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【Extra Secret】あなたは知らない
Epilogue ④
しおりを挟む——はあぁ……っ⁉︎
高木は思わず、がばっ、と顔を上げた。七瀬の魅惑的な切れ長の目と合う。
「……今、なんて言った?」
自然と、声が掠れていた。
「あら、知らなかったの?庁内の女子職員たちがウワサしていたのよ。『あの二人は絶対に怪しい』って」
——なんだと? 僕と諒志さんが?
「正直言うとね、わたしもちょっと思ってたの。だって、あの人造人間の田中が、真澄くんにはすっかり心を許しちゃってるんだもん」
高木は固まったまま、声も出なかった。
「七海が真澄くんと『恋敵』になってしまうんじゃないか、って勘繰ったりしたこともあったわ。だって、もし田中の好みのタイプが真澄くんのような人だったら、七海とは正反対でしょ?いったい、どういうつもりで田中は七海とお見合いしたのかしら、って怪訝に思ったりもしたわ」
高木の背筋にゾゾゾッと悪寒が走った。田中が聞いたとしても、きっと同じ反応をするに違いない。
「実は今でもね……いつも庁内で一緒にいる姿を見てるとね、ちょっと妬けちゃうんだ。なんだか、間に入っていけない雰囲気もあるし。七海はいいよね。会社が違うから、そんな二人の姿を見ずに済んで……」
七瀬は頬を赤らめて「告白」した。
いつか言おうと思っていて、今やっと告げられたのだ。もちろん「杞憂」であることはわかってはいるのだが……
「——そうですか」
二人が身も心も通い合わせて以来、遣われていなかった高木の「敬語」を、七瀬はひさしぶりに耳にする。
「真澄くん?」
七瀬をまっすぐ見つめる高木の瞳には、なぜか不穏なまでの妖艶さが宿っていた。
「では……思い知っていただかないといけませんね。男女問わず、僕がどれだけあなた以外には興味がないか、ということを……」
——ったく、この女は。僕がどんな思いで策略を張り巡らせて、あなたをこの手にしたのか、まるで気づいていない。
「えっと……今日は、式場の日取りの候補を決めるんだったよね?それと、もうすぐ真澄くんのご両親が一時帰国されるから、結納の件も併せて……」
高木の両親は華山院のヨーロッパの拠点であるフランス支部を任され、海外での「Kado KAZANIN」の普及活動に勤しんでいた。
もともと高木の父は、流派に受け継がれた「伝統」に囚われない斬新な生け方であったため、フラワーアレンジメントに慣れ親しむ外国人や在留邦人などの方が教えやすいようだ。
フランス人の中には日本文化を好む者がかなりいる。「Kado」は「東洋文化を偏見なく受け入れ、ちゃんと理解できる自分」を実感するのにとてもいいツールだ。
母も嬉々として夫を支えながら、憧れだったパリでの生活を満喫していた。
「それでなくても、わたしは真澄くんより六歳も歳上なのよ?」
高木の両親に受け入れてもらえるか、不安を隠しきれない七瀬は、顔を曇らせた。
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