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第5章 魔王襲来編
84話 王都防衛戦 その2
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「バルト、王国騎士団及び魔法師団との連携はどうなっている?」
「騎士団は全六つの騎士団の内、第一から第四までが東西南北それぞれの門へと集結。
残る第五、第六騎士団は王都住民の避難及び警護の任に就いているようです」
「魔法師団の方は?」
「魔法師団は王都全域の広域結界を構築中です。
尤も、マリア様が既に展開なされたようですが」
「あの結界は応急処置みたいなものよ。
有象無象相手ならそれなりに耐えるでしょうけど、相手が〝五死〟クラスならそうもいかないわ。
敵軍の侵攻が始まれば、恐らく保って10分程度、すぐに破られるでしょうから魔法師団には引き続き強固な結界の構築するように言っておいて」
「かしこまりました」
「……バルト、お前の主人はマリア様じゃなくて私だよな?」
「この緊急事態に何をふざけた事を仰いますか! 私の主人は勿論、旦那様でございます」
「そ、そうか……こほん、それで騎士団の副団長……総副団長であるアレス伯爵と総騎士団長ルイーザ公はどちらに?」
「ここだ!」
堂々とした足取りで騎士達の闘志が充満した訓練場に、王国騎士団総副団長であるアレス伯爵を引き連れ姿を表したのは……真っ赤な燃えるような美しい髪に真紅の瞳をした人物。
「久しいな、ヴェルト公。
我が義弟よ」
特注品である赤い騎士団の制服を身に纏い、炎のような覇気を纏った美女。
王国騎士団が総騎士団長ルイーザ公爵、ネヴィラ・ルイーザが笑みを浮かべた。
「義弟……ネヴィラ・ルイーザ公爵。
何度も言っておりますが、王姉である貴女とユリアナは従姉妹であって姉妹ではないでしょう?」
「こちらこそ何度も言っている。
たとえ従姉妹だろうと、そんな事は関係なしに私はユリアナの姉であり、妹であるユリアナの夫である貴様は我が義弟だと!!」
「……はぁ、何で私の周りはこうもキャラが濃いというか、変わった人ばかりなのだろうか?」
「貴方も相当ですけどね」
「ん? バルト、今何か言ったか?」
「いえ」
「それで、私の可愛い姪っ子ソフィーはどこだ?
ソフィーはAランク冒険者になるほどに強いとはいえ、まだ10歳の子供。
しっかりと守っているのだろうな?」
「それがソフィーは……ルイーザ公、今何と?」
「ん? だからソフィーの事はちゃんと守っているのかと」
「そうではなくて! 何故貴女がソフィーが冒険者になった事を知っているのですかっ!?
アレス殿!!」
「私は何も!」
「はっはっはっ!」
ヴェルトに話を振られたアレス伯爵が焦ったように首を張り、総騎士団長ルイーザ公爵が楽し気に笑う。
「あれだけ話題になっているならば私もそれなりに調べもする。
尤も、幾ら仮面で顔を隠そうと、Sランク冒険者〝剣帝〟と今やAランク冒険者でもある賢者に付き添われて現れた銀の髪のソフィーと名乗る美少女とくれば調べるまでもなくわかったがな!」
「……ご明察です。
幾ら話題になってもAランク冒険者と公爵令嬢を結びつける者はそうそういないと踏んでいたのですけどね」
「まぁ、安心しろ。
私はユリアナの件も知っていたからすぐにソフィーだと確信できたが、普通ならば話題のAランク冒険者の正体が公爵令嬢だと考える者はそうはいないだろうからな。
それで、私の可愛い姪っ子ソフィーは?」
「ソフィーは……ソフィーは! 自らの意思でユリアナ達と共に魔王ナルダバートの元へ向かってしまったっ!!」
独白のようにヴェルトが言い放った言葉を受けて微動だにせずに整列していたルスキューレ公爵家の私設騎士達の間に響めきが走り、ルイーザ公爵が目を見開く。
「なっ!? ソフィーは無事なのかっ!?」
「そんなの私が聞きたいですよっ!!」
「と、とりあえず落ち着け!!
ユリアナ達もいる事だし……ここは大丈夫だと信じるしかない。
今から教会に行って一緒にソフィーの無事を願って祈りを……」
「総騎士団長、ルスキューレ公。
申し訳ありませんが、今は緊急事態ですので……」
「あ、あぁ、そうだったな。
すまない、少し取り乱してしまった」
「そうだな……ソフィーの無事を願うのは当然だが、ソフィーの帰ってくる場所を守らねば!
ルイーザ公、今の状況はどこまでご存知で?」
「この屋敷であった事ならばバルトから大方聞いている」
「なら話が早い、四方で軍を率いている残り4人の〝五死〟の内3名を我らが受け持ちます。
ルイーザ公、王国騎士団の精鋭で残りの一角をお任せしたい」
「あぁ、任せろ!」
「じゃあ私は東を担当するわ」
「それじゃあ私は西を」
「では、我らルスキューレ家で北を」
「私達で南だな。
っと、緊急時ゆえ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
ご無沙汰しております、大賢者であらせられるマリア様と現人神と称される皇帝陛下がお力をお貸ししてくだされるとなれば心強いです」
「ふふっ、気にしないで。
可愛いソフィーちゃんのためだもの」
「まっ、任せておいて」
「そ、総騎士団長? 今何と……」
「じゃあ、転移させるわよ」
次の瞬間……ルスキューレ公爵邸の訓練場にいた全ての人物の姿が掻き消えた。
「騎士団は全六つの騎士団の内、第一から第四までが東西南北それぞれの門へと集結。
残る第五、第六騎士団は王都住民の避難及び警護の任に就いているようです」
「魔法師団の方は?」
「魔法師団は王都全域の広域結界を構築中です。
尤も、マリア様が既に展開なされたようですが」
「あの結界は応急処置みたいなものよ。
有象無象相手ならそれなりに耐えるでしょうけど、相手が〝五死〟クラスならそうもいかないわ。
敵軍の侵攻が始まれば、恐らく保って10分程度、すぐに破られるでしょうから魔法師団には引き続き強固な結界の構築するように言っておいて」
「かしこまりました」
「……バルト、お前の主人はマリア様じゃなくて私だよな?」
「この緊急事態に何をふざけた事を仰いますか! 私の主人は勿論、旦那様でございます」
「そ、そうか……こほん、それで騎士団の副団長……総副団長であるアレス伯爵と総騎士団長ルイーザ公はどちらに?」
「ここだ!」
堂々とした足取りで騎士達の闘志が充満した訓練場に、王国騎士団総副団長であるアレス伯爵を引き連れ姿を表したのは……真っ赤な燃えるような美しい髪に真紅の瞳をした人物。
「久しいな、ヴェルト公。
我が義弟よ」
特注品である赤い騎士団の制服を身に纏い、炎のような覇気を纏った美女。
王国騎士団が総騎士団長ルイーザ公爵、ネヴィラ・ルイーザが笑みを浮かべた。
「義弟……ネヴィラ・ルイーザ公爵。
何度も言っておりますが、王姉である貴女とユリアナは従姉妹であって姉妹ではないでしょう?」
「こちらこそ何度も言っている。
たとえ従姉妹だろうと、そんな事は関係なしに私はユリアナの姉であり、妹であるユリアナの夫である貴様は我が義弟だと!!」
「……はぁ、何で私の周りはこうもキャラが濃いというか、変わった人ばかりなのだろうか?」
「貴方も相当ですけどね」
「ん? バルト、今何か言ったか?」
「いえ」
「それで、私の可愛い姪っ子ソフィーはどこだ?
ソフィーはAランク冒険者になるほどに強いとはいえ、まだ10歳の子供。
しっかりと守っているのだろうな?」
「それがソフィーは……ルイーザ公、今何と?」
「ん? だからソフィーの事はちゃんと守っているのかと」
「そうではなくて! 何故貴女がソフィーが冒険者になった事を知っているのですかっ!?
アレス殿!!」
「私は何も!」
「はっはっはっ!」
ヴェルトに話を振られたアレス伯爵が焦ったように首を張り、総騎士団長ルイーザ公爵が楽し気に笑う。
「あれだけ話題になっているならば私もそれなりに調べもする。
尤も、幾ら仮面で顔を隠そうと、Sランク冒険者〝剣帝〟と今やAランク冒険者でもある賢者に付き添われて現れた銀の髪のソフィーと名乗る美少女とくれば調べるまでもなくわかったがな!」
「……ご明察です。
幾ら話題になってもAランク冒険者と公爵令嬢を結びつける者はそうそういないと踏んでいたのですけどね」
「まぁ、安心しろ。
私はユリアナの件も知っていたからすぐにソフィーだと確信できたが、普通ならば話題のAランク冒険者の正体が公爵令嬢だと考える者はそうはいないだろうからな。
それで、私の可愛い姪っ子ソフィーは?」
「ソフィーは……ソフィーは! 自らの意思でユリアナ達と共に魔王ナルダバートの元へ向かってしまったっ!!」
独白のようにヴェルトが言い放った言葉を受けて微動だにせずに整列していたルスキューレ公爵家の私設騎士達の間に響めきが走り、ルイーザ公爵が目を見開く。
「なっ!? ソフィーは無事なのかっ!?」
「そんなの私が聞きたいですよっ!!」
「と、とりあえず落ち着け!!
ユリアナ達もいる事だし……ここは大丈夫だと信じるしかない。
今から教会に行って一緒にソフィーの無事を願って祈りを……」
「総騎士団長、ルスキューレ公。
申し訳ありませんが、今は緊急事態ですので……」
「あ、あぁ、そうだったな。
すまない、少し取り乱してしまった」
「そうだな……ソフィーの無事を願うのは当然だが、ソフィーの帰ってくる場所を守らねば!
ルイーザ公、今の状況はどこまでご存知で?」
「この屋敷であった事ならばバルトから大方聞いている」
「なら話が早い、四方で軍を率いている残り4人の〝五死〟の内3名を我らが受け持ちます。
ルイーザ公、王国騎士団の精鋭で残りの一角をお任せしたい」
「あぁ、任せろ!」
「じゃあ私は東を担当するわ」
「それじゃあ私は西を」
「では、我らルスキューレ家で北を」
「私達で南だな。
っと、緊急時ゆえ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
ご無沙汰しております、大賢者であらせられるマリア様と現人神と称される皇帝陛下がお力をお貸ししてくだされるとなれば心強いです」
「ふふっ、気にしないで。
可愛いソフィーちゃんのためだもの」
「まっ、任せておいて」
「そ、総騎士団長? 今何と……」
「じゃあ、転移させるわよ」
次の瞬間……ルスキューレ公爵邸の訓練場にいた全ての人物の姿が掻き消えた。
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