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Chapter 7
私のお部屋に引っ張り込まれてます ②
しおりを挟む「おまえの弟はシスコンか?」
わたしの部屋に入ったとたん、将吾さんが訊いてきた。
「違うわよ。気持ち悪い」
——シスコンではなくて「海洋派」なのよ。そんな派閥があるかどうかわからないけど。
今でも裕太は、わたしには海洋と一緒になってもらいたいみたいだ。
「飲み物といただいたテリーヌ ・オ・ショコラを持ってくるから、適当にしてて」
カウチソファに座らないで、腕を組んで部屋を見回している将吾さんに言った。
「あ、おれは甘いものはいい。コーヒーをブラックでくれ」
「わかった。……あんまり、じろじろ見ないでよ?」
クローゼットやベッドなどは一応、フランスの田舎町プロヴァンスにあるような白木の家具にしている。
雑貨やファブリックは、リーズナブルなのにオシャレなフランフランで、家具のイメージに合うフレンチカントリー調なものを季節に応じて揃えている。
でも、将吾さんのお部屋みたいに、シンプルだけど実はゴージャスなお値段のコン◯ンショップでまとめた部屋とは次元が違うから、較べないでほしい。
わたしはスマホからBluetoothのスピーカーに曲を飛ばしたあと、階下のキッチンへ向かうために部屋を出た。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
階下のリビングでは、裕太がわたしの顔を見るなり、
「チョコのロールケーキ、すんげぇ美味かったっ!」
と、テリーヌ・オ・ショコラを讃えた。
——ロールケーキとはちょっと違うけどね。
「あんた、心して食べたでしょうね?それ一本いくらするか知ってんの?ぶったまげるよ?」
わたしは急いでリビングを通り、ダイニングテーブルとアイランドキッチンをすり抜け、コンロへたどり着いたら、ケトルに水を入れて火にかけた。
「えっ、いくらすんのー?」
リビングのソファの裕太がキリンのように首を伸ばして、キッチンのわたしに訊く。
「ググりな」
わたしは冷たく言い放ち、アイランドキッチンにカップを三つセットして——一応、裕太にも淹れてやるか——棚からカ◯ディのレギュラーコーヒーの袋を取り出す。うちでは、普段使いのコーヒーはコスパ重視なのだ。
早く戻らないと将吾さんがわたしの部屋でなにをしてるのか気が気じゃないので、豆を挽くのはやめておいた。もちろん、コーヒー豆もコスパ重視でカ◯ディだ。
「……なぁ、姉貴」
「なによ?」
サーバーの上にドリッパーを乗せて、ペーパーフィルターを置く。
「あの人とは前からの知り合いだったの?」
——『あの人』って将吾さん?
ペーパーフィルターにマンデリンフレンチを人数分プラス一杯入れる。
「そんなわけないじゃん。ついこの間、お見合いで知り合ったばっかだよ?」
ケトルのお湯が沸いたので、ドリップに注ぐ。
「……ねえちゃん」
裕太が神妙な顔して、上目遣いで訊く。
「実は、お見合いに行ったら……元カレがいました!って驚きの再会だった、とかじゃないの?」
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