上 下
111 / 460
第7章 新人戦編

111話 入場っ!

しおりを挟む
「むふふっ」

 さぁ!  新たな仮面を身につけて……

「じゃあ、行ってくるっ!」

「はい、行ってらっしゃいませ」

「ファナと一緒に応援してるわ」

 ファナとルミエ様の声援と見送りを背に、学園だけじゃなく各国からも大々的に注目されてる新人戦の舞台へといざ行かんっ!!

「っと!」

 部屋を出ると同時に新人戦の会場になる訓練場の控え室に転移して一瞬で到着!

「ふふん~!」

 一瞬で目的地に移動できるから、時間ギリギリまでゆっくりできるし。
 転移魔法には転移先を目視したり座標が必要になるけど、私の魔力感知を持ってすれば広大な学園内の大部分に転移可能。

 まぁ、女子寮の私の部屋はルミエ様が結界を展開してるから、今の私だとマリア先生のみたいに直接部屋に転移したり、部屋の中から転移で移動することはできないけど……うんうん!  やっぱり転移魔法は素晴らしい!!

 イストワール王国にいるときは冒険者ソフィーとして行動してるときは別として、基本的に公爵邸の中でしか転移魔法は使えなかったけど……こっちでは最初の自己紹介でもう既に盛大にやらかしちゃってるし、学園内でなら気兼ねなく転移魔法を使用できるっ!

「おはよう、ソフィー」

「ふふっ、おはよう!  フィル」

 学園に入学して1ヶ月。
 何度やってもこの気安い挨拶はいいっ!!

「全然来ないから寝坊しちゃったのかと思ったよ」

「むっ」

 私を誰だと心得る!  私は才女と名高いルスキューレ公爵家のご令嬢にして、いずれは最強に至る者だぞ!!
 そんな私が子供みたいに寝坊なんてするわけないじゃんか!  まったく、失礼しちゃうわ!!

「あはは、ごめんごめん。
 でも、その仮面は似合ってるよ」

「本当?」

「もちろん」

「ふふん~!  そうでしょ、そうでしょ!!
 フィルも……いつもは仮面なんて着けてないからちょっと違和感があるけど似合ってるよ」

 オルガマギア魔法学園は外界での身分とは完全に隔離された空間で、たとえ王族でも平民の生徒と同列に扱われる。
 だからこそ、身分を隠して学園に在籍してる人もそれなりにいるんだけど……

 この新人戦では魔導学園都市王国のみならず、各国の重鎮とか国内外問わず学外から多くの観客がやって来る。
 そんなわけで、新人戦に出場する新入生で希望者は仮面で顔を隠して参加することができる。
 だから、外での身分を隠してる私やフィルは仮面をつけてるんだけども……

「ははっ、それはどうも」

 ふ~む、この美少年め!
 仮面で顔を隠してるの溢れ出すようなこのキラキラオーラ!
 フィルもまだ私と同い年の10歳なのに……私の残念な婚約者のセドリックにも見習ってほしいわ。

 確かにセドリックも王族だけあって顔はいいんだけど……なんというか、内面から溢れ出す優雅さ?  が全然違う。
 本物の王子様であるセドリックよりも、仮面をつけて顔を隠してるフィルの方が王子様然としてるってどうなのかな?

「ソフィーちゃ~ん!!」

「わふっ!」

 視界が真っ暗になって、画面越しに押しつけられる柔らかい感触といい匂い。
 まぁ、並大抵の者ならビックリしたり、恥ずかしがって慌てふためいたりすだろうけど……

 幼いころより毎日毎日、お母様やお父様!  お兄様達と共に過ごしてきた私は一味違うっ!!
 ふっふっふ~、確かに自己紹介でやらかしてしまった初日の翌日に登校した時はちょっとびっくりしたけど……今更、この程度で臆する私ではないのだっ!!

「おはよう、昨日はよく眠れた?」

「ミラさん、おはようございます」

「あら!  それがソフィーちゃんの仮面ね、凄く似合ってて可愛い~っ!!」

 初日の自己紹介でやらかしてしまって落ち込んでたけど……オリエンテーションが終わった直後にミラさんをはじめ、今度は女子生徒だけじゃなくて男子達にも群がられた。

 後からミラさんに聞いた話によると、私の自己紹介で静まり返ってたのは私がやらかしちゃったわけではなく、新入生総代とはいえ新入生なのに私がいきなり転移魔法を使ったことにビックリしてたからとのこと。

 まぁ、そんなことは別にどうでもよくて!  重要なのは……私の学園生活は、お先真っ暗ってわけではなかったということ!!
 そして!  フィルとミラさん以外にもいっぱいお友達ができたってことなんだけど……

「ソフィーちゃん!」

「おはよう、ソフィーちゃん!」

「遅かったから心配してたんだよ?」

「そうだぞ、ミラなんてソフィーちゃんが一向に来ないからずっとソワソワしてたしな」

 クラスメイト達、みんなからこんなに一斉に話しかけられたら困るっ!!

「皆さん、そんなに一斉に話しかけるからソフィーが困ってますよ」

 フィルっ!  ナイスフォローだわ!!

「ったく、ソフィーちゃんと違ってフィルは可愛げないというか何というか……」

「まったくよ」

「この生意気小僧め!」

 とかなんとかいわれながらも頭をわしゃわしゃされてるし。

「ふふっ」

 フィルもちゃんとクラスのみんなから可愛がられてるようでなによりだわ。

『え~、出場者の皆さん、時間になりましたので訓練場へ入場してください』

「っと!  時間のようね!!
 みんな円陣を組んで!  じゃあ……行くわよっ!  私達の実力を見せつけてやろうじゃないっ!!」

「「「「「「「「「「おぉ~!!」」」」」」」」」」

 むふふっ!  みんなで円陣を組む。
 これぞ青春!  これぞ学園生活って感じだわっ!!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

サキュバスの眷属になったと思ったら世界統一する事になった。〜おっさんから夜王への転身〜

ちょび
ファンタジー
萌渕 優は高校時代柔道部にも所属し数名の友達とわりと充実した高校生活を送っていた。 しかし気付けば大人になり友達とも疎遠になっていた。 「人生何とかなるだろ」 楽観的に考える優であったが32歳現在もフリーターを続けていた。 そしてある日神の手違いで突然死んでしまった結果別の世界に転生する事に! …何故かサキュバスの眷属として……。 転生先は魔法や他種族が存在する世界だった。 名を持つものが強者とされるその世界で新たな名を授かる優。 そして任せられた使命は世界の掌握!? そんな主人公がサキュバス達と世界統一を目指すお話しです。 お気に入りや感想など励みになります! お気軽によろしくお願いいたします! 第13回ファンタジー小説大賞エントリー作品です!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

処理中です...