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Epilogue
①
しおりを挟む「——七瀬さん、起きて」
頬を軽くぺちぺち…とやられて、わたしは不快感で眉間にシワを寄せつつも、目を開けた。
いつの間にか、意識が飛んでいたようだ。
走馬灯のように、今までのことが脳裏を駆け巡っていた。
「あ、ごめんね、高木……もう、チェックアウトの時間?」
ラブホの大きなベッドの中で、自分に覆いかぶさる彼を見上げて訊いた。
頭の中はまだ、白い靄の中にいるみたいにぼんやりとしている。
「やっぱり……ずいぶんと余裕だな?」
女として生まれてくれば、さぞかし美女であったことだろうその顔を、高木は盛大に歪ませた。
そして、次の瞬間——ぐんっ、と腰を入れた。
「……あ……っん……っ!」
不意打ちに、思わず甘い声で啼いてしまった。
——ちょ、ちょっと、高木っ!ま、まさか、イったあと抜かずに入れたまんまとかっ⁉︎
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
急に、わたしの気分が悪くなったあのあと……
『七瀬さんが心配なので、僕が送りますよ』
あたりまえのように、そう申し出る高木に、
『山岸や戸川に、先に帰るって言わなくてもいいの? 今まで一緒にいたんじゃないの?』
わたしは気を遣って尋ねた。
すると、彼は、
『あとでL◯NEしておきますから、大丈夫ですよ』
と、こともなげに言った。
わたしも、本宮にはあとでL◯NEをしよう、と思った。
そうして、わたしたちはひっそりと結婚式の二次会を辞した。
高木が『いきなりタクシーに乗るよりも、夜風にあたった方がいい』と言うので、松濤から南に向かってしばらく歩くことになった。
ところが、井の頭線・神泉駅の辺りで、却ってわたしの「酔い」が回ってきたのか、情けないほどふらふらとした足取りになってしまった。
すぐに高木が駆け寄って支えてくれたが、ル◯タンの十センチヒールのために、今のわたしの身長は彼とほぼ同じなのだ。しかも、彼は華奢な身体つきだった。
それでも、彼に支えられてゆっくりと歩く。こんなときに限って、時折タクシーが流れてきて停めようとしても空車ではなかった。
『すみません、どうやら僕の方も「酔い」が回ってきたみたいです。……休憩してもいいですか?』
突然、高木がわたしをじっと見て、訊いてきた。
わたしたちは——円山町の外れにいた。
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