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第10章 英雄台頭編

181話 もう1人

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 窓から差し込む光を背に、黒い革張りの椅子に腰掛け。
 広々とした机に肘をついて、顔の前で両手を組合む。
 まさに威風堂々!  一国の国王にも劣らない空気を身に纏う人物……

「この人が……」

 最古の現役Sランク冒険者にして、約400年前の聖魔大戦において活躍した英雄。
 冒険王と称されるガルスさんとも張り合う、ガッチリとしたこの体格!  この重圧プレッシャー!!

統括グランドマスター

 全ての冒険者達の頂点に位置する人。
 各国の各街に存在する、全ての冒険者ギルドを束ねる人物っ!
 冒険者ギルドという、強大な武略を保有する超多国籍機関を統べる男っ!!

「おぉ~!」

 さすがは冒険者ギルドの頂点に立つ人物!  めちゃくちゃカッコいいっ!!
 あっ、でも副統括のクリスティアさんとは違ってエルフじゃないんだ。

「……統括」

「何かね?」

 っ~!  冒険者ギルドの頂点に君臨する2人の会話っ!!
 い、いったいどんな会話を──

「なにを格好をつけているのですか?」

「へ?」

 んん~?  ク、クリスティアさん……??

「そうよ、気持ち悪いからやめてくれるかしら?」

「ルミエの言う通りです。
 似合わない事はしない方でください、ちょっと鳥肌が立ちました」

 し、辛辣っ!!
 ルミエ様もクリスティアさんも辛辣っ!!
 しかも……2人ともまるでゴミでも見るかのような、すさまじく冷たい目をしてるし……

「ちょっ、お前らなぁ……」

 あ、あれ?  怒って、ない?

「ったく、最初の印象が大事だって言い出したのはクリスティア、お前だろ?」

「だからといって、何故そうなるのですか?
 こうも言ったはずですよね?  貴方はただでさえ見た目に威圧感があるのですから、可能な限り紳士的に出迎えてくださいと」

「いや、だからこうしてだな……」

「ですから、私のアドバイスを受けて何故こうなるのですか?」

「それは、その……」

 これは……いったいどういうことなの?
 というか、私達は……私は今!  なにを見せられてるのっ!?

「ふふっ、実はあの2人は夫婦なのよ」

「へぇ~」

 冒険者ギルド頂点に立つ統括グランドマスターであるガルドさんと、副統括サブマスターのクリスティアさんってご夫婦なんだ……

「へっ?  ふ、夫婦っ!?」

「そうよ。
 まぁ見ての通り、すっかりに尻に敷かれてるんだけど……ああ見えて、ガルドは愛妻家で有名なのよ?」

「ほぇ~」

 まさか冒険者ギルドの頂点に立つお2人が、ご夫婦だったとは……知らなかったわ。

「ちょ、ちょっと待ってください!
 ルミエ様っ!  それって本当なんですかっ!?」

「統括と副統括のお2人がっ!?」

「あら、知らなかったの?」

「そういえば……お前達に言った事はなかったか?」

「言われてみれば、伝えていなかったかもしれませんね」

「で、では……」

「あぁ、クリスティアは俺の妻だ」

 お、俺の妻宣言っ!!

「まぁこっちではあまり知られてないようだし、無理もないわね。
 あの2人が夫婦なのは、紛れもない事実よ」

 ま、まさかこの目で、生で俺の妻宣言を見ることになろうとは!!
 な、なんか見てはいけないモノを、見ちゃってるような気がしてきた……

 あ、あれだ!  お兄様達のお部屋に忍び込ん……こほん、お邪魔して読んだ小説によると。
 ここからクリスティアさんと、ガルドさんが見つめ合って!
 お、おおお大人な!  だ、男女の一時がっ!!

「とまぁ、無駄話はこのくらいにしてだ。
 本題に入ろう……と、言いたいところだが、実はまだ1人来てなくてな」

「皆様こちらへ。
 もうすぐ到着するはずですが、もう1人が到着されるまでお茶にしましょう。
 さぁ、ソフィーさんも」

「ひゃ、ひゃい!  私はなにも見てませんからね!!」

「「「「……」」」」

 あ、あれ?  なにこの変な空気は……

「ふふっ、可愛いから黙ってたけど、それはソフィーの勘違い」

「へ?」

「流石に人前でソフィーが想像してるような事はしないわ」

「っ~!!」

「どんな想像をしてたのかは知らないが……まっ、そういうわけだ」

「ふふっ、さぁソフィーさんもこちらへどうぞ」

「は、はい……」

 ま、まさかただの勘違いだったとは!
 は、恥ずかしい!!

「酷いですね。
 僕を待ってくれても良かったのに……」

「っ!?」

 な、なんで!  この声は……!!

「たく、やっと来たか。
 遅刻だぞ」

「あはは、申し訳ありません。
 ちょっと下で絡まれまして……やぁ、ソフィー、2日ぶりだね」

「フィルっ!!」
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