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第5章 魔王襲来編
87話 王都防衛戦 その5
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「ハァっ!」
爆発音が鳴り響き、真っ赤な炎が迸る。
「バリアード!!」
「風刃っ!!」
渦巻くように風を纏った剣から風の刃が吹き荒れる。
「団長!」
「シッ!!」
バリアードが声を上げるが早いか、イストワール王国騎士団が総騎士団長ネヴィラが炎を纏わせた剣を振るう。
敵の剣を、鎧を……人間よりも遥かに強靭な身体を持つ魔物ですら一刀の元に焼き切って両断する一閃から流れるような連撃を放ち……
「っ!!」
「ふふふ」
目の前に広がる事実に。
全身鎧ですらバターのように両断する剣を指一本で受け止めた存在に。
〝五死〟の1人にして艶殺と恐れられる妖艶な美女、余裕の笑みを浮かべるベロニカにネヴィラが悔しげに息を呑み込み、流れるような流麗な動きが止まる。
「この程度?」
「ふっ、まさか」
険しい面持ちだったネヴィラがフッと笑みを浮かべた瞬間──
「吹き荒れろ!」
ベロニカの足元に魔法陣が光り輝き、巨大な竜巻がベロニカを包み込む。
「まだまだっ!!」
ネヴィラの炎を巻き込んで巨大な炎の竜巻が立ち昇る!
周囲の地面を抉り、焼き焦がす暴威がゆっくりとその勢いを緩め……
「ハァ、ハァ、本当に、嫌になりますね」
「はぁ……あぁ、まったくだ」
炎の竜巻が霧散する中、バリアードが引き攣った苦笑いを浮かべて悪態を吐き、ネヴィラはそれに同意しながらも鋭く前方を見据える。
「この、化け物が」
「ふふっ、褒め言葉と受けとっておくわ」
無傷で軽やかに地面に舞い降りたベロニカが笑みを浮かべる。
「貴女達の息のあった連携はなかなか良かったけど……残念ながら私に通用するレベルではないわ」
「はぁ、はぁ、流石は魔王配下の最高幹部と言うわけか。
こうなっては仕方あるまい……バリアード止めてくれるなよ?」
「団長、まさかっ!?」
ネヴィラがニヤリと好戦的に笑う。
「ふふふ、まだ何か楽しませてくれるのかしら?」
「ベロニカ、1つ忠告しておいてやる」
「忠告?」
「確かに貴様は私達よりも強い。
しかし格上だからと言って油断し、慢心していると足元を掬われる事になるぞ」
「ふふっ、それで? 貴女が私の足元を掬ってくれるの?」
「ふんっ、それともう1つ……ユリアナを、炎姫と謳われたユリアナを鍛え上げた私を甘く見るな!!
バリアードっ!!」
「ったく、どうなっても知りませんよ!!」
振り抜かれたバリアードの剣から放たれた風の斬撃が真っ直ぐベロニカへと飛翔する。
「はぁ、芸がない……っ!」
軽やかに風の斬撃をかわしたベロニカが、自身の周囲を取り囲むように浮かぶ無数の風の刃に息を呑み……
「風刃乱舞」
バリアードが剣を振り下ろすと同時に無数の風の刃が一斉にベロニカに襲い掛かる!
「ふふふ」
ベロニカを切り刻まんと、空間を埋め尽くす無数の風の刃が……一瞬で掻き消えて霧散した。
「ちょっと驚いたけど、こんなモノで私に勝てるとでも思った……」
「いいや、思っていない」
「は……?」
自身の目の前から聞こえてきたその声に。
自身の目に映るその事実に。
余裕の笑みを浮かべていたベロニカから間抜けな声がこぼれ落ち……
「なっ!? これ、は……」
口の端から溢れた赤い血が、自身の胸を抉り貫く真紅の腕から発せられる圧倒的な熱によって蒸発する。
「炎霊化……自身の肉体を炎の化身と化す私の奥の手だ。
全身が炎と化した私に物理攻撃は通用しない」
「ゴフッ! ふふふ、やられたわね。
けど……その炎霊化、そう長くは続かないのでしょう?」
「あぁ」
ジュゥ──!
手が焼けるのも気にせず自身を貫く腕をベロニカが握り締める。
「っ! 貴様!!」
「ふふふ、やっぱり魔力を纏えば触れる事はできるようね。
逃がさないわよ? 貴女が限界を迎えるのが先か、私が死ぬのが先か……」
「我慢比べというわけか……面白い!
ならば! 内側から貴様を燃し尽くしてやるっ!!」
ゴォゥッ!!
凄まじい熱気を放つ炎が立ち上って周囲を地面を焼きこがす!
「っ……!!」
「燃え尽きろっ!!」
──真紅に染まった灼熱の炎がフッと消失し。
「ふふっ、どうやら限界、のようね」
ベロニカが腕を振り上げ……
ボトッ──
腕が地面に落ち、胸に炭化した大穴を開けたベロニカが地面へと崩れ落ちた。
「まさか、この私が、人間に……」
腕と同様にベロニカの身体が崩壊を始めて塵へと変わり──
「貴様の敗因は、格下だと我らを甘く見て油断した事だ」
「ふふっ、言ってくれるわ、ね……」
完全にベロニカの肉体が消失し……それを見届けたネヴィラがその場に崩れ落ちた。
爆発音が鳴り響き、真っ赤な炎が迸る。
「バリアード!!」
「風刃っ!!」
渦巻くように風を纏った剣から風の刃が吹き荒れる。
「団長!」
「シッ!!」
バリアードが声を上げるが早いか、イストワール王国騎士団が総騎士団長ネヴィラが炎を纏わせた剣を振るう。
敵の剣を、鎧を……人間よりも遥かに強靭な身体を持つ魔物ですら一刀の元に焼き切って両断する一閃から流れるような連撃を放ち……
「っ!!」
「ふふふ」
目の前に広がる事実に。
全身鎧ですらバターのように両断する剣を指一本で受け止めた存在に。
〝五死〟の1人にして艶殺と恐れられる妖艶な美女、余裕の笑みを浮かべるベロニカにネヴィラが悔しげに息を呑み込み、流れるような流麗な動きが止まる。
「この程度?」
「ふっ、まさか」
険しい面持ちだったネヴィラがフッと笑みを浮かべた瞬間──
「吹き荒れろ!」
ベロニカの足元に魔法陣が光り輝き、巨大な竜巻がベロニカを包み込む。
「まだまだっ!!」
ネヴィラの炎を巻き込んで巨大な炎の竜巻が立ち昇る!
周囲の地面を抉り、焼き焦がす暴威がゆっくりとその勢いを緩め……
「ハァ、ハァ、本当に、嫌になりますね」
「はぁ……あぁ、まったくだ」
炎の竜巻が霧散する中、バリアードが引き攣った苦笑いを浮かべて悪態を吐き、ネヴィラはそれに同意しながらも鋭く前方を見据える。
「この、化け物が」
「ふふっ、褒め言葉と受けとっておくわ」
無傷で軽やかに地面に舞い降りたベロニカが笑みを浮かべる。
「貴女達の息のあった連携はなかなか良かったけど……残念ながら私に通用するレベルではないわ」
「はぁ、はぁ、流石は魔王配下の最高幹部と言うわけか。
こうなっては仕方あるまい……バリアード止めてくれるなよ?」
「団長、まさかっ!?」
ネヴィラがニヤリと好戦的に笑う。
「ふふふ、まだ何か楽しませてくれるのかしら?」
「ベロニカ、1つ忠告しておいてやる」
「忠告?」
「確かに貴様は私達よりも強い。
しかし格上だからと言って油断し、慢心していると足元を掬われる事になるぞ」
「ふふっ、それで? 貴女が私の足元を掬ってくれるの?」
「ふんっ、それともう1つ……ユリアナを、炎姫と謳われたユリアナを鍛え上げた私を甘く見るな!!
バリアードっ!!」
「ったく、どうなっても知りませんよ!!」
振り抜かれたバリアードの剣から放たれた風の斬撃が真っ直ぐベロニカへと飛翔する。
「はぁ、芸がない……っ!」
軽やかに風の斬撃をかわしたベロニカが、自身の周囲を取り囲むように浮かぶ無数の風の刃に息を呑み……
「風刃乱舞」
バリアードが剣を振り下ろすと同時に無数の風の刃が一斉にベロニカに襲い掛かる!
「ふふふ」
ベロニカを切り刻まんと、空間を埋め尽くす無数の風の刃が……一瞬で掻き消えて霧散した。
「ちょっと驚いたけど、こんなモノで私に勝てるとでも思った……」
「いいや、思っていない」
「は……?」
自身の目の前から聞こえてきたその声に。
自身の目に映るその事実に。
余裕の笑みを浮かべていたベロニカから間抜けな声がこぼれ落ち……
「なっ!? これ、は……」
口の端から溢れた赤い血が、自身の胸を抉り貫く真紅の腕から発せられる圧倒的な熱によって蒸発する。
「炎霊化……自身の肉体を炎の化身と化す私の奥の手だ。
全身が炎と化した私に物理攻撃は通用しない」
「ゴフッ! ふふふ、やられたわね。
けど……その炎霊化、そう長くは続かないのでしょう?」
「あぁ」
ジュゥ──!
手が焼けるのも気にせず自身を貫く腕をベロニカが握り締める。
「っ! 貴様!!」
「ふふふ、やっぱり魔力を纏えば触れる事はできるようね。
逃がさないわよ? 貴女が限界を迎えるのが先か、私が死ぬのが先か……」
「我慢比べというわけか……面白い!
ならば! 内側から貴様を燃し尽くしてやるっ!!」
ゴォゥッ!!
凄まじい熱気を放つ炎が立ち上って周囲を地面を焼きこがす!
「っ……!!」
「燃え尽きろっ!!」
──真紅に染まった灼熱の炎がフッと消失し。
「ふふっ、どうやら限界、のようね」
ベロニカが腕を振り上げ……
ボトッ──
腕が地面に落ち、胸に炭化した大穴を開けたベロニカが地面へと崩れ落ちた。
「まさか、この私が、人間に……」
腕と同様にベロニカの身体が崩壊を始めて塵へと変わり──
「貴様の敗因は、格下だと我らを甘く見て油断した事だ」
「ふふっ、言ってくれるわ、ね……」
完全にベロニカの肉体が消失し……それを見届けたネヴィラがその場に崩れ落ちた。
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