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Chapter 15
心よりカラダが正直になってます ⑩
しおりを挟むセックスなんて、やっぱりそれ相応の年齢になってから体験すべきだったと、今にして思う。
わたしと海洋とはお互いに「初めて」だった。
しかも、浅はかなコドモだった中二のわたしの作戦のキャミ型のトップスとショートパンツによって煽られてしまった高一の海洋には、何の準備もなかった。
ただただ、若い欲望に流されてしまったのだ。
だけど、処女と童貞同士がいきなり「今日のあなたはよかったわ」「今日の君こそよかったよ」なんて言えるほど、セックスっていうのは甘くはない。
海洋はわたしがしっかり潤って準備が整うようにしてくれる技能はおろか、せめてわたしが自力で潤うまで待ってくれる余裕すらなかった。
とりあえず全部挿れてしまったと思ったら、わたしが歯を食いしばって耐えているのを顧みず、自分勝手に、がしがし動いた。
嫌われたくないわたしは、痛みに耐えて耐えて耐え抜いた。
でも、海洋を恨むのはお門違いだ。男子高校生なんて、みんなそんなものだ。逆にそんな頃から完璧にケアしてくれる方が、末恐ろしい。
そして、何の準備もケアもしないままのセックスは最悪の終わりを遂げた。
——海洋が膣内で出してしまったのである。
彼の名誉のために言うが、「直前」で抜こうと思っていたんだそうだ。
しかし、大のオトナでも難しいタイミングを童貞くんにわかるわけがない。
わたしも、海洋も、真っ青になった。
わたしはまだ、十四歳になったばかりだった。ドラマでも「十五歳の母」じゃないか。
次の生理が来るまでの間の「地獄」は思い出したくもない。親友の華絵にも、だれにも言えない。
海洋にだって「めんどくさい女」だと思われるのが怖くて、もっとそういうことに要領のいい「オトナの女」に心変わりされるのが怖くて、なにも言えなかった。
今から思えば、「異変」はその次のセックスのときからじわじわと始まっていたように思う。
生理が無事に来てホッとしたのもつかの間、海洋が「彩、次は大丈夫だから」と言ってゴムを調達して誘ってくるようになった。
オンナの味を覚えた男子高生なんて、盛りのついたサルかネコと同じだから、仕方ない。
やがて、初めてのときよりも、随分とすんなり挿入るようになってきた。
だけど……やっぱり「気持ちいい」なんて到底思えなかった。
いつも、なにか良くないことをしている、と罪悪感に似たものと闘っているみたいな気がしてならなかった。
そして、セックスをすることで妊娠するかもしれないということが、ものすごく怖かった。
それでも、海洋の「要求」にはいつでも応じていた。
——それは、ある日、突然起こった。
たぶん、心よりカラダの方が正直に「拒否」したのだろう。
いつものように、海洋が元気に勃ち上がった「自身」をわたしの膣内へ挿入た瞬間、突然わたしの身体が強張って、信じられないくらいの力が加わった。
気がつけば……海洋が速攻で果てていた。
それ以後、何回やっても、どんな体位で行っても、海洋は秒殺されるようになった。
そのうち……もっと恐ろしいことが起こった。
——海洋が高校生にして、勃たなくなったのである。
海洋が人知れず悩んでいたことは、手にとるようにわかったから、わたしたちは「正常化」のためにいろいろと手を尽くした。
わたしはその頃高校生になっていたが、彼のために風俗嬢まがいのことまでやった。
——それでも、ダメだったのだ。
そのうち、海洋が大学生になり一人暮らしを始めた。
すると、彼がわたしの知らない女の人と歩いているという情報が、太陽や慶人や大地から入ってくるようになった。
「おまえがハッキリしないから、海洋がフラフラするんだ」と、彼らから何回言われたことか……
カラダの関係を結んで始まったわたしと海洋は、なんだか後ろめたくて「つき合っている」ことをみんなに知らせるタイミングを完全に逸してしまっていた。
それに、高校生の海洋をあんなふうにしてしまった原因は「わたし」なのに、彼女ヅラなんてできなかった。
それでも、海洋を信じていた。「彼女」はわたしだ、と思っていた。
この目で「あの光景」を見るまでは……
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