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第10章 英雄台頭編

197話 見〜つけた

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 冒険者ギルド本部の中心に位置する広場にて、歴史上初めて発生した七大迷宮でのスタンピードを華麗に食い止め!
 誰一人の人的被害も、この広場以外の街への被害も出さずに、スタンピードを収束させた!!  のに……

「やっぱり、貴方達が……」

 何故かダンジョンの中から、氷を砕いて派手に飛び出して来たかと思ったら、次は今回のスタンピードを人為的に引き起こしたっ!?
 むぅ~!  せっかくの私の活躍に泥を塗りやがってっ!!

 というか!  人為的にスタンピードを引き起こす、なんてことが本当に可能なの?
 もしそうなら……教団はいつでも好きなときに、好きな場所のダンジョンでスタンピードを発生させられるってこと。

「フィル、何があっても彼らを逃したり、殺しちゃったりしたらダメだよ」

「うん、わかってるよ」

 ここ冒険者ギルド本部と同じく、七大迷宮はもちろん、ダンジョンの周りには街ができて栄えてることが多い。
 もし仮に、仮に教団がスタンピードを人為的に引き起こす方法を確立してるのなら……教団は今まで以上に、計り知れないほどの脅威になる!!

 けど……今は目の前に今回のスタンピードを引き起こしたっていう、張本人達がいるっ!
 これは不幸中の幸いだわ!
 この人達を捕まえて、なんとしてでも詳細を聞き出さないと!!

「貴方達の身柄は、この場で拘束させてもらいます!」

「キミ達には、色々と聞かせてもらうよ?」

 相手は4人。
 対してこっちは、フィルに加えて数百人の高位冒険者による包囲網。
 隔離結界も展開してるし、万が一にも逃げられることはない……と思うけど。

 あの4人は魔王ナルダバートやピアと同じく教団……光の使徒の一員。
 私が最高幹部の1人だったナルダバートに勝ったことは当然知ってるはずなのに、4人とも何故か自信満々って感じだし……油断はできない。

「クックック、それはこっちのセリフだ!
 言っただろ?  俺達にはもう後がねぇ、俺達のためにもお前には一緒に来てもらうぞっ!!」

 瞬間──地面が爆ぜる。

「オラッ!!」

 一足で私の懐まで踏み込んで、迫り来るボディーブロー。
 確かに速い、並の者なら反応すらできないスピード!  だけど……私を誰だと思っている!!

 私は魔王の一角にも名前を連ねたナルダバートやピア、教団の最高幹部である十使徒と渡り合ってきたのだ!
 この程度の速度で私を捉えられると思ったら大間違いよ!!

「遅い!」

「ガッ!?」

 放たれた拳を軽やかにかわして、私の愛刀・白で首筋に一太刀!
 まぁ、峰打ちだけど……とりあえず!  これで1人は片付い……

「ラァッ!!」

「っ──!!」

 うそっ!  あの一撃で気絶しないの!?
 しかも首筋を峰打ちされて体勢を崩した状態から、無理やり蹴りを放ってくるなんて…… まっ、それでも苦し紛れに放った蹴りなんて、私には当たらないんだけど。

「はっ!」

 蹴りを掻い潜って懐に潜り込み……ガラ空きの腹部に一閃!
 巨体の男を弾き飛ばす!!

「むっ」

 石畳に足が沈み込んで……

「ふふっ、相手は彼1人じゃないわよ?」

 あの女の人の魔法か。
 まぁ、そりゃあ連携くらい取って攻めてくるよね。
 最初の巨漢の男の人が私の気を惹きつけて、女の人が魔法で私の動きを封じて、残りの2人が左右から私を叩く。
 なかなかの連携だけど……

「ぐっ!?」

「うっ……!」

 左右から迫っていた敵2人が唐突に吹き飛ばされる。

「なっ!?」
  
「私も1人じゃない」

 驚愕に目を見開く女の人の懐に踏み込んで……

「ッ──!!」

 お腹に回し蹴りを叩き込んで蹴り飛ばす!!
 ふっふっふ~ん!  私にかかれば、あの程度の足止めなんて一瞬で突破できちゃうのだよ!!

「まったく、この場所には僕もいる事を忘れないで欲しいな」

「フィル!  ナイスタイミング!!」

 そう!  私を挟撃した敵2人を吹き飛ばしたのは何を隠そう、このフィルなのだ!!

「むふふ!  確かに良い連携だったけど……私達には敵わない!!」

 なにせ!  私とフィルはお友達だもんっ!!

「こほん、これでわかったでしょう。
 私とフィルに加えて、この場所は数百人もの高位冒険者によって包囲されています。
 貴方達に勝機はありません、大人しく降伏……っ!?」

 うそ、まさか……

「ソフィー?  どうかし……っ!!」

 フィルも気づいたみたいだけど……

「これは……ヤバイ」

 今まで感じたことのない感覚。
 ナルダバートやピアとも全く違う……この全身を押し潰されそうな感覚。

 この4人を相手にしてる場合じゃないっ!
 悔しいけど、認めたくないけど……あれは格が違いすぎる。
 この場に、この街に残ってる人全員が確実に殺される!!

「ふふっ」

「「「「ッ──!!!」」」」

 唐突に響き渡った鈴を転がしたような綺麗な笑い声に、広場全体が静まり返る。
 4人組が一斉に振り返り、この場にいる全員がその声の持ち主を……

「見~つけた」

 まったく気配を発することなく。
 いきなり私の隔離結界内部に転移して現れた少女を……楽しそうに、嬉しそうに笑みを浮かべる青い髪の少女を目にして息を呑んだ。
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