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第10章 英雄台頭編

176話 ギルマスの提案

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「グレンさん、お久しぶりです。
 けど……」

 なんでグレンさんが私を待ってたのか、私にどんな用があるのかはさておき。

「ふふっ」

 グレンさんがちょっと丁寧な言葉遣いで取り繕ってる!!
 ぱっと見は親戚の優しいお兄さんって感じだけど……普段のグレンさんを知ってる私としては違和感がすごい。

「ソフィーちゃん……」

 あっ、わ、私としたことが!  取り繕ってるグレンさんが面白くて、ついつい笑っちゃった!!

「す、すみません。
 ただ……違和感が……」

「だから言っただろ?  グレン、お前その喋り方、気持ち悪いぞ」

「いつも通りで構わないと言っているのに、変に意地を張るから……」

「……」

 グレンさんが恥ずかしそうに、ちょっとだけ顔を赤くして俯いてしまった。
 グレンさんは私のお客様なわけだし……ここはお客様をもてなすホストとして、私がなんとかしなければっ!!

「エレンお兄様!  アルトお兄様!
 そんなことをいったらグレンさんが可哀想ですっ!!」

 そもそも!  グレンさんは冒険者ギルド、イストワール王国王都支部のギルドマスターって立場で、確かにイストワール王国の重鎮の1人ではある。

 とはいえ、いくらグレンさんが重鎮の1人でも貴族ってわけじゃないし、ルスキューレ家は公爵家なのだ!
 しかも……Sランク冒険者であるエレンお兄様と、賢者の1人にしてAランク冒険者でもあるアルトお兄様の実家!!

 ギルドマスターという立場にいるグレンさんにとって、ルスキューレ公爵家は粗相を働くわけにはいかない相手!
 そんなルスキューレ公爵家に出向いたグレンさんが、取り繕って猫をかぶるのは当然のことといえる!!

「ソ、ソフィーちゃん……」

 ご安心をっ!  私はちゃんと、グレンさんの事情をわかってますからね!!

「グレンさんにも立場というものがあるのです。
 確かに違和感がすごくて、ちょっと面白いですけど……頑張ってるグレンさんをからかって、イジメたらダメです!!」

「「っ~!!」」

 お兄様達とグレンさんが仲良しの、お友達だってことは知ってるけど……親しき仲にも礼儀あり!
 グレンさんが個人的にプライベートお兄様達を訪ねて来たのならともかく、ギルドマスターとして私を訪ねて来たグレンさんの事情も考えてあげないと!!

「ディア、見ましたか?」

「えぇ、もちろん」

「ふふっ、後でミネルバちゃんにも教えてあげないとね」

「そうですね……ルミエ様にもご協力をお願いしましょうか」

 フィアナお姉様とディアお姉様はいったいなんの話を……っと、今はそれよりもグレンさんだ!

「グレンさん、お兄様達が申し訳ありません……」

「いや……うん、気にしないで」

 若干引きつった苦笑いを浮かべるけど……さすがはグレンさん。
 結構恥ずかしかったと思うのに、笑って流して見せるとは!
 冒険者ギルドのギルドマスターは伊達じゃないっ!!

 それに比べて、お兄様達は……私が軽くお説教したのに、なにやらニヤニヤしてるし。
 むぅ~、こうなったらお兄様達にはあとで、しっかりとお説教をして反省してもらわないと!

「こほん、それで俺……私がソフィーちゃんを訪ねて来た理由なんだが……」

 そういえば、まだグレンさんがなんで私を待ってたのか聞いてなかった。
 はっ!  もしや、またなにか緊急事態がっ!?

「ソフィーちゃんに1つ提案があるんだ」

「提案、ですか?」

 緊急事態じゃないの??

「そう、ソフィーちゃんが冒険者になって約3ヶ月。
 当初の話では特別推薦試験でAランクに上り詰めた事もあって、周囲の反応が落ち着くまではAランク冒険者として活動するって方針だったが……」

 確かに、冒険者登録をした次の日にグレンさん達とそんな話をした。
 下手に目立ちすぎて国の介入とか、面倒ごとに巻き込まれないようにするための作戦だけど……それがどうかしたのかな?

「魔王ナルダバートの撃破に、オルガマギア魔法学園の新人戦。
 はっきり言って、既に世界中で話題になる程に目立ちまくっている」

「……確かに」

 そんなことはない!  っていいたいけど……その通り過ぎて否定できない!!

「と、いうわけでだ!  既に当初の方針は瓦解している事は明白だし、ここまで目立っているのならAランクに留まっているよりも上を目指した方がいい。
 ソフィーちゃん、そろそろSランク冒険者になる気はないかな?」
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