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Secret 4
①
しおりを挟むその日曜日の朝、わたしは妹に寝起きを襲撃された。
「ねぇ、おねえちゃんっ……この服で大丈夫だと思う!?」
連日連夜の激務のために、ふらっふらになって寝込んでいたわたしは、超ブサイクな顔でベッドからむくっ、と起き上がった。
「……ん……うるさいなぁ、なによ、七海」
それでなくても、一月は通常国会が始まるため省庁が忙しくなる時期なのに、よりによって勤務する証券取引等監視委員会が、目産のコーン会長を有価証券報告書の虚偽記載の疑いによる金融商品取引法違反で、検察庁に告発したのだ。
父があの歳にもかかわらず、まるで若手のように庁舎から家に帰ってこられなかった理由は、これだったのだ。
「あのねぇ……今日、田中さんとデートなんだ」
——はあぁっ⁉︎ このくっそ忙しい仕事の合間に、デートぉ⁉︎
田中は父の「補佐役」だ。それに、父よりもずっと若いから、もっと庁舎に詰めているはずだ。
彼は成城学園の実家を出て、新宿にある単身者用の公務員宿舎で一人暮らししているが、ほとんど帰れていないに違いない。
庁内の仮眠室で少しは寝めるにしろ、熟睡なんてできたもんじゃない。
少し離れた部署のわたしでも、そのシワ寄せがキツくてこのザマなのに……
やっともらえたこの貴重な休日に、デートする気力があるなんて……
——あいつ、いったい、どんな体力してんの?
しかも、お見合いって、もしお互いが相手を気に入ったとしても、ふつう男の方から「次」を誘うんだよね?
——あの田中が……デートに誘う?
わたしが知る限り、彼の「デート」はいつもオンナの方から誘われるパターンなんだけどなぁ……
そして、休日であろうとなんだろうと会うのはいつも夜からで、一応渋谷とか六本木のイタリアンバールやスペインバルなど、小洒落たお店で食事はするらしいけれども、そのあとは道玄坂の奥のラブホに直行する——っていうのがお決まりのコースだって、聞いたけど?
——今、まだ午前中、だよね?
「もおっ、おねえちゃんったらぁ、ちゃんと見てよぉ~」
七海は口を尖らせて文句を言う。
堪らず、わたしはがばっと、起き上がった。
「うるさいって、言ってんでしょっ!わたしは眠くってしかたないんだよっ!とっとと、田中とデートに行ってきなっ!!」
すると、妹はオフホワイトのもこもこファーのフーデットコートを羽織って、あわててわたしの部屋から出て行った。
——あぁ、自己嫌悪。ごめん、七海。あんたはなーんにも、悪くないよ……
わたしはその朝、七海が家を出るまでリビングへは行けなかった。
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