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Chapter 18
Fikaで女子トークしてます ②
しおりを挟むお酒も呑んでないのに、いつの間にか「女子トーク」になってる。
畏るべし、fika……どんどん話がディープになっていく……でも、おもしろいし、楽しい!
「とはいえ、さすがに妻や恋人にはちゃんと言葉で示すはずなんだけど。でないと、愛想を尽かされて終わり、だからね。スウェーデンって超福祉国家だから、税金は高いけど一人でも生きていけるのよ。
『Sambo』っていう結婚しなくても同等の権利が認められる制度もあるし。同性同士でもOKなのよ。それに、結婚しないのも良し、離婚するのも良し、シングルマザーも良し、LGBTも良し、って個人主義が徹底されてるからね。……おかげで、二人に一人は離婚してるけどね」
マイヤさんはちぎったシナモンロールを口の中に放り込んだ。
「でも、白夜はなんだか落ち着かないし、極夜は辛気くさくって気が滅入るから、わたしは日本やアメリカの方がいいわ」
南部に位置するストックホルムでも、夏は真夜中になっても夕暮れのような明るさで、冬は午後三時にもなると陽が沈んで辺りが暗くなるのだそうだ。
「そういえば、スウェーデンって性的に奔放な国ってイメージがあるんですけど……」
わたしは気を遣って、遠回しに尋ねる。
「あぁ、セックスフリーのこと?」
マイヤさんはあっけらかんと言う。
「でも、そっちのセックスじゃなくて『性別』の方の『sex』だからね。つまり、『ウーマンリブ』……女性解放運動のことよ。日本では『ジェンダーフリー』って言った方がわかりやすいかな?」
——ええぇっ!? そうだったんだ!
「よく、誤解されるけどね」
マイヤさんは苦笑した。
「……彩乃」
マイヤさんがわたしをじっと見つめる。将吾と同じ、カフェ・オ・レ色の瞳だ。
「欧米の国では考えられないけれど、スウェーデンには『以心伝心』に似た考えもあるの」
——へぇ、そうなんだ。
わたしは目を見開く。
「それに、将吾は日本の血の方が多いし、父親にはあまり似てないかもしれないけれど、父方の祖父にはとてもよく似てるところがあるわ。……つまり、あんなイマドキの顔してるけれども、結構古いタイプの人間なのよ」
マイヤさんはふっ、と笑う。
「彩乃には『言わなくても、わかってくれている』って勝手に思ってるわよ、あいつ」
——たぶん、そうだろうなぁ。
わたしは情けない顔になる。
「だからね……」
マイヤさんがわたしの肩を、ぽんっと弾いた。
「言ってもらいたいことがあったら、胸の中でうじうじ考えてないで……あなたから言いなさい」
わたしはこくっ、と肯いた。
変な意地を張っているだけでは、いつまでたっても、もやもやが続くだけだ。
将吾がわたしに言ってくれるのを、ただ待ってるのではなく……
わたしが将吾のことを、好きで、大好きで、どれだけ愛しているのかを……
——わたしから将吾へ、伝えればいい。
うっすらと流れるBGMは、スウェーデンの「国民歌」と言われる♪Den blomstertid nu kommer だ。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
fikaを終えたわたしは、自分の部屋に戻って、パウダールームでシャワーを浴びる。
——将吾、早く、帰ってこないかなぁ……
とにかく、待ち遠しかった。
だけど……マイヤさんは、結婚する前にスウェーデンの人とも「おつき合い」があったな?
お義父さまにはナイショにしておかなければ……
わたしは、ふふふ…と一人で笑った。
——ヤキモチ焼きなのは、きっと両方ともに違いないから。
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