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第10章 英雄台頭編

182話 S級試験

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「なんで?  どうしてフィルがここに……!?」

 これはいったい、なにごとっ!?

「はっ!」

 もしかして……ガルドさんとクリスティアさん、そしてフィル。
 うそ!  そういうことなのっ!?

 じゃ、じゃあガルドさんとクリスティアさんに改めてご挨拶しないと!
 なにせ!  私とフィルは……お友達だもんねっ!!

「うん、だいたい何を考えてるのかはわかるけど、普通に違うからね」

「へっ?」

 な、なんですとっ!?
 い、いや!  私の考えを覗き見ることができるルミエ様はともかく、いくらフィルでも私がなにを考えてるのかなんてわからないはず!!

 うんうん、つまり!  フィルはなにか勘違いしてるってわけだ。
 むふふっ、隠そうとしても無駄なのだよ!
 謎に包まれていた、フィルの素性を見破ってやったわっ!!

「ふふん!」

「ソフィー、残念だけど、僕は統括グランドマスター達の子供じゃないよ」

「ほぇ?」

 な、なんで!?

「あはは、ソフィーって本当にわかりやすいよね」

「むっ」

 失礼な!  こう見えて、私は既に天才と称される公爵令嬢!!
 僅か6歳のときにたった1年ほどで、公爵令嬢としての淑女教育を修了させたし……

 早速始まった王子妃教育でも、教育係の夫人に文句の付け所がないといわしめた才媛なのだ!!
 ポーカーフェイスも完璧である私が、わかりやすいなんてあるはずがない!  そもそも、いまは仮面をつけてるし!!

「ごめんごめん、そんなムッとしないで。
 ソフィーは素直だから、なんとなく考えている事がわかるんだよ」

「むぅ~」

 頭を撫でられても、そんな言い訳では誤魔化されないぞ!
 どうして私が考えていることがわかったのか、絶対に聞き出してやるわっ!!

「あはは、実は僕のご先祖様が神様なんだ。
 そのおかげで僕は他人の考えを少し読めるんだよ」

「神様……」

「そう」

「……はぁ~」

 まったく、そんなことで誤魔化されると思われてるなんて。

「まぁ、間違ってはいないわね」

「えっ?」

 ル、ルミエ様、いまなんて……

「ったく、なにイチャついたんだよ、お前らは……」

「ほわっ!?  イ、イチャっ……もう!  ガルドさん、なにをいってるんですかっ!!」

 私が誰とイチャついてると!?
 わ、私とフィルはお友達なのであって、断じてそのような関係ではないっ!!
 そもそも!  不本意ながら私には婚約者がいるわけだし!

「あはは、ソフィー、耳が真っ赤になってるよ?」

「っ~!  う、煩いですよ!  お黙りなさい!!」

 お、落ち着け私!

「ふふっ、微笑ましいですね」

「照れているソフィーも可愛いわ~」

 落ち着くのだ、私!!
 深呼吸、深呼吸……すぅ~、はぁ~……よし!
 ここは一度、ビシッと私の威厳をフィル達に見せつける必要があるな。

「こほん、私を誰だと思っているのです。
 私はソフィア・ルスキューレ!  誇り高きルスキューレ公爵令嬢にして、新たな英雄と呼ばれるAランク冒険者ですよ?
 この程度で恥ずかしがったり、取り乱したりする私ではありません!!」

 ドド~ン!  ふふ~ん、どうよ?
 完璧にビシッと決まったわっ!!

「ソフィーちゃん」

「ん?」

 グレンさん?  ミレーネさんも、いきなりどうしたんだろ?

「家名まで名乗ってよかったのか?」

「……あっ」

 や、やばい!  ミスったっ!!
 ど、どどどどうすればっ!?

「とりあえず……ソフィーさん、こちらへどうぞ。
 ルミエから話を聞いて、ソフィーさんのために特別にスイーツを取り寄せたんですよ?」

「えっ!  そうなんですか!?」

 そうと聞けば、こうしていられない!!
 私のためにわざわざ用意してくれたんだし、美味しくいただかなければ!!

「むむっ、グレンさんとミレーネさんも早く!
 フィルもそんなところで突っ立ってないで、早く座って!!」

「この変わり身の速さ……」

 瞬時にソファーに座った私を見て、ガルドさんが愕然となにか呟いるけど、細かいことは気にしない!!
 もう家名までフルネームで名乗っちゃったし、仮面をつけてても仕方ない!  あとは……


 パチン!


 指を鳴らすと同時にフィル達を、空いてる席に転移させてっと!
 これでよし!!

「ふふっ、では用意しますね。
 統括グランドマスターは、その間に試験の説明をお願いします」

「あぁ、わかった」

 おぉ~、ガルドさんが返事をした瞬間、クリスティアさんが一瞬で消えた。
 さすがは冒険者ギルドの副統括、すさまじい精度の転移魔法だけど……

「試験、ですか?」

「そう、今回Sランクに昇格申請を行った3人、ソフィー、ルミエ、そしてフィル」

「えっ?」

 いまフィルって……

「ソフィー、忘れてるかもしれないけど、こう見えて僕も一応Aランク冒険者なんだよ?」

 そ、そうだった!
 確かにいわれてみれば、初めてフィルとあったときにフィルもAランク冒険者だっていってた。
 なるほど~、だからフィルもここに来たんだ。

「まぁ、そういう事だ。
 それでだ!  お前達3人には、推薦状の提出の後……Sランク冒険者昇格試験、通称S級試験を受けてもらう!!」
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