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第8章 王都動乱編
154話 鮮血の姫
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「貴女は……」
なんというか、不思議な感覚だ。
なんでいえばいいんだろ……たとえるなら、穏やかな海が目の前に存在しているような。
それでいて、どこまでも深く深く吸い込まれそうな。
竜王の姿になったルミエ様をまえにしたときと似てるけど……この人から感じるのは悠然とした、波風が一切ない凪のよう平穏。
どこか穏やかな、神聖さすら感じる自然と跪きたくなるような圧倒的な存在感。
「なんですか、貴女は?
私とソフィーちゃんの楽しい楽しいアソビの時間を邪魔しちゃうなんて!」
いや! まったく楽しい遊びの時間じゃなかったから!!
「う~ん、そうですね……今すぐ跪いて! 地面に頭を擦り付けながら無様に赦しを乞うのなら!!
特別に赦して、苦しむ事なく殺してあげますよ?
うふふ~! 我ながら本当に私って慈悲深くて優しいですよね!!」
「ふむ……そこの娘」
「えっ」
わ、私?
「この状況を端的に説明せよ」
おぉう、綺麗にピアのことを無視した!
あの背筋がゾワゾワする笑みを浮かべて、禍々しい魔力を放つピアを無視できるとは……って、そうじゃなくて!
「あの、その……」
端的に説明しろっていわれても!!
というか! その真紅の目を向けられたら、なんかうまく言葉が出てこないんですけどっ!!
い、いや! 落ち着くのだ私!!
私はいずれ最強へと至る者にして、冷静沈着でありクールでカッコいい孤高の悪役令嬢たるソフィア・ルスキューレ!
「ふぅ~、実は、ですね」
この不思議な雰囲気の美少女に綺麗な真紅の瞳を向けられたからって、戸惑うような私ではないっ!!
「その人は……こふっ! ぅっ……」
さっき好き勝手にお腹を蹴られたせいで、また血が迫り上がって……
「ふむ、まぁ良い。
娘よ、無理に喋るな」
「ッ!?」
こ、これは……
「なるほど……状況は分かった。
それは褒美だ」
ポンって、頭に軽く手を乗せられた瞬間に、身体中の怪我が治ったっ!!
それに状況はわかったって……
「娘よ、お主の名は?」
「ソフィア・ルスキューレですっ! ぁっ!」
か、身体がふらついて……
「肉体の傷は治してやったが、流した血が戻ったわけではない。
暫くは安静にするが良い」
「は、はぃ」
ち、近いっ! コケちゃいそうになったところを、受け止めてくれたのはありがたいけど……真紅の瞳が私の顔を覗き込んでぇっ!?
「して、ソフィア。
ルミエは元気にしておるか?」
「えっ? あ、はい。
今はお兄様達と王都にいますけど、元気で……」
ちょ、ちょっと待って!
めっちゃ自然な感じで聞かれたから、普通に答えちゃったけど……な、なんでルミエ様のことをっ!?
「しかし、この場でお主と出会うとはな。
ソフィアよ、お主は……」
「ちょっとちょっと! このピアちゃんを無視するなんて、酷くないですかっ!?」
確かに……完全にこの人のペースに飲まれちゃってたけど、こんな呑気に話してる場合じゃなかった!!
「とりあえず、貴女は誰なんですか? 私とソフィーちゃんの楽しい時間を邪魔しないでくれますか~。
じゃないと……その綺麗な顔がぐちゃぐちゃになるまで痛めつけて、もう殺してと懇願させてから殺しちゃいますよ?」
「っ!」
ピアから吹き荒れる殺気と禍々しい魔力。
さっきまでの……私を嬲って楽しんでたときの比じゃないっ!
「貴様……ワタシの言葉を遮ったな?」
「うふっ! 何訳わかんない事を言ってるんですか?
そ、れ、と、も! 絶対的な死の恐怖で、おかしくなっちゃいましたか~!?」
またピアの姿が消えて一瞬で私達の前にっ……!!
「えいっ!」
「っ……!!」
これは……
「は?」
唖然とピアが目を見開いて呟きをこぼしてるけど……それもムリはない。
だって……指一本で、正確には鋭い爪だけでピアの攻撃を受け止めてるんだから……
「ワタシの楽しみを妨げる、この事の意味は理解しておろうな?」
「ッ! そのプラチナブランドの髪に、真紅の瞳……ま、まさかお前はっ!!
鮮血姫ルーナっ……」
「退け」
謎の美少女が……ピアに鮮血姫ルーナと呼ばれた美しい少女が、苛立ちを隠そうともせずにスッと目を細めた瞬間…… 悲鳴をあげるますらなく、ピアの上半身が消し飛んだ。
「ふん、身の程を知らぬ痴れ者が」
腰から上を失ったピアの身体が地面に倒れ込むのを、真紅の瞳で見下ろすこの少女を……鮮血姫の名を関する人物を私は、いやこの世界に住うほとんどの人は知っている。
「貴女が……」
鮮血姫の名を知る、全ての者達は決して彼女の楽しみを妨げない。
なぜなら、それは彼女の……苛烈で無慈悲な女王の怒りを買うことになるから。
その女王の名は……
「八魔王が一柱、鮮血姫ルーナ」
霊峰ニュクスに住う、全ての吸血鬼の頂点に君臨する、吸血鬼の女王。
なんというか、不思議な感覚だ。
なんでいえばいいんだろ……たとえるなら、穏やかな海が目の前に存在しているような。
それでいて、どこまでも深く深く吸い込まれそうな。
竜王の姿になったルミエ様をまえにしたときと似てるけど……この人から感じるのは悠然とした、波風が一切ない凪のよう平穏。
どこか穏やかな、神聖さすら感じる自然と跪きたくなるような圧倒的な存在感。
「なんですか、貴女は?
私とソフィーちゃんの楽しい楽しいアソビの時間を邪魔しちゃうなんて!」
いや! まったく楽しい遊びの時間じゃなかったから!!
「う~ん、そうですね……今すぐ跪いて! 地面に頭を擦り付けながら無様に赦しを乞うのなら!!
特別に赦して、苦しむ事なく殺してあげますよ?
うふふ~! 我ながら本当に私って慈悲深くて優しいですよね!!」
「ふむ……そこの娘」
「えっ」
わ、私?
「この状況を端的に説明せよ」
おぉう、綺麗にピアのことを無視した!
あの背筋がゾワゾワする笑みを浮かべて、禍々しい魔力を放つピアを無視できるとは……って、そうじゃなくて!
「あの、その……」
端的に説明しろっていわれても!!
というか! その真紅の目を向けられたら、なんかうまく言葉が出てこないんですけどっ!!
い、いや! 落ち着くのだ私!!
私はいずれ最強へと至る者にして、冷静沈着でありクールでカッコいい孤高の悪役令嬢たるソフィア・ルスキューレ!
「ふぅ~、実は、ですね」
この不思議な雰囲気の美少女に綺麗な真紅の瞳を向けられたからって、戸惑うような私ではないっ!!
「その人は……こふっ! ぅっ……」
さっき好き勝手にお腹を蹴られたせいで、また血が迫り上がって……
「ふむ、まぁ良い。
娘よ、無理に喋るな」
「ッ!?」
こ、これは……
「なるほど……状況は分かった。
それは褒美だ」
ポンって、頭に軽く手を乗せられた瞬間に、身体中の怪我が治ったっ!!
それに状況はわかったって……
「娘よ、お主の名は?」
「ソフィア・ルスキューレですっ! ぁっ!」
か、身体がふらついて……
「肉体の傷は治してやったが、流した血が戻ったわけではない。
暫くは安静にするが良い」
「は、はぃ」
ち、近いっ! コケちゃいそうになったところを、受け止めてくれたのはありがたいけど……真紅の瞳が私の顔を覗き込んでぇっ!?
「して、ソフィア。
ルミエは元気にしておるか?」
「えっ? あ、はい。
今はお兄様達と王都にいますけど、元気で……」
ちょ、ちょっと待って!
めっちゃ自然な感じで聞かれたから、普通に答えちゃったけど……な、なんでルミエ様のことをっ!?
「しかし、この場でお主と出会うとはな。
ソフィアよ、お主は……」
「ちょっとちょっと! このピアちゃんを無視するなんて、酷くないですかっ!?」
確かに……完全にこの人のペースに飲まれちゃってたけど、こんな呑気に話してる場合じゃなかった!!
「とりあえず、貴女は誰なんですか? 私とソフィーちゃんの楽しい時間を邪魔しないでくれますか~。
じゃないと……その綺麗な顔がぐちゃぐちゃになるまで痛めつけて、もう殺してと懇願させてから殺しちゃいますよ?」
「っ!」
ピアから吹き荒れる殺気と禍々しい魔力。
さっきまでの……私を嬲って楽しんでたときの比じゃないっ!
「貴様……ワタシの言葉を遮ったな?」
「うふっ! 何訳わかんない事を言ってるんですか?
そ、れ、と、も! 絶対的な死の恐怖で、おかしくなっちゃいましたか~!?」
またピアの姿が消えて一瞬で私達の前にっ……!!
「えいっ!」
「っ……!!」
これは……
「は?」
唖然とピアが目を見開いて呟きをこぼしてるけど……それもムリはない。
だって……指一本で、正確には鋭い爪だけでピアの攻撃を受け止めてるんだから……
「ワタシの楽しみを妨げる、この事の意味は理解しておろうな?」
「ッ! そのプラチナブランドの髪に、真紅の瞳……ま、まさかお前はっ!!
鮮血姫ルーナっ……」
「退け」
謎の美少女が……ピアに鮮血姫ルーナと呼ばれた美しい少女が、苛立ちを隠そうともせずにスッと目を細めた瞬間…… 悲鳴をあげるますらなく、ピアの上半身が消し飛んだ。
「ふん、身の程を知らぬ痴れ者が」
腰から上を失ったピアの身体が地面に倒れ込むのを、真紅の瞳で見下ろすこの少女を……鮮血姫の名を関する人物を私は、いやこの世界に住うほとんどの人は知っている。
「貴女が……」
鮮血姫の名を知る、全ての者達は決して彼女の楽しみを妨げない。
なぜなら、それは彼女の……苛烈で無慈悲な女王の怒りを買うことになるから。
その女王の名は……
「八魔王が一柱、鮮血姫ルーナ」
霊峰ニュクスに住う、全ての吸血鬼の頂点に君臨する、吸血鬼の女王。
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