政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

佐倉 蘭

文字の大きさ
上 下
96 / 128
Chapter 15

心よりカラダが正直になってます ⑤

しおりを挟む

 誓子さんは、
「えっ、副社長が彩乃のベッドに十九歳の女の子を連れ込んだのっ!?……っていうか、副社長ってロリコン!?」
   とか……

「えっ、今度来たクールなイケメンの社外取締役って、彩乃の初カレの元カレ!?……っていうか、彩乃の初キスとか初エッチって超早くないっ!?」
   とか、さまざまな感想を述べ……

 海洋との「最中」で失踪するようにマンションから飛び出してきたくだりでは、
「うわーっ、彩乃、ひっど~いっ、鬼畜ぅ~。社外取締役、絶対トラウマになるよぉ」

 と同情しながらも、お腹を抱えて笑っていたが……

「……彩乃がだれにも相談できなかった気持ち、わかるよ。わたしもそうだから。『お嬢さま』って周りになんでも洗いざらい言えないよねぇ……」

 最終的には、オー◯ス・ワンをお湯割りした焼酎のようにすすりながら、しみじみと語っていた。

 この人とこんな思わぬ共通項があったとは……

 ——あぁ、そうか。だから、この人はケンちゃんとのことでホスト遊びにハマったんだな。

「ビバ!オー◯ス・ワン!!」
 突然、誓子さんがグラスを掲げて讃える。

 ——もしかして、酔っ払ってる?

 でも、いいや。わたしもグラスを掲げておこう。今まで、だれにも言えなかったことを言えた記念だ。


 だけど、まだ、言えてないことがあるけれども……

 これは、ちょっと、だれにも言えない。きっと将吾さんが、一番知りたいことなのに……

 わたしが「最後」まで許さない理由である。

 ——今夜の海洋にさえ、許さなかった「理由」だ。


゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜


 翌朝、まるでホテルのルームサービスのように、誓子さんの部屋までアメリカンスタイルの朝食をハウスキーパーが持ってきてくれた。極楽だ。

 ミルクやオレンジジュースなんかが、本当にホテルの味だったので尋ねると、誓子さんのお父さんがあるホテルのものを気に入って、そこで提供しているのをわざわざ取り寄せているらしい。

 クロワッサンも外はサクッとして中はもっちりと濃厚な層を形成しているので、たぶんこれもすごく美味おいしくて評判のパン屋さんのものだろう。

 プレーンオムレツを割ると、とろんとしたじゅくじゅくの卵が漏れ出る。ソーセージもいかにも「腸詰め」という感じの本格派だ。

「……確かに、こんな美味しいものが黙ってても出てくるのなら、お料理しませんよねぇ」

「でも、今、朝食を持ってきた川上の奥さんに教えてもらってやってんのよ。うちのママは料理なんてほとんどしたことないもの」

『川上』さんというのは昨夜、深夜にもかかわらずわたしのために車を出してくれた運転手さんだ。どうやら、夫婦でこの家に住み込みで仕えているらしい。

「ケンちゃん、喜びますよ」
 わたしは、ふふふ…と微笑んだ。


「あの……お嬢さまにお客様がお見えなのですが……」

 今ちょうど話をしていた川上さんの奥さんがやってきて、誓子さんに声をかける。

「わたしにお客?こんな時間に?」
 誓子さんがきょとんとする。

「ケンちゃんじゃないんですか?……待ってられなかったんですよ」
 そう言うと、誓子さんが弾かれたように部屋を出て行く。 

 わたしは、ふふふ…と微笑んだ。


 しばらくして、誓子さんが戻ってきた。 

 テンションが低いので、どうやらケンちゃんではなかったらしい。

「彩乃……お迎えよ」

 ——『お迎え』?

  ま、まさか……昨夜、わたしに「敵前逃亡」をされてしまった海洋?

「副社長よ。……『将吾さん』よ」

 ——へっ!? 

   な、なんで、将吾さんがここにっ!?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

処理中です...