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第21章 魔の国編

371話 戦争だっ!!

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 以前にリアットさんを狙って、配下の魔人の肉体を依代に顕現したルイーナと戦ったけど……あの時とは全然違う。
 これが本来のルイーナの力!  これが八魔王が一柱ヒトリ……

「灰燼の魔女ルイーナ……」

 レオン陛下の全身の血が沸騰するような魔王覇気とも、ルーナ様の平伏したくなるような魔王覇気とも違う。
 底冷えするような禍々しく、それでいてどこか惹きつけられるような……

「ふふふっ、貴女は……生意気な小娘じゃない。
 あの時以来ね?  元気にしてたかしら、おチビちゃん」

「おっ!  おチビちゃんっ!?」

 もしかしなくても、それって私の事っ!?
 こ、この私を!  公爵令嬢で、現状は未来のイストワール王国王妃で、さらには!  人類最強の一角である15人しか存在しないSランク冒険者一角!!

 しかも非公式だけどSランク冒険者の中でも、序列3位に位置するこの私に!
 なによりっ!  冷静沈着でクールでカッコいい、孤高の悪役令嬢たるこの私に向かって!!
 おチビちゃんっ!!?

「ふっ、ふふふ……」

 お、落ち着け。
 落ち着くんだ私!  これは私の精神をかき乱して、混乱させるためのルイーナの精神攻撃。

 ここで怒り狂って、取り乱しちゃったらやつの思う壺!!
 この程度の挑発に感化される私ではないのだ!  ここは至って冷静に……

「えぇ、そうよ。
 身長は少しは伸びたようだけど……ふふっ、残念ながらは成長しなかったようね」

 そっち、そっちね……

「可哀想に……」

 憐れむようなルイーナの視線。

「ふっ」

 全く本当に、思わず鼻で笑っちゃう程に言ってくれるわ。

「ふふふ……」


 ピキッ


 冷気によって私の足元が、地面が凍りつく。

「あっ、まずい……」

 フィルが引き攣った顔で何か言ってるけど、今はそんな事は気にならない。

「よろしい」


 パキィィッ──!!!


 ルイーナの魔王覇気に対抗するように、覇気を解き放つと同時に地面が一気に凍りつく。

「ならば戦争だっ!!」

 そっちがその気なら、やってやろうじゃんっ!!
 国とか、人類とか、魔王とか、そんな事はどうでもいい!
 もう私も15歳だし、最近ちょっと気にして焦ってたのに……

 それをバカにして!!
 もうあの女が何者だろうと、魔王の一角だろうと関係ない。
 私をバカにした事の愚かさを、その身に刻んでやるわっ!!

 さぁ!  私の怒りを思い知るがいいっ!!
 とりあえず、このまま一気にルイーナの城の城門を凍り付かせてやるっ!


 ドッ!!


「むっ!」

 勢いよく一瞬で地面が凍りついていっていたのに、急に止まった?
 これは……私の覇気とルイーナの魔王覇気がぶつかって、拮抗してるのか。

「そう好き勝手されては困るわ」

「ふんっ!」

 面白い。
 どっちの覇気が上か、勝負だ!!


 ────ッ!!!


 ぶつかっていた覇気同士が弾け飛び、キラキラと氷の粒子が舞う。

「ほう」

「ふふっ」

「はぁ……」

 レオン陛下が感心したように呟き、ルミエ様が誇らしそうに笑う。
 フィルはなぜか疲れたようにため息をついてるけど、まぁそれはさておき、結果は……

「引き分け、ですか」

 全力で。
 それこそルイーナのお城を氷漬けにして、粉々にしてやるつもりで放ったのに。

「流石は八魔王が一柱ヒトリ
 やりますね」

「それはこっちのセリフよ。
 まさかこの私の魔王覇気と互角だなんて」

 ふふん!  これが今の私の実力なのだよ!!
 なんたって人類最強の一角と呼ばれる、Sランク冒険者15人の中でも私の序列は3位。

 私よりも強いのはルミエ様とガルスさんだけで、今の私にはエレンお兄様ですら勝てないのだ!
 私の事をナメてもらっては困るのだよ!!

「まぁいいわ。
 レオン、貴方が来た理由は……聞くまでもないわね。
 御明察通り、貴方の娘を攫ったのはこの私」

「だろうな。
 テメェ、なんの目的だ?」

「ふふっ、実は人間達を使って行っていた実験を、どこぞのおチビちゃん達に潰されたのよ」

「っ!!」

 それってつまり……

「フィル」

「うん、間違いないだろうね」

 だよね。

「実験だと?」

「そう、素質の高い人間の子供を集めて依代を作る実験をしていたのよ。
 そしてやっと完成させた試作品も、先日おチビちゃんに破壊されちゃってね」

 試作品ってまさか、あの偽造天使の事?

「実験に大きな遅れが生じたのよ。
 そこで急遽、より素質の強い素体……貴方の娘を使って実験を進める事にしたの。
 魔王の娘なら人間の子供と違って、多少手荒でも簡単に死ぬ事はないでしょう?」

「テメェ……この俺が、そんな事を許すと思ってんのか?」

「ふふっ、レオン、貴方がこうして乗り込んで来る事も想定済みよ。
 貴方の娘がいるのは、この城の最上階……」

 ルイーナが身を翻し……

「待ちやがれっ!!」

「ウフフ、実験を止められるものなら止めてみなさい」

 その姿が掻き消えた。
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