上 下
288 / 460
第16章 集結編

288話 貴方は……

しおりを挟む
 めっちゃ偉そうにドヤ顔で意味不明なことをいってるけど……なにこの生意気そうなお子様。
 それなりに仕立てのいい服を着てるし、後ろにお付きの執事っぽい人がいるからどっかの貴族のボンボンってところかな?

「えっと……」

 この場合、どう答えるのが正解なんだろう?
 まずミネルバ達との旅行を満喫したいから、この生意気お子様について行くっていうのは論外!

 一応エレンお兄様の招集に便乗して、お忍びで遊びにきてるって設定だし、目立つような真似はあまりしたくない。
 それにこれでも私って一応、白銀と謳われるSランク冒険者で次世代の英雄と称される有名人なのだ!!

 ここは冒険者達の都市アバン!  ここで変に騒ぎを起こせば、私やフィルやルミエ様の容姿から身バレしちゃう恐れもなくはない。
 となれば!  ここは穏便に断って、立ち去るべき!!

「すみませんが、連れがいますので」

 ふっ、我ながら完璧な断り文句だわ!
 これだと連れがいるからご一緒できないんです……って感じの申し訳なさも演出できる上に、相手も無理に誘いづらい!!

 それにこのアバンは完全に国家から独立した、冒険者ギルドが統治する都市。
 いわば都市国家みたいなものだけど、当然このアバンに貴族階級なんてものは存在しない。

 つまり!  このアバンにいる貴族は、私達や目の前の生意気お子様を含めて全て他国の人間っ!!
 向こうもこのアバンで騒ぎを起こしたくはないだろうし、これで穏便にこの話を終わらせられ……

「な、なんだとっ!?」

「えっ?」

「お、お前っ!  ふざけるなよっ!!
 この僕の誘いを断るというのかっ!?」

「ちょっ、え?」

 とりあえずそれ以上騒ぐのは!  元々周囲の注目を集めてたのに、余計に人目を集めちゃってるじゃんか!
 ちょっとお付きの人!  この生意気お子様をどうにかしてっ!!

「えぇえぇ!  誠にその通りです!!
 その服装などを見たところ、貴女は貴族ではありませんね?
 そこそこ裕福な商人の娘といったところでしょう」

 そりゃまぁ、今はお忍び旅行って設定だからお忍びにふさわしい服装をしてるけども。

「平民の分際で、お坊ちゃまのお誘いを断るなど言語道断!!
 この方を誰方と心得ておいでかっ!」

 いや、知らないけど……

「このお方はキルビア王国がベルゼ伯爵がご子息、ベンゼル様でありますぞ!!
 坊ちゃまにお声掛けいただけた栄誉も理解せずに断ろうとするなど、無礼も甚だしいっ!!」

「キルビア王国のベルゼ伯爵……」

 キルビア王国といえば、イストワール王国の同盟国の1つだけど……ふむ、ベルゼ伯爵って名前は聞いたことがない。
 つまり、ベルゼ伯爵はキルビア王国において、そんなに重要なポストにいるわけじゃないってことだけど……

「お姉様、これって……」

「えぇ、私もちょっと驚きを隠せないわ」

 今ここで重要なのはそんなことじゃない!
 まさかここで、このアバンの往来で!  こんな騒ぎを引き起こすなんてっ!!
 しかも貴族の地位を笠に着たこの横暴な態度!!

 自由を信条とする冒険者の街で、貴族の地位を笠に着て横暴に振る舞うなんて!  一番冒険者達の反感を買いかねない言動なのにっ!!
 まさかキルビア王国のベルゼ伯爵令息とやらが、ここまで考えなしだとは……

 ここで騒ぎを起こして冒険者達の反感を買えば、本当に最悪の場合はキルビア王国から冒険者ギルドが撤退なんて事態もあり得なくはないのに。
 まぁ、流石にそれはSランク冒険者の怒りを買ったりしない限りはないだろうけど……

「あっ」

 私ってSランク冒険者の1人だったわ。

「ふん!  わかったらさっさと謝罪しろ。
 そうすれば先程のお前の無礼を特別に許してやる」

 おおう、マジで運がいいわこのベンゼルくんは。
 もしこれが私以外のSランク冒険者だったら、どうなっていたことやら……しかしどうしよう。

 ベンゼルくんが騒いでくれたおかげで、周囲は人だかりになっちゃってるし。
 フィル達を呼んでもいいけど……さらに話がややこしくなる未来しか見えない。

 それに、もし仮にこの場所で私達の本当の身分を明かそうものなら大騒ぎになるのは確実!
 国際問題に発展するのは間違いない。

 だって仮にも公爵令嬢にして第一王子の婚約者に絡んじゃってる上に!  公衆の面前で謝罪まで要求してるわけだし。 
 さてはて、どうしたものか……

「おやおや、これはなんの騒ぎですか?」

「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」

 突如として介入してきた声に、颯爽と現れた人物に野次馬をしていた冒険者達が息を呑む!
 それもそのはず!!

「貴方は……」

 腰まで伸びた金の髪と瞳、左右の腰には2本の剣。

「やぁ、可愛らしいお嬢さん」

 Sランク冒険者が1人!  〝千剣〟ミルバレッド
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

処理中です...