 よかった!  どうにか話を逸らせた!!
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