上 下
26 / 460
第2章 ギルド登録編

26話 2人のお客様

しおりを挟む
 お兄様達から出された最終試験。
 冒険者ギルドによってS級危険領域に指定された、世界でも有数の危険地帯である魔の森を横断して帝国までたどり着く。

 その試験を優雅に余裕でクリア!
 白竜王であるルミエ様とお友達になったり、皇帝陛下と対面したりと色々あったあの日から1ヶ月。

 今日はソフィア・ルスキューレこと、私の10歳の誕生日!!
 お兄様達の最終試験も無事に突破して、あとは冒険者登録ができる10歳になるのを心待ちにしてた私はそれはもうウキウキした気分で朝を迎えた。

 朝はいつも通りお兄様達と修行して、今日こそはお兄様達に勝利を収め!
 お昼からはお兄様達と一緒に王都の冒険者ギルドに行って、冒険者登録をおこない念願だった冒険者になる!!  ハズだったのに……

「つ、疲れた……」

 現在、時刻はお昼過ぎ。

「ふぃ~」

 体の力を抜いて倒れ込むと、しっかりと全身を受け止めてくれる我がベッド様!  素敵です!  結婚してくださいっ!!
 本当なら公爵令嬢としてベッドにダイブなんて怒られるけど……ファナは軽食を取りに行ってて今この部屋にいるのは私だけだから問題ない!!

『あら、私はいるわよ?』

「っ!?  こ、この声はっ!」

『ふふっ』

「ルミエ様っ!?」

 いったいどこに!
 いや、それ以前に私の部屋がいくら広いといってもさすがにルミエ様が私の部屋に入れるハズが……

『久しぶりね、ソフィー』

「っ──!!」

 私のベッドの上。
 思わず飛び上がって部屋の中を見渡す私の目の前に!  ちょこんって!!
 ちょこんって座る猫ちゃんサイズの!  子猫のような白いドラゴンがぁっ!!

「か、可愛いっ!!」

『ぶへっ!?』

 あぁ~!  何これ!?
 めっちゃ可愛いんですけどっ!!

『く、苦しい……潰れるぅ~!!
 ソ、ソフィー、離して……』

「ハッ!?  ご、ごめんなさい!!
 ルミエ様が可愛いかったからつい……」

『すぅ~、はぁ~……全く、やっぱり貴女もルスキューレ家の一員ね』

「?」

 どういうことだろ?
 私は正真正銘、お父様とお母様の。
 ヴェルト・ルスキューレとユリアナ・ルスキューレの子供だからルスキューレ家の一員なのは当然だけど。

『しかし……弱体化しているとはいえ、まさかこの私にダメージを与えるなんて。
 流石はソフィーね』

「弱体化?」

『ええ、本来の私の力は強大すぎるの。
 人間の都市なんて簡単に更地になるし、私の圧に当てられただけで常人なら死に至るわ』

 おぉう、それはなんといいますか……

「すごいですね」

 さすがは竜王たるルミエ様!
 最強の種族、竜種ドラゴンの頂点に君臨する竜王の名前は伊達じゃない!!

『ソフィー、勘違いしてるわよ?』

「勘違い?」

『力を抑えて弱体化したのが、いつもの竜王としての姿なのよ』

「えっ……」

 ちょ、ちょっと待って。
 滅多に人前に姿を見せない竜種の中でも、竜王っていえば伝説に語られるような存在のハズ。
 これは竜種について調べたから間違いない。
 そんな竜王が……本来の力を抑えて弱体化した姿?

『今は普段の弱体化から、このサイズまで縮小化した事でさらに弱体化してるのよ。
 まぁ、それでも普通は私にダメージを与えるなんて不可能なんだけどね』

「ほぇ~」

『そんな私に僅かとは言え、ダメージを与えるなんてソフィーは凄いわ!
 まっ、そんな訳だから私を抱きしめるなら力を込めすぎないように注意してね?』

「わ、わかりました!」

 まぁ、ぶっちゃけまだルミエ様のいってることが飲み込めなくて混乱してるけど。
 猫ちゃんサイズの超絶可愛いルミエ様を抱っこできるのなら、この際細かいことは別にいいや。
 私がとやかく考えたところでどうにもならないし、ルミエ様はやっぱりすごいってことだな、うんうん!

「あっ、そういえばどうしてここに?
 用事はもういいのですか?」

 1ヶ月前。
 私がお兄様達と一緒にイストワール王国に戻る時に、ちょっと用事ができたっていってたけど……

『あぁ……まぁ、その用事なら終わったわ。
 そして、私がここにいるのは当然!  ソフィーのお誕生日を祝うためよ!!』

「っ!!」

『ふふっ、ソフィー。
 10歳のお誕生日、おめでとう』

「あ、ありがとうございます!」

 これはもう抱きしめてもいいのかな?


「っ──!  お止まりください!  いくら殿下でもこのような事っ!!」


「……」

 せっかくいい気分だったのに。

「ルミエ様」

『問題ないわ。
 私の姿は私が認めた者にしか見えないから』


 バンっ!!


 突然扉が開け放たれる。

「あぁ、ソフィア嬢!  会いたかったですよ!!」

 ノックもなしに私の部屋に押し入ってきた男。
 不本意ながら私の婚約者であるセドリック・エル・イストワールが笑顔を浮かべてそう言い放った。

「ご機嫌よう、セドリック第一王子殿下」

 私はまったく、これっぽっちも会いたくなかったけどな!!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

処理中です...