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Chapter 15
心よりカラダが正直になってます ⑤
しおりを挟む誓子さんは、
「えっ、副社長が彩乃のベッドに十九歳の女の子を連れ込んだのっ!?……っていうか、副社長ってロリコン!?」
とか……
「えっ、今度来たクールなイケメンの社外取締役って、彩乃の初カレの元カレ!?……っていうか、彩乃の初キスとか初エッチって超早くないっ!?」
とか、さまざまな感想を述べ……
海洋との「最中」で失踪するようにマンションから飛び出してきた件では、
「うわーっ、彩乃、ひっど~いっ、鬼畜ぅ~。社外取締役、絶対トラウマになるよぉ」
と同情しながらも、お腹を抱えて笑っていたが……
「……彩乃がだれにも相談できなかった気持ち、わかるよ。わたしもそうだから。『お嬢さま』って周りになんでも洗いざらい言えないよねぇ……」
最終的には、オー◯ス・ワンをお湯割りした焼酎のようにすすりながら、しみじみと語っていた。
この人とこんな思わぬ共通項があったとは……
——あぁ、そうか。だから、この人はケンちゃんとのことでホスト遊びにハマったんだな。
「ビバ!オー◯ス・ワン!!」
突然、誓子さんがグラスを掲げて讃える。
——もしかして、酔っ払ってる?
でも、いいや。わたしもグラスを掲げておこう。今まで、だれにも言えなかったことを言えた記念だ。
だけど、まだ、言えてないことがあるけれども……
これは、ちょっと、だれにも言えない。きっと将吾さんが、一番知りたいことなのに……
わたしが「最後」まで許さない理由である。
——今夜の海洋にさえ、許さなかった「理由」だ。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
翌朝、まるでホテルのルームサービスのように、誓子さんの部屋までアメリカンスタイルの朝食をハウスキーパーが持ってきてくれた。極楽だ。
ミルクやオレンジジュースなんかが、本当にホテルの味だったので尋ねると、誓子さんのお父さんがあるホテルのものを気に入って、そこで提供しているのをわざわざ取り寄せているらしい。
クロワッサンも外はサクッとして中はもっちりと濃厚な層を形成しているので、たぶんこれもすごく美味しくて評判のパン屋さんのものだろう。
プレーンオムレツを割ると、とろんとしたじゅくじゅくの卵が漏れ出る。ソーセージもいかにも「腸詰め」という感じの本格派だ。
「……確かに、こんな美味しいものが黙ってても出てくるのなら、お料理しませんよねぇ」
「でも、今、朝食を持ってきた川上の奥さんに教えてもらってやってんのよ。うちのママは料理なんてほとんどしたことないもの」
『川上』さんというのは昨夜、深夜にもかかわらずわたしのために車を出してくれた運転手さんだ。どうやら、夫婦でこの家に住み込みで仕えているらしい。
「ケンちゃん、喜びますよ」
わたしは、ふふふ…と微笑んだ。
「あの……お嬢さまにお客様がお見えなのですが……」
今ちょうど話をしていた川上さんの奥さんがやってきて、誓子さんに声をかける。
「わたしにお客?こんな時間に?」
誓子さんがきょとんとする。
「ケンちゃんじゃないんですか?……待ってられなかったんですよ」
そう言うと、誓子さんが弾かれたように部屋を出て行く。
わたしは、ふふふ…と微笑んだ。
しばらくして、誓子さんが戻ってきた。
テンションが低いので、どうやらケンちゃんではなかったらしい。
「彩乃……お迎えよ」
——『お迎え』?
ま、まさか……昨夜、わたしに「敵前逃亡」をされてしまった海洋?
「副社長よ。……『将吾さん』よ」
——へっ!?
な、なんで、将吾さんがここにっ!?
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