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【Extra Secret】あなたは知らない
Epilogue ①
しおりを挟む今週末も、新宿の公務員宿舎の自分の部屋に「彼女」を招いた高木は、申し訳程度のキッチンにもかかわらず、イタリアンのコース風の手料理を振る舞った。
そして、コン◯ンショップのシンプルな二人掛けのファブリックソファに並んで座り、食後にデ◯ンギで淹れたエスプレッソを飲んで寛いでいた。
「……真澄くん」
彼女から話しかけられた彼は、エスプレッソをローテーブルの上に置いた。カップは白地に赤いロゴのイ◯ーだ。
「本宮から披露宴の招待状が来たわ」
すでに、先日開かれた華子が華山院の次期家元に決定したというお披露目パーティで、予定どおり本宮が「婚約者」として発表されていた。
「僕にも、来たよ」
「えっ、流派から『破門』されたんじゃなかったの?」
彼女は、高木よりも六歳も歳上だとは思えないほど、邪気なく驚いている。
「僕にはいっさい『野心』がない、っていうことを見せつけるためにも、出席しておかないとダメなんだよ」
高木は彼女の左手を取って、自分の方に引き寄せた。
「それに……七瀬さんだけで出席させるわけにはいかないしね」
婉然と微笑みながら、その薬指に軽く、ちゅ、とキスをする。
「もう、あなたは——僕だけのものだから」
彼女——七瀬の左手薬指には……シ◯ネルのプルミエール プロメスの婚約指輪が、燦然と輝いていた。
高木が、とうとう「あの女」を手にした証だ。
高木は、婚約者となった七瀬の左手薬指の婚約指輪を感慨深く見つめる。
センターでは大きなダイヤモンドが光り輝く。そのダイヤを挟むアームには、蜂の巣のような八角形のパーツが連なっていて、それぞれにメレダイヤが組み込まれていた。
創始者のガブリエルは二十世紀初頭「働く女」の先駆者として、まだまだ封建的なヨーロッパ社会に、一石どころか何石も投じた女性だった。
——他を圧倒するほどの華やかさの陰で、どことなく寂しげな童女みたいにも見えるところが、なんだか七瀬さんに似ているな。
世間的には強い女だと評されていたが、その反面、実は「脆い女」だという話もある。
そう高木は思ったから、プロポーズの言葉とともに彼女にこのハイブランドのリングを贈った。
ココが闘っていた時代から百年近くも経つというのに、未だそんな日本の官僚社会の中で挑んでいる七瀬への、エールの気持ちも込めたつもりだ。
だが、恋多き女だったにもかかわらず、ココ自身は生涯独身で通したと伝えられる。
——七瀬さんが「脆い女」になったときには、僕が支えになるけどね。
そのためにも、彼女と結婚するのだ。
プルミエール プロメスは今、節のしっかりした七瀬の長い指にしっくりと収まっている。
庁内でもつけさせているが、サン◯ーランの仕事着やバッグなどを好む彼女にとって、違和感のないデザインだ。
また、両親から就職祝いにプレゼントされて愛用しているというエレサ・ペレ◯ティのスターリングシルバーのボールペンにもよく合っている。クリップの部分がティアドロップになった、優美なフォルムのペンだ。
重ね付けできる同じラインの結婚指輪も、すでに用意した。もちろん、新郎用の分もだ。
もうすぐ、結婚式と披露宴の日取りも決まる。
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