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Chapter 16
ココロまで正直になってます ② ♡
しおりを挟む際限まで張りつめた将吾さんの怒張が、わたしの膣内を穿ちつける速さが……どんどん増していく。
わたしの肌と彼の肌とがぶつかる乾いた音が、キングサイズのベッドしかないこの部屋中に響き渡る。
さすがに彼も息を荒げて苦しそうに、顔を歪めて腰を動かしている。
「……彩乃」
掠れた声で、わたしの名前を呼ぶ。
——最期が、近づいている。
わたしはまた、将吾さんに一気に頂上にまで駆け上らされ、そして即座に、一気に底辺まで墜とされた。
その直後、「……ぅくぅ……っ!」という呻き声がして……
どさっ、と将吾さんの身体が落ちてきた。
「”Älska mig mest……おれをこれ以上ないくらい愛してくれ」
あの言葉だ。日本語でも言ってくれている。
「när jag förtjänar det minst……おまえの愛がもったいないくらい、おれが最低な男であるときほど」
スウェーデンの常套句みたいなもの、と言っていた。
「för då behöver jag det bäst.”……おれには一番、おまえの愛が必要なんだ」
——あぁ、そうだ……「最期」だから。
「……ねぇ、将吾。イエス、だったらスウェーデン語でなんて言うの?」
わたしが名前を呼び捨てにしたので、一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みになった。
「『Ja』だ」
わたしの頭を持ち上げて、腕枕をしてくれる。
「……Ja」
わたしは先刻の言葉の返事をした。
「Tack tack!」
将吾は噛みしめるようにそう言って、わたしをオリーブブラウンの髪ごと抱きしめた。
——たぶん「ありがとう」の意味だろう。
あなたが、どんなにわたしの愛がもったいないくらいの最低男だとしても……
いいえ、そんな男であればあるときほど「必要」としてくれるのであれば……
これ以上はないくらい、ほかのだれよりも一番のわたしの愛をあげる。
たとえ、あなたからどんなに遠く離れたところにいようとも……
もう、二度と、わたしがあなたの前に現れることがなくても……
——将吾、愛してる。
わたしの瞳から、一筋、涙が流れる。悲しい涙ではない。うれしい涙、だ。
将吾がぺろり、と舌で拭ってくれる。やさしく、きゅっと、抱きしめてくれる。愛おしそうに、オリーブブラウンの髪を撫でてくれる。
将吾と一つになれた喜び……将吾に教えてもらった「オンナ」としての悦び……
海洋のときは、あんなに哀しい涙しか、流せなかったのに……将吾とは……こんなときでもうれしい涙しか、流れない。
——わたしは意識を手放した。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
カーテンのない窓からは、真昼の日差しが容赦なく降り注ぐ。最上階だから、眩しさが半端ない。
わたしは微睡みから目覚めた。将吾の腕の中から離れて、起き上がろうとする。
「……どうした?」
色素の薄いカフェ・オ・レ色の瞳を持つ彼は、目の前に手をかざして陰をつくる。
「『最期の一回だけ』が終わったから」
ほんとは二回だったけど、一回めは不本意だっただろうからサービスだ。
「……はぁ!?」
将吾の片眉がぐいっ、と上がった。
「だって、わたしたちは破談になったじゃん」
「……おれたちは、いつ破談になったんだ?」
将吾の顔がすっごく険しくなる。
「わたしは昨夜、あなたのお母さまに言ったわよ。あなたは今朝、うちに言いに行ったんじゃないの?」
なによ、今さら。
「おまえは昨夜、うちのおふくろと日本酒を浴びるほど呑んだんだってな?あれだけ、日本酒には気をつけろ、って言ったのに……その所為だ」
『日本酒の所為』ですって?
「それに、今朝おまえの家に行ったのは『彩乃をマリッジブルーにさせて申し訳ない』って謝りに行ったんだ。……だれが破談なんかするか、バカ」
——ま、『マリッジブルー』ですって!?
わたしは、がばっと半身を起こした。
「ちょ…ちょっと、待ってよっ!そもそも、将吾がわかばちゃんとわたしのベッドにいたからでしょ!?」
そうよっ、なんで『日本酒の所為』とか、わたしが『マリッジブルー』とかにされなきゃなんないのよっ⁉︎
「 わかばちゃんとは、いったい、どうなってんのよっ!? ちゃんと、説明しなさいよっ!!」
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