政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

佐倉 蘭

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Chapter 15

心よりカラダが正直になってます ⑧

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「えっと、その……ま…真っ昼間なんですけど……」
 時間はもうすぐ正午になろうとしていた。

「今からなら、まだ『朝』だな」

「この部屋、カーテンもないよね?」
 さんさんと降り注ぐ太陽の光が、憎らしいほどまぶしい。

「最上階だし、このマンションより高い建物はこの辺りにはない」

「こんな明るいところで見られるのは、ちょっと……」
「おまえのカラダは、すでにかなり知ってるから気にするな」

 将吾さんの実家を出て以来、食欲がなくてちょっと痩せてしまったのよっ。ここだと、よりささやかになってしまった胸の隠しようがないじゃん!

「悪いが、シャワーは省略だ」

 ——な…なんで?……っていうか、もう決定事項!?

「水も湯も使えるが、バスタオルはおろか、タオルすらここにはない」
 将吾さんがわたしの方に近づいて、間を詰めてくる。

「……だから、おれがシャワーを浴びている間に逃げようと企んでも無駄だ」

 将吾さんがわたしの肩をぐっ、と引き寄せる。わたしはつんのめったようになり、彼の胸に飛び込む形になる。

 将吾さんがわたしをきゅっ、と抱きしめる。ジプシーウォーターの香りがふわっと匂う。
 なんだか妙に懐かしくて、ほっとする。

「……おまえ、また痩せたんじゃないのか?」

 そういえば……結納前に「人工授精で子どもを得たい」とわたしが申し出たために険悪になったときも、食欲がない上に不眠も重なって痩せたんだっけ。

 そのとき、ふと、気がついた。

 ——「これ」が「最期」だったら……

   一回限り、だったら……今なら、今だからこそ……将吾さんと「最後」まで、できるかもしれない。

 わたしは顔を上げて、将吾さんを見た。

「……いいよ……最期に……一回だけ、なら」

 将吾さんのカフェ・オ・レ色の瞳が、にわかに琥珀色に染まる。

 彼がレジメンタルタイの結び目を緩めた。


 ゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜


 将吾さんはわたしのザ◯のニットとスキニーパンツを、わたしは将吾さんのヒ◯ーゴ・ボスのスーツを……早くカラダを合わせたいもどかしさで焦りながら脱がせた。

 放り投げられたわたしのプチプラなニットとスキニーパンツはいいとして、将吾さんのスーツやワイシャツはきっとシワだらけになって、即クリーニング行きだ。

 下着姿になったわたしたちは、ブランケットをまくって、キングサイズのベッドへなだれ込む。

 覆い被さった将吾さんの顔が落ちてきて、わたしのくちびるをついばむ。

「……今日は『お仕置き』はないの?」

 慶人と蓉子の結婚式で再会した海洋と、キスしてしまったときは「お仕置き」だと言って、将吾さんは一晩中キスをしてくれなかった。

「……あれは、おれの方が『お仕置き』だった」

 そう言うや否や、わたしのくちびるがこじ開けられ、将吾さんの舌がわたしの口内を蹂躙し始めた。
   執拗にわたしの舌に絡めて、息ができないくらい激しくいたぶる。

「ぅん……は……っ」

 ——やっぱり『お仕置き』じゃん!

 同時に、ブラもショーツもわたしの身から遠くへ引き離された。

   将吾さんのアンダーシャツもボクサーパンツも、ベッドの下に脱ぎ捨てられた。

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