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Last Chapter
土下座で愛の言葉を叫んでます ④
しおりを挟む将吾の言葉につられて、わたしも思わず叫んでいた。
「わたしも、好きっ、大好きなのっ。将吾のこと……愛してるのっ!」
将吾に満面の笑みが広がる。おいで、と長い両腕を広げる。
わたしは迷わず、将吾の胸に飛び込んだ。大振袖の袂が蝶のように舞う。
「……彩乃、もう、絶対に、おまえを離さねえからな」
「わたしだって、将吾から……絶対に、離れないもん」
そして、ぎゅーーーっと思いっきり、抱きしめられた。
「彩乃、今日はこれから外苑前へ直行だ。ずーっとベッドから出られないと思え」
「やだぁ~。将吾ったらぁ。まだ昼間だよ?それに、まだカーテンつけてくれないの?すっごく落ち着かないんだけど……」
「納得できるデザインのものが、なかなかないんだ。それにおまえに『どれがいい?』って訊いても有耶無耶にするだろ?」
「それは、いつもベッドにタブレットを持ってくるからじゃないの?いつの間にか、そんなことどうでもよくなるようにするのは将吾じゃん」
「ベッドでおまえを抱かなかったら、いったいなにすんだよ。……バカ」
「……おまえら、ここを、どこだと思っとるんだ?」
地獄の底を這いずり回る魑魅魍魎のような、低ぅーーーい声が聞こえてきた。
「お…おじいちゃま、わたしたちはもう政略結婚じゃないのっ!恋愛結婚なのっ!なのに引き離すなんて……ひどいっ‼︎」
わたしは将吾にしがみついたまま、声を限りに叫んだ。松濤のおじいさまにこんな口をきいたのは生まれて初めてだ。
「彩乃は、おれがいただきます。もし、お許しいただけないようであれば……」
将吾はわたしを抱きしめる腕に力を込めた。
「このまま、かっ攫っていきますんで」
すると、松濤のおじいさまの額に何本もの青筋が走った。唇も小刻みにぶるぶる震えている。
——あ、血圧、大丈夫かしら?
「お、おまえも……上條と同じことを言うかぁっ!」
紗香おばさまの旦那さまで、大地のお父さんの上條のおじさま?
そういえば……紗香おばさまも結婚のときに、すっごく反対されたんだったっけ。
そのとき、襖が開いて、小柄で上品そうな老齢の婦人が姿を見せた。
「……あなた」
松濤のおばあさまの香子だった。皇室に縁のある、やんごとなき家柄の出だ。
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