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第20章 ゲーム進行編

342話 教科書イベント、発生!!

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「ふふっ」

 優雅に扇を広げて、妖艶な所作で余裕の笑みを浮かべて見せる。
 ふっ、決まったわ!  これぞ、クールでカッコよくて優雅な孤高の悪役令嬢っ!!

「もう一度言ってくださるかしら?」

 ここ数日、エマと模擬戦をしたり、フィルに愚痴ったり、特級任務を推敲したりと、我ながら結構ハードというか。
 忙しい日々を送っていると思うけど……こればっかりは仕方がない。

 そりゃあ私だって本当はお家のベッドの上で、好きなだけぬくぬくゴロゴロと怠惰に過ごしたい。
 けど!  私は公爵令嬢だし、魔塔に属する大魔道士で、オルガマギア魔法学園の特別名誉教授で、Sランク冒険者!!

 そして……前世の記憶にある乙女ゲームでは、主人公のエマを苦しめる悪役令嬢なのだ!
 忙しいのは当然というものだけど、頑張らなくっちゃ!  だって……

「……エマの教科書がなくなったんだ。
 ソフィア、キミは何か知らないか?」

 一昨日はフィルに、昨日はルミエ様に言ったように、私には悪役令嬢としてこの学園生活で起こるであろうイベントを!
 今私の目の前で私を鋭く見据えているセドリックや、悲しそうな面持ちのエマとの結末を見届けなければならないのだから!!

 フィルやルミエ様には、この状況を楽しんでない?  って疑われたけど、とんでもないっ!
 まぁ確かに悪役令嬢ごっこが楽しいのは認めるけど、こっちは命がかかっているのだ!!

 いくら私には既に、この国を相手取っても対等かそれ以上に渡り合う力と自信があるとはいえ!
 この状況を面白がって、楽しむほど私は非常識でもなければ、図太くもないのである。

「しかし……」

 それを仮とはいえ婚約者である私に、しかもそんな顔で聞くかね?
 まったく……ちょっと前までは私のストーカーをしてたくせに、この変わりようには感心しちゃうわ。

「何か言った?」

「いいえ、何も。
 残念ですけれど、彼女の教科者について私は何も存じ上げませんわ」

 これが模擬戦イベントの3日後、つまり今日のイベント……聖女エマ、イジメ勃発イベントっ!!
 まぁ、コレも定番のイベントだよね~。

「本当か?」

「ルスキューレ嬢、嘘をついても無駄ですよ」

 何も知らないと言ってるのに、いまだに疑うような視線を向けてからセドリック。
 嘘と決めつけて蔑むような目を向けてくるオズワルド。

「ソフィアさん、正直に言ってください!
 私、謝ってもらえればそれでいいですから!!」

 などと胸の前で手を組んで、いかにもなセリフをほざいているエマ。

「「……」」

 そして、そんな3人を冷めた目で見ているサイラスとガイル……の2人は、まぁいいとして。
 この3人は何をもって、私がエマの教科書をどうにかしたと考えてるんだろう?

「あら、私の話を聞いておりませんでしたの?
 私は何も知らないと言っているではありませんか。
 何故か私を疑っていらっしゃるようですが、どうして私が彼女の教科書をどうにかする必要があるのですか?」

 確かに乙女ゲームでは、この前の模擬戦で恥をかいた事。
 そして婚約者である自分を差し置いて、セドリックに心配されているエマに嫉妬して、悪役令嬢たる私が取り巻き達と一緒にエマの教科書を焼却炉に捨てる。

 その後もエマへのイジメを続けて、最後には階段から突き落としたり、しちゃうわけだけど。
 この前の模擬戦では恥をかくどころか、カッコいい悪役令嬢然とした姿を見せつけてやったし。

 私が好きでもない、むしろ嫌いなセドリックに心配されてるエマに嫉妬するなんて、天地がひっくり返ってもあり得ない。
 私は何もやってないのに……これでエマがそう言ったからなんて言おうものなら救いようがない

「昨日の放課後に勉強会をする予定だったんだ。
 けどエマが教科書を机に忘れてしまって、取りに戻ったエマが教室から走り去るキミを見たと言っているんだよ」

「その後、学園の焼却炉からエマさん……エマの教科書が発見されました。
 殿下の関心がエマに向いていると感じて、エマに嫉妬しての行動だったのでしょう、違いますか?」

「っ!!」

 あ、危なっ!  もうちょっとで、ついつい笑っちゃう所だったわ!!
 けどまさか、まさか……ふふっ、これが王太子と未来の宰相候補とか、本当に救いようがないじゃん。

「ふぅ……」

 落ち着け私!

「だから私が犯人であると?
 ふふふっ、残念ですがそれこそあり得ません」

 だってセドリック事は嫌いだし、この仮婚約も破棄したいと思ってるわけだし。

「彼女の教科書がなくなったのは昨日なのでしょう?」

「そうだ」

「なら私ではありません」

 私には完璧なアリバイがあるのだよ!
 論破できるものならしてみるがいいわっ!!

「だって私は昨日、学園に来ておりませんもの」

「「は?」」

「えっ?」

 ぷぷっ!  間抜けな顔!!
 これが私のアリバイ!  学園どころかこの国にすらいなかったわけだし、エマの教科書をどうこうできるわけがないのである!
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