上 下
71 / 460
第5章 魔王襲来編

71話 忠告するよ

しおりを挟む
 これはいったい……なんでマリア先生達が我が家に?
 今日はマリア先生の授業がある日じゃないし。
 ガルスさんは昨日私が断念した迷宮ダンジョン〝魔法神の休息所〟の第二階層以降の攻略をしていたはず。

 そしてなにより……四大国の一角にして、隣国レフィア神聖王国と双璧をなす超大国と称される帝国の君主!!
 現人神と呼ばれる皇帝陛下がなぜここにっ!?
 と、とりあえずお母様達に紹介して……

「皆様、ようこそお越しくださいました。
 どうぞ、お好きにお掛けになってください」

「あはは、お久しぶりです、ルスキューレ公爵夫人」

「ふふ、お久しぶりですね、現人神様?」

「そ、その呼び名はやめて欲しいんですけど……」

 あ、あれ?  なんかめっちゃ普通に会話してる??

「ソフィーに、アルト、エレンも久しぶりだね」

「えぇ、お久しぶりです」

「どうも」

 えっ?  えっ!?  なんでそんなに普通に挨拶できるのっ!!
 もしかして、マリア先生達が突然現れて驚いてるのって私だけっ!?

「えっと、あの……お、お久しぶりぃっ!?」

「ダメよ、ソフィーちゃん」

 こ、これはっ!  さっきまでお母様の膝の上に座らされてたはずなのに、気がついたらマリア先生に抱っこされてるっ!?
 こ、この私に一切悟らせることも、なんの予備動作もなく強制転移させるとは……さすがは伝説に謳われる大賢者。

「あの男はロリコンの変態だから気をつけなさい」

「ぇっ……」

「ちょっ!  本当にやめてくださいよ!!
 ソフィーが信じたらどうするんですか!」

「あら、事実じゃない。
 帝国守護の五姫と名高い貴方の妃達の中には……」

「誤解です!  言っておきますが、私の妻は全員が成人していますからねっ!?」

「そうよ、ソフィー。
 マリア……の言う通り、この変態皇帝にはあまり近づいたらダメよ?」

 ルミエ様まで……そういえば、初めて会った1ヶ月前にもロリコンがどうとかってやり取りをしてた。
 ルミエ様と皇帝陛下は旧知の仲みたいだし、冗談をいってるだけだと思ってたけど、まさか……

「こ、こほん!」

 いやいやいや!  たとえ、たとえ!  もし仮にそうだったとしても別になにも問題はない!!

「せ、性癖は人それぞれだと思います!
 皇帝陛下の性癖が、ろ、ろろろろロリコンだったとしても!  別に私は気にしま……せん」

「ソフィー……どうしてくれるんですか!
 これ、もう完全にロリコンだと思われてるじゃないですか!!」

「はっはっはっ、まぁまぁ落ち着いて。
 いくら帝国の皇帝と言えど……ふんっ、勝手に我らの天使に近づいて愛称で呼んだ罰ですよ」

「ヴェルト……愛娘を溺愛するのはわかるけど、度が過ぎると嫌われるよ?」

「っ!!  なん、だと……」

 私に勘違いされたって落ち込む皇帝陛下を見て、なぜか嬉しそうに鼻で笑ったお父様が逆に撃沈されてしまった……
 というか!  別に私は勘違いなんて……

「はっ!!」

 なるほど、そういうことか!
 超大国が片割れである帝国の頂点に君臨し、現人神と呼び称えられる皇帝陛下の性癖がロ……ロリコンだなんて世間にバレちゃったらまずいもんね。

 そりゃあいくら私にバレにちゃったからと。
 この場には皇帝陛下の性癖を知っている者しかいないとはいえ、おいそれと認めるわけにはいかないってわけだ!!
 う~ん、仕方ない!  帝国との関係を悪化させるわけにはいかないし、ここは私も皇帝陛下の意図を汲んであげないと!!

「また何か、非常にややこしい勘違いをされている気がするんだけど……」

「まっ、アイツらに目をつけられたのが運の尽きだな。
 俺もルミエに変態呼ばわりされたからお前の気持ちはよくわかるぞ、ロリコン皇帝」

「ロリコン、皇帝……ガ、ガルスさん?  いったい何を……」

「もう!  ガルスさん、そんなにハッキリといったらダメですよ!!
 たとえ事実であろうとも、明言しないのがマナーなのです」

「……はぁ、もう良いですよ。
 そんな事より、早く魔王ナルダバートを迎え撃つにあたっての打ち合わせを始めましょう……と、言いたいところですが」

「あぁ、マリア」

「当然、わかってるわよ」

 まっ、私が気づいてるんだからこの御三方は気がついていて当然だよね。


 パチンっ!


「っ!」

 すごいっ!  マリア先生が何気なく指を鳴らした瞬間。
 一瞬で広大な公爵邸を覆い尽くす程の結界が展開された上に、再びお母様の膝の上に移動させられたっ!!

「ソフィーちゃん達はそこで見ていてね。
 アルト、エレン、ちゃんとソフィーちゃんとユリアナを守るのよ?」

「もちろんです」

「当然!」

「えっ?  私は……」

「さて、これでもう逃げられないわよ」

 おぉぅ、お父様の訴えの呟きが華麗にスルーされた。
 さすがにちょっと可哀想だから、あとで慰めてあげよう。

「んじゃあ、まぁ……始めるとするか」

「隠れていても無駄だよ。
 もう既にバレてるんだから、素直に出てきた方が良いと忠告するよ、ネズミさん」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

サキュバスの眷属になったと思ったら世界統一する事になった。〜おっさんから夜王への転身〜

ちょび
ファンタジー
萌渕 優は高校時代柔道部にも所属し数名の友達とわりと充実した高校生活を送っていた。 しかし気付けば大人になり友達とも疎遠になっていた。 「人生何とかなるだろ」 楽観的に考える優であったが32歳現在もフリーターを続けていた。 そしてある日神の手違いで突然死んでしまった結果別の世界に転生する事に! …何故かサキュバスの眷属として……。 転生先は魔法や他種族が存在する世界だった。 名を持つものが強者とされるその世界で新たな名を授かる優。 そして任せられた使命は世界の掌握!? そんな主人公がサキュバス達と世界統一を目指すお話しです。 お気に入りや感想など励みになります! お気軽によろしくお願いいたします! 第13回ファンタジー小説大賞エントリー作品です!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

処理中です...