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第2章 ギルド登録編

30話 お初にお目にかかります!

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「むぅ」

『ソフィー、そんなに拗ねないの。
 せっかくの可愛い顔が台無しよ?  いや、むすっとしてるソフィーも可愛いけど』

 もう!  ルミエ様、揶揄わないでください!!
 私は近い将来、月の女神と称されることになる悪役令嬢ソフィア・ルスキューレ。

 ルスキューレ家のみんなは優しいから私のことを可愛いっていってくれるけど、本来私は可愛らしさとは無縁な見る者に冷たい印象を抱かせる容姿をしているのだ。
 そんな私のむすっとした顔が可愛いなんてことがあるハズがない。

「ソ、ソフィー?  ほら、そんな怒った顔をしないで」

「ふんっ!」

 その通り!  私は怒っているのだ!!

「ッ──!!」

 まさか、冒険者達に注目されてる中で子供みたいに抱っこされることになるなんて……これでもう、私の威厳は地に落ちたようなものなんだから!!
 もう今日1日はアルトお兄様とは口を聞いてあげない!!

「ソ、ソフィー……ソフィーに、ソフィーに、嫌われてしまった……」

「アルト兄さん……」

 えっ!?  た、確かに怒ってはいるけど、別に嫌いになっては……ど、どどどどうすればっ!?

「でも……ほっぺを膨らませてるソフィーも可愛いっ!!」

「もう!  抱きしめたいっ!!」

「……」

 うん、うちのお兄様達は残念なお兄様達だった。
 私のせいで落ち込ませちゃったかも!  とか、謝った方がいいかな?  とか心配するだけ無駄だった!!

「うぅ~」

 というか!  恥ずかしいから、人前ではしゃがないでくださいっ!!
 こんなハズじゃなかったのに……本当なら今頃、三下冒険者を圧倒してドヤってるハズだったのに……

『ふふふ、ソフィー』

 ルミエ様?

『貴女の兄達は名の知れた冒険者なんでしょう?』

 ふふん!  その通りです!!
 エレンお兄様は世界でも現在は10人ほどいないっていわれてるSランク冒険者の1人!  〝剣帝〟と称される超凄いお兄様なのです!!

 そしてアルトお兄様は史上最年少の15歳で賢者となり!
 今では私の修行に付き合うついでに冒険者登録を行なって、片手間にも関わらずこの5年間でAランクまで上り詰めた超凄いお兄様なのですっ!

『ふふ、そんな凄いお兄様達と一緒にギルドに出向いたんだからギルドの人間が出迎えるのは当然じゃないかしら?』

「っ!!」

 た、確かにいわれてみればルミエ様のいう通りかも。
 というか、お兄様達と一緒にいる私に絡んでくる三下冒険者なんてそもそもいなかったんじゃ……

『そう言う事。
 だから最初から三下冒険者に絡まれるイベントは発生し得なかったのよ』

 そ、そんなっ……私の優雅で華麗で、カッコいい冒険者ギルドデビューが!

『尤も、ソフィーをギルドに連れてくるってなると、この2人が事前にギルドに連絡してないハズがないんだけど』

 むっ?  ルミエ様、今何かいいましたか?

『いや、何でもないわ』

 そうですか。
 うぅ、しかし、まさか最初から私の冒険者ギルドデビュー計画が破綻してたなんてっ!
 せっかく気合を入れて意気込んで来たのに……

「ほらソフィー、お菓子だよ。
 はい、あ~ん」

「ジュースも飲むか?」

 う、うざい!
 ちょっと落ち込んでるのに……はぁ、全くお兄様達ったら。

「あの……そろそろいいでしょうか?
 こう言っては何ですけど、私も一応ギルドマスターなので暇ではないのですが……」

 っと!  私としたことが、三下冒険者が絡んでくるテンプレイベントの消滅に、人前でアルトお兄様に抱っこされてギルドマスターの部屋まで運ばれたせいでご挨拶するのを忘れてた!!

「こほん、お初にお目にかかります!
 私はソフィア・ルスキューレ、いずれ最強になる者ですっ!!」
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