上 下
19 / 460
第1章 幼少期編

19話 竜がいたっ!!

しおりを挟む
 魔の森を走ること約2時間。

「ふんふんふ~ん……ほっ!」

 剣を振るって襲い掛かってくる魔物を斬る。

「るんるんる~ん……はっ!」

 魔法を放って襲い掛かってくる魔物を吹っ飛ばす。

「ふぅ~」

 鼻歌を歌いながら、休むことなくここまで走り続けて来たわけだけど。
 まさかほとんど休む間もなく数分ごとに次々と魔物に襲われることになるとは…… さすがは冒険者ギルドが定めるS級危険領域!

 うんうん、人が安易に足を踏み入れたらダメな魔境と呼ばれるだけのことはあるわ。
 まっ!  私にはこの程度なら余裕だけど!!
 亜空間に放り込んでる魔物の数ももう279体だし。

「ふふん!」

 とはいえ……お兄様達の授業で習った話によると、森の中心部に近づけば近づくほど強大な魔物が生息してるらしいし。
 そろそろ気を引き締めていかないと!

「よし!」


 パシッ!


「……痛い」

 気合を入れるために自分のほっぺを叩くのはよく見るシーンだけど……結構、痛かった……

「シャァァッ!!」

「よっ!」

 背後から飛び掛かってきた全長10メートルはある大蛇を回転して避けて、そのまま首を落とす。

「これで280体目っと!」

 まぁ、お兄様達に出された最終試験はこの魔の森を踏破して反対側にある超大国。
 帝国までたどり着くことだから、倒した魔物の数なんてカウントしてても関係ないんだけど。

「さてと!  じゃあ行きますか!!」

 むふふ!  エレンお兄様の話では、この森を横断するのに私の足でも3日程はかかるっていってたけど。
 1日で走破してやるっ!!

「にゅふふっ!」

 帝国の冒険者ギルドで待っているお兄様達の驚く顔が楽しみだわ!!

「ガルゥゥッ!!」

 炎を全身に纏った巨大な虎。

「ガァッ!!」

 羽ばたき1つで暴風を操る怪鳥。

「グォォッ!!」

 魔法を使ってくる大樹。

「ふふふ!  さぁ、魔物共よ!  かかってくるがいい!!
 そして、私の力を思い知れっ!!」

 襲い掛かってくる魔物達を優雅に、されど力強く圧倒しながらS級危険領域の魔の森を疾駆する!
 ここまで結構良いペースで来てるし。
 そろそろ、森の深層に入る頃だと思うんだけど……

「ん?」

 おかしい。
 魔法を使う大樹、エルダートレントを討伐してから、かれこれ10分ほどは走ってるのに一向に魔物に襲われない。

 まぁ、森の中心部……深層に行けば行くほど、強大な魔物が生息していて、それに比例して個体数は少なくなるらしいし。
 おかげでかなりの速度で進めてるし、襲われない方が楽だから良いんだけど。

「ふむ」

 ここは冒険者ギルドが定めたS級危険領域。
 そんな魔の森を10分間も走っていて、魔物に襲われるどころか、1匹も魔物を見ないなんて有り得ない。

「う~ん」

 私を中心に半径200メートルの範囲に展開している魔力感知にも一切魔物の反応がないし。
 これはいったい……よし、ちょっと魔力感知の範囲を広げて……

「っ!!」

 私の前方約500メートル。
 魔力感知の端にあったこの反応!
 全身の毛が逆立つようなこの感じ……

「これが原因か!」

 つまりは、この反応の持ち主が原因で周囲の魔物達が逃げてたから魔物に遭遇しなかったってわけだ。
 魔の森の深層にいる魔物達が逃げ出すって……

「まぁ、この巨大な魔力なら仕方ないかもだけど」

 私も鳥肌が止まらないし。
 なんていうか……本能が逃げろって、これ以上は近づくなって叫んでる感じがする。
 けど……

「ふふっ!  面白い!!
 行ってやろうじゃない!」

 この先にいる存在は確実に今の私よりも圧倒的な格上。
 本当ならここは逃げるのが正解なんだろうけど…… 私はいずれ最強に至る存在!!

 今ここで逃げるわけにはいかないっ!
 敵が今の私よりも圧倒的な力を持つ格上なんだったら、私は今!  この場所で限界を超えてやるわ!!

「ふぅ~」

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。
 まぁ、どっちでもここが私にとって最初の死線であることには違いないんだけど……いざ!

「おぉ~」

 なるほど。
 そりゃあ深層の魔物達が逃げ出すわけだわ……

『ふふふ、逃げずに私の元まで来るとは。
 よく来たな、人間の娘よ』

 白く輝くような鱗に、巨大な翼。
 圧倒的な力の圧に、どこか神聖さすら感じさせる不思議な雰囲気。
 なんか綺麗で美しい真っ白なドラゴンがいたっ!!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

“絶対悪”の暗黒龍

alunam
ファンタジー
暗黒龍に転生した俺、今日も女勇者とキャッキャウフフ(?)した帰りにオークにからまれた幼女と出会う。  幼女と最強ドラゴンの異世界交流に趣味全開の要素をプラスして書いていきます。  似たような主人公の似たような短編書きました こちらもよろしくお願いします  オールカンストキャラシート作ったら、そのキャラが現実の俺になりました!~ダイスの女神と俺のデタラメTRPG~  http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/402051674/

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

処理中です...