9 / 11
第一章
オレがこの世界に呼んだ
しおりを挟むダンテはアンナが抱えた花束ごと、彼女の身体を抱き締めていた。
「アンナ………。それは、君の心からの気持ちかい?………遠慮はいらない。私は君の本心が知りたい」
「そんなの、当たり前じゃないですか………っ!私がどんな気持ちで………っ」
縋り付くように彼の胸に頬を寄せて、悲鳴に近い声を上げたその途端、大きく温かい掌に強い力が込められるのが分かった。
「………すまない………。私は、それが何よりも不安だったんだ…………」
ダンテの体温で、抱えた花束から芳しい花の香りが立ち昇る。
「それならばもう、遠慮なんてしない。
あなたでないと………駄目なんだ。寝ても覚めても、君のその陽だまりのように温かな笑顔が頭から離れない。君の事を思い浮かべるだけで、心が満たされるんだ………。アンナ、君を心から愛している。私は運命だとか、そういうものは信じていなかったけれど………君こそが私の運命の人だ」
耳元で囁かれた言葉に、アンナは身体が芯から震えるのが解った。
悲しくないのに、自然と涙が溢れてきて、アンナは手にしていた花束に思わず顔を埋めた。
「………ダンテ様………。私はダンテ様のお側にいても、いいんですか………っ?」
「ああ、もちろんだ。………いや、違うな」
ダンテは少し考えてから、にやりと笑った。
「アンナ。君にはずっと、私の側にいて欲しい。君のその何よりも美しい笑顔を、ずっと私に向けてくれ。………これが正解だろう?」
「ダンテ様…………」
感極まったようにアンナが言葉を詰まらせると、ダンテは何かを促すようにアンナをじっと見つめた。
「………私も、愛しております…………」
少し気恥ずかしそうに、けれど今までのどんなものとも違う表情を浮かべながらふわりと微笑んだアンナに、ダンテは大きな身体を屈めると、彼女の唇にそっと口付けを落とした。
それはまるで羽根で撫でるような、優しい口付けだったが、アンナはたったそれだけで全身の血管が沸騰するような感覚を覚えた。
それは長い間感じていた躊躇いも、劣等感すらもどうでもいいと思えるくらいの、目眩がする程幸せな瞬間だった。
秋の陽射しが美しく煌めき、風と鳥たちの囀りがさざめき立つ。
まるでこの世の全てが彩り豊かに輝き出したのかのように、美しく映る。
愛しい人と思いが通じ合うというのは何て素晴らしく、何と幸福なのだろう。
クラリーチェやリディアが、いつも幸せそうに見えるのはそのせいなのかもしれないとアンナはダンテの腕の中で考えた。
「アンナ………。それは、君の心からの気持ちかい?………遠慮はいらない。私は君の本心が知りたい」
「そんなの、当たり前じゃないですか………っ!私がどんな気持ちで………っ」
縋り付くように彼の胸に頬を寄せて、悲鳴に近い声を上げたその途端、大きく温かい掌に強い力が込められるのが分かった。
「………すまない………。私は、それが何よりも不安だったんだ…………」
ダンテの体温で、抱えた花束から芳しい花の香りが立ち昇る。
「それならばもう、遠慮なんてしない。
あなたでないと………駄目なんだ。寝ても覚めても、君のその陽だまりのように温かな笑顔が頭から離れない。君の事を思い浮かべるだけで、心が満たされるんだ………。アンナ、君を心から愛している。私は運命だとか、そういうものは信じていなかったけれど………君こそが私の運命の人だ」
耳元で囁かれた言葉に、アンナは身体が芯から震えるのが解った。
悲しくないのに、自然と涙が溢れてきて、アンナは手にしていた花束に思わず顔を埋めた。
「………ダンテ様………。私はダンテ様のお側にいても、いいんですか………っ?」
「ああ、もちろんだ。………いや、違うな」
ダンテは少し考えてから、にやりと笑った。
「アンナ。君にはずっと、私の側にいて欲しい。君のその何よりも美しい笑顔を、ずっと私に向けてくれ。………これが正解だろう?」
「ダンテ様…………」
感極まったようにアンナが言葉を詰まらせると、ダンテは何かを促すようにアンナをじっと見つめた。
「………私も、愛しております…………」
少し気恥ずかしそうに、けれど今までのどんなものとも違う表情を浮かべながらふわりと微笑んだアンナに、ダンテは大きな身体を屈めると、彼女の唇にそっと口付けを落とした。
それはまるで羽根で撫でるような、優しい口付けだったが、アンナはたったそれだけで全身の血管が沸騰するような感覚を覚えた。
それは長い間感じていた躊躇いも、劣等感すらもどうでもいいと思えるくらいの、目眩がする程幸せな瞬間だった。
秋の陽射しが美しく煌めき、風と鳥たちの囀りがさざめき立つ。
まるでこの世の全てが彩り豊かに輝き出したのかのように、美しく映る。
愛しい人と思いが通じ合うというのは何て素晴らしく、何と幸福なのだろう。
クラリーチェやリディアが、いつも幸せそうに見えるのはそのせいなのかもしれないとアンナはダンテの腕の中で考えた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる