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第20章 ゲーム進行編

338話 見ていませんでしたの?

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「はぁ~っ!!」

 エマが何処ぞの戦闘民族の主人公達が気を高める時のような声を上げながら、迸っていた膨大な魔力が神聖属性の光となって立ち昇る。

「なっ!?」

「おぉ、綺麗だな」

「流石は聖女であるエマさんですね」

 その光景を目にしたサイラスが驚愕に息を呑み、セドリックとオズワルドが呑気に感嘆の声をあげる。
 まぁ、確かに側から見れば綺麗だろうね。

 けど仮にも未来の国王である王太子に、同じく将来の宰相候補である宰相令息のくせに、この状況で綺麗とか、流石って……まったく、あの2人はこれがどういう状況なのかわかってるのかな?

「何を呑気な事を言ってるんですかっ!!」

「サイラス、どうかしたのか?」

「そんなに焦って、キミらしくありませんよ?」

 おぉう、やっぱりわかってなかったのね。
 こんなのが将来のこの国の国主と重鎮って……先が思いやられるわぁ~。

「ッ~!!」

「サイラス、ヤバいのか?」

「ガイル……あぁ、ヤバいなんてもんじゃない」

「お前がそこまで言うなんて……」

 そっ!  本来……というか、乙女ゲームではセドリック達と一緒になってエマを褒め称える側のサイラスとガイルが、まともなやり取りをしてるのはやっぱり不気味だけど。
 サイラスの言う通り!  普通に考えれば、今の状況は非常にヤバい。

「しかし彼女が使おうとしているのは光属性だろ?」

「そうです。
 光属性魔法は魔物などには絶大な力を発揮しますが、その本質は後方支援。
 人には大きな害はないはずですよ」

 まぁ確かにオズワルドの言うように、光属性魔法の本質は回復とか強化などのバフによるサポート面のイメージが強いし。
 一般的には他の属性に比べて、攻撃力に劣るとされている。
 そう、あくまでも一般的には。

「彼女が使おうとしているのは光属性ではなく、上位属性である神聖属性魔法です。
 それにいくら後方支援向きの属性とはいえ……あれだけ膨大な魔力で放たれた魔法ならば、ルスキューレ嬢の身が危ない!!」

 その通~り!
 まっ、一般的に後方支援向きだと思われがちな光属性や神聖属性だけど、極めればその力が絶大なものなのはフィルを見れば一目瞭然っ!!

 特殊属性に数えられる光属性、その上位属性である神聖属性。
 これは同じく特殊属性である闇、その上位である深淵属性と対をなす属性であり、非常に強力な属性なのだよ。

 神聖属性魔法の最高位、触れたもの全てを消し去る滅光ホーリーとか、非常に危険極まりない魔法だし。
 フィルなんてその気になれば、この学園全体を壊滅させる事すら……

 それどころか王都自体を焦土に変えることすら容易くできる。
 まぁもっとも!  その程度なら私にも当然のように、できちゃうんだけども!!

「ふふん!」

 っと、いけないいけない。
 今はそんな事はどうでもよくて……問題なのはそんな危険な属性の魔法が、膨大な魔力でもって放たれようとしているという事実!!

 いくらエマに魔法に対する天賦の才があり、スキルと加護のお陰で既に魔法のエキスパート!
 宮廷魔法使いレベルである魔法士に匹敵する程度には、魔法を扱えるとはいえ……

 流石に今のエマにフィルと同等の魔法を行使する技量も、実力もない。
 つまり今のエマではフィルや私のように、神聖属性魔法の最高位である滅光ホーリーなんて使えないわけだけど。

 流石は乙女ゲームのヒロインというべきか、エマはその技量を膨大な……と言っても所詮は50万程度なんだけど。
 とにかく!  その魔力量を持ってして、技量なんて関係なしにゴリ押しする!!

「まずいっ!  早く彼女を止めるんだっ!!」

 サイラスが焦りに満ちた様子で杖を掲げ。

「っ!  ルスキューレ嬢っ!  早く逃げるんだっ!!」

 ガイルが必死の形相で叫ぶ!
 が、時既に遅し。

「いっけぇ~っ!!」

 エマから神聖魔法が。
 白い光を放つ膨大な魔力の塊が私に向かって放たれ……


 ────!!


 一瞬でエマから放たれた魔力の塊が、最初から何もなかったかのように綺麗さっぱり霧散した。

「えっ……?」

 エマの唖然とした間抜けな顔と共に、同じく間抜けな声が静まり返った訓練場にこだまする。

「あら、見ていませんでしたの?」

 何が起こったのかは至って簡単!!

「私の氷属性魔法で、貴女の魔法を掻き消して差し上げたのです」

 正確にはエマが放った神聖属性の魔力弾の核に、初歩的な氷属性魔法である氷刃アイスエッジを当てて霧散させてやったのだよっ!!
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