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Epilogue
②
しおりを挟むそれから、高木によって適当に目についたラブホへと促され、適当に選んだ部屋の重たいドアを開けるやいなや、わたしは大きなベッドの上に組み敷かれて……
そのあとは意識が飛ぶくらいの絶頂を極めさせられ……
そして、今に至るのだが——
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
「ぬ……抜いて……」
わたしは、か細い声で高木に頼んだ。
「……は?」
彼はまた、ぐんっ、と腰を入れた。
「……ぁあ……っ⁉︎」
普段の自分からは信じられないくらいの嬌声が、このくちびるから漏れる。
わたしの「中」は、身動きできないほど、「彼」によってみっちりと占められていた。
今の高木に、あの嫋やかな雰囲気は微塵もない。
華奢だと思っていたその体軀は、濡れ羽色のブラックスーツの奥に潜んでいたアンダーシャツを脱ぎ捨てたとたん、認識を改めざるを得なかった。
無駄に盛り上がった不自然な筋肉とは対極の、均整がとれてしなやかな美しい筋肉がそこにはあった。
いわゆる——細マッチョ、っていうヤツだ。
「ねぇ……高木、日本舞踊をやってたんじゃなかったの? 田中が言ってたわよ?……なのに、どうして、こんな……」
ともすれば、喘いでしまいそうになる声を必死で抑えながら尋ねる。
「へぇ……諒志さんが、あなたにそんなことを」
なぜか高木の美しい顔が、また歪んだ。
「知りませんか?……日舞ってのは、足腰が強くないと、きちんとした踊りができないって」
そう言いつつ、彼はぐっと入れた腰をぐりぐりっ、と回した。
「……ああああぁ……っ⁉︎」
とたんにわたしの背中が、海老のように反り返る。
「な…に……そんなに……本格的に……習ってたの……?」
一瞬にして、生理的な涙が溢れてきて、息も絶え絶えになってしまう。
「日舞は『教養』の一つでね。だけど、筋力は剣道でついたのかもしれないな。 一応、有段者なので。ほかに茶道や香道など『和』に関わる『作法』は、物心ついたときから徹底的に仕込まれました。……でも、本格的に取り組んだのは、華道だけどね」
——『華道』?
すると、高木は不敵に、にやりと笑った。
「これでも——『次期家元』として、育てられたので」
「いっ……家元おっ⁉︎」
わたしは素っ頓狂な声をあげたと同時に「彼」をぎゅっと締めてしまう。
「……ぅくっ⁉︎」
高木が苦しそうに目を瞑って、ぎりり、と奥歯を噛み締めた。
「だけど…もう……家元には…ならない……」
急に乱れた息で、絶え絶えにつぶやく。
「すべての…権利を……放棄して……『あの家』を……飛び出して…きたから……」
——ええっ、放棄しちゃったの?
それって、ものすごーく大事になったんじゃないの?
——あれっ、そういえば……
これとよく似た話を、この前どこかで聞いたような気が……
「あーっ、思い出したっ!本宮のお見合い相手のおうちだ‼︎」
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