政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

佐倉 蘭

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Chapter 5

彼のお部屋に引っ張り込まれてます ③

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「……彩乃……ベッドに行こうか?」

 将吾さんがわたしの耳元で甘く、ささやいた。

 カウチソファとオークの無垢材のローテーブルの向こうには、コン◯ンブルーのベッドスプレッドに覆われたクィーンサイズと思われるベッドがあった。

 ——ま、まずい。

「あ…あの……その件につきましては、ちょっと申し上げなければならないことが……」

 わたしのいきなりの言葉に、将吾さんが眉をひそめる。

「その件って、どの件だ?それに、なんでいきなり敬語になるんだ?」

 ——ですよね~?

「おれたちは、結婚するんだ。キスの相性はお互いこんなに良いんだ。カラダの方の相性も、一緒に試してみてもいいんじゃないか?」

 将吾さんはカフェ・オ・レ色の瞳で艶っぽくわたしを見つめる。色気がダダ漏れして、半端ない。

 ——いや、でも、それは、どうでしょうか?


 ……コン、コン、コン。

   そのとき、ノックの音がした。

「あの……お茶とケーキのご用意ができたので、奥さまがリビングルームに来るように、と」
 ドアの向こうから女の子の声がした。

 ——たぶん、わかばさんだろう。

 将吾さんがチッ、と舌打ちした。
「おふくろのヤツ、邪魔しやがって」
 少年のようにふてくされた顔をしている。

 それでも、わたしから離れてドアの方へ行って、わかばさんに応対した。

「すぐ行くからって、マイヤさんに言っといてくれる?」

 わたしの位置からは見えないが、きっとまた、とろけるような笑顔を見せているに違いない。

 戻ってきた彼を見て、わたしは苦笑した。
「ついてる」
 ボリードからウェットティッシュを取り出し、一枚引き抜かせる。
「おっ、Thanks.」

 彼がすぐにくちびるをこするかと思ったら、急に抱き寄せられた。

「……彩乃……もう一回」

 かすれた声でそう言って、将吾さんはまた、わたしにくちびるを重ねてきた。
 わたしもすぐにくちびるを開いて、彼のくちびると舌に応える。

 ——キスならいいのだ。何度でも、何回でも、あなたに応えられる。

 キスだけ、なら……

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